表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
460/486

442話 魔物の強襲

 メルさえいれば……。

 そう思ったのはリアスだけではなかった。

 今は仲違いしているシュレムもそう思っていた。

 何故なら彼女さえ起きていれば魔法が使えただろう。

 だが……今ここで魔法を使うものは誰一人いなかった。

 そう、魔族(ヒューマ)であるヒューエンスの兵士達は誰一人魔法を使わなかったのだ。

 

「何してる、早く魔法で落ちた人を救い出すんだ!!」


 堪らずリアスがそう叫ぶも、ロープを使う者は居ても魔法を使う者は居なかった。


「早く! 魔法を――!!」


 ライノも魔法を使う様に叫ぶも意味が無い。

 そうこうしている間ももう片方の船からは人が落ち、大きく揺れる。

 魔物は今か、今かと落ちてくる人々を待っては口を開け――。


「ぎゃぁぁあああ!? ひっ!? が――――」


 断末魔が辺りに響き渡った。

 その度に怯える兵士だったが、それでも魔法を使わないのだ。


「おい! 仲間が喰われてるんだぞ!!」


 痺れを切らしたシュレムは一人の兵士へと叫ぶ。

 すると――。


「わ、我々は魔法を使えない、許可されていない!」

「きょ、許可?」


 帰ってきた言葉にシュレムは思わず首を傾げた。

 魔法を使うのに許可とはどういう意味だろうか?


「階級だ! 我々一般兵は一般市民より優遇される! 武器を持ち正当防衛を許されるが、魔法は使えない! 魔法は騎士のみに許された力だ!」


 それは彼女達には理解できない事だった。

 普通魔法を使うのに許可はいらない。

 魔力がある魔族(ヒューマ)であれば、才能が無い者は除き誰もが使えるはずだ。

 勿論、それ相応の修業は必要ではあるが……。

 だが、使えないという事はない。


「意味の分からない国だな……!」


 リアスはそう言うとライノへと近づいた。


「もう時間が無い! メルは起きないか!?」

「傷は深いわ……でも、起こさないと駄目ね……」


 ライノは頷き縄を作るのを止めメルの方へと目を向けた。

 それと同時にメル達が乗る船も大きく揺れ始めた。

 見ればもう片方の船はひっくり返っており……沈んでいる最中だった。

 今度はまだ餌の残っている方と魔物は考えたのだろう。

 そして、まだその腹は満たされていないのだろう。

 その事実にリアスはゾッとしたが、どうする事も出来ず……。


「何かに掴まれ! 落ちてこなければ諦めるかもしれない!」


 と全員に指示を出す。

 しかし、それはあくまで希望だ。

 落ちてこないなら落ちて来るまで……揺らされるかもしれないのだ。

 そして、なにより……。


「メルちゃん!!」


 そう、気を失っているメルには抵抗の術がなく……。


「しまっ!?」


 その事に気が付いたリアスは彼女を助けようと動こうとするが、間に合わない。


「シュレム!!」


 だが、仲間であるシュレムがその先に居り……メルは間一髪と言った所で救われた。


「ぐぅ!?」


 とはいっても彼女を受け止めたシュレムは無事とはいかなかったようだ。

 顔を歪め、痛みを感じているのが分かった。


「いいぞ! そのまま耐えてくれ!!」


 リアスは叫ぶが、対処が出来ない事に気が付いていた。

 相手は海の中に居る……。

 彼の持つ精霊の武器、ナウラメギルは炎を使えるが海では意味が無い。

 そして、シュレムの持つ精霊の武器ナトゥーリッターなら効果はあるかもしれないが、彼女の使い方は大雑把だ。

 恐らく調整することは難しいだろう。

 何より、メルを抱えている現状では彼女を頼る事は出来ない。


 メルが起きていれば彼女の武器アクアリムを使いこの場を脱することが出来るだろう。

 しかし、今彼女は気を失っている。


「それもあの怪我だ……薬を使ったとしても効果がすぐに出る訳じゃない」


 彼女が起きる可能性は低い。

 リアスはそれには気が付いていた。

 しかし、現状を打破できるのは攻めて魔法を使える者だけだ。

 だというのに……。


「騎士はともかく、兵士は魔法が使えない……そもそも魔紋が無い可能性だって……」


 魔紋さえあれば魔法が使える。

 しかし、それが無ければ使うには大掛かりな魔法陣が必要なのだ。

 それも魔法を正しく使うためには魔法陣が正確でなければならない。

 もし、違えば危険な物へと変わってしまう。

 それが魔法の不便な所だ。


「……船員に魔法が使える奴は!?」

「使えても大したものじゃない! 戦ったり波を起こしたり、船を動かすなんかは無理だ!」


 彼の考えている事に答えてくれた船員。

 だが、その答えは彼らにとって望んでいる物ではなかった。


「クソッ!! どうすれば!!」


 絶体絶命。

 リアス達にはもう成す術もない。

 その間にも魔物は船を揺らし海へと落ちる者の悲鳴が響く……。

 だが、そんな彼らの危機を見ていた者が居た。


『た、たたた大変だよ!?』

『分かっています! ですが、こうも離れていたら! せめて誰かが気が付いてくれれば!!』


 そう口にしたのは精霊シレーヌとアリアだ。

 シレーヌは先程から海水を動かそうと考えていた。

 しかし、最初の揺れでメルと自身を解放した武器アクアリムが離れてしまったのだ。

 あらかじめメルが詠唱を唱えていれば違っただろう。

 しかし、今は彼女の近くに剣が無ければ力を使えないのだ。


『アリア、どうにか出来ませんか?』

『そうしたい所、だけど……』


 風の精霊であるアリアならば、状況を打破できる。

 そう思ったのだが、人が密集している所で剣だけをメルの所へと向かわせるのは無理なようだ。


『なら……気づいてもらうしかありませんね』


 シレーヌがそう言うとアリアは頷き、風を起こす。


「風が、変わった! 何だ、何が起きてる!?」


 船員の一人がそれに気が付くと焦ったような声をあげた。


「風……?」


 大した事ではない。

 そう思ったリアスはそれどころじゃないと思ったのだが……。

 一度立ち止まった。


「何でだよ! 急に風向きが変わったぞ!?」


 風や水、草花に火……この世界に存在するものには精霊が宿る。

 その意志によって変化も起きる。

 その事をリアスは知っていた……。


「アリア……か?」


 そして、彼女の存在に気が付くと……彼は何かの意味があるのでは? と考えたのだった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ