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441話 海の化け物

 船の上は騒めく……当然だ。

 兵士達の主である騎士はたった一人の少女に船から落とされた。


「この! 汚らわしい獣の眷属め!! 私になんて事を!!」


 だが彼女は海へと落ちる寸前で叫び腕を振るう。

 すると、鞭は伸び……それで彼女は船へと上がろうとしたようだ。

 しかし……。


「へ?」


 違和感を感じたらしく惚けた声を出す。

 それを見る兵もシュレムもなにがあったのかは理解できなかった。

 だが、すぐに……。


「ひっ!? な、なんですの!? いや、いや……!!」


 何かに慌てた彼女は叫ぼうと息を吸う。

 その瞬間――。


「い――――」


 その叫びは聞こえる事無く、彼女は海の中へと引きずり込まれ、彼女が居た場所には泡だけが浮かんでくる。


「ル、ルク様……?」


 兵士達は彼女が負けるとは思っていなかったのだろう。

 呆然としつつ彼女の名を呼ぶ。

 その隙を逃さず、リアスや力自慢の男達は達は兵士を次々と海へと落としていった。

 そんな中、シュレムは疑問を浮かべじっと海を見つめていた。


「シュレム早く、何をしてるんだ!」


 どうやらリアスは兵士達を早く処理し、メルを助けたいみたいだ。

 だが、それでもシュレムは首を傾げ海を見つめていた。

 そして……。


「おいおいおいおい!?」


 突然叫び始める。


「シュレム?」

「何か居る! 血だ! 血が浮かんできたぞ!!」


 血が浮かんできた。

 彼女はそう言いながら慌て始めリアス達は勿論、兵士達も首を傾げた。

 だが、すぐにその理由を察したのだ。


「ひっ!? う、腕だ! 腕が浮かんできた!!」


 血に染まった海に浮かんできたのは兵士の一人が言った通り腕。

 華奢な腕は恐らくは……。


「嘘だ、嘘だ……ルク様が……」


 兵士の一人が怯え、身を乗り出す。


「あ……」


 すると彼は体勢を崩し……。


「っ!!」


 シュレムは彼を思わず掴んでしまった。


「シュレム!?」

「冗談じゃない!! 何か居る! マズイ――!! 海に落としたら皆死ぬぞ!!」


 彼女はそう言い、兵士を引き上げると……海に居るものの正体を目にした。


「あれは……」


 それは見た事も無い魔物だった。

 魔物は大きな口を持ち、人だった物をバキバキと音を立て食事をする。

 鎧も剣も関係なく胃の中へとおさめていく様はまさに化け物と言って良い物だった。


「メルは! メルは起きてないのか!!」


 メルならば精霊か魔法を使い倒せる。

 そう信じた彼女は叫ぶが……。


「駄目よ! さっき受けた傷が酷過ぎる。薬だけじゃ魔法を使えるまで痛みを軽減する事は出来ないわ」


 振り返ると血塗れの少女は苦し気に顔を歪め、息も絶え絶えだ。


「リアス!! 人が喰われちまう!! ここに奴の餌が沢山居ることもバレるぞ!!」

「そう言う事か…………納得は出来ない、だけどその状況じゃ見捨てる事も……」


 シュレムの言葉にリアスはメルへと目を向ける。


「出来はしないか……」


 海に落としても彼らの船さえ無事ならば後で救出が出来る。

 メルはそう思ったはずだ。

 そう感じたリアスは――縄を取り出し……。


「全員は無理だ! だけど……やれるだけやるしかないか……」


 メルならばきっと見捨てない。

 そう考えた彼らは戦う事を止め自ら海に落とした人たちの救出を始める。


「おい! 早く! 縄を早く持ってこい!!」

「縄を掴め!!」


 シュレムとリアスを始めとし、救出を進めるがそんな簡単に事が進む訳もない。

 都合よく縄が沢山ある訳ではなかった。


「ライノ!!」

「ええ、今やっているわ!!」


 ならばとリアスはライノの名を呼ぶと、すでに彼は縄を作っていた。

 だが、メルを放って置く訳にもいかないと思ったのだろう。


「ちょっとお願い、この薬を彼女に飲ませてくれないかしら?」


 ライノは船員に薬を手渡した。

 そして……。


「あの子が起きれば…………っ! 物質変換」


 呟きながら縄を作るとそれの強度を確かめる。

 そして、近くに居た兵へとそれを渡し……。


「使って強度は十分のはずよ」

「ああ、ありがたい……!」


 もはや敵味方は関係なかった。

 何故なら船の下には恐ろしい魔物が居るのだ。


「おい、なんか嫌な音が聞こえないか?」


 そう誰かが言った気がした。

 先程の人を食す音ではない。

 明らかに別の音が響くのだ。

 すると……ルーフ側の船が大きく揺らいだ。

 そう、シュレムが口にした通り魔物は気が付いたのだ……。

 船から食料が落ちている事に……だからこそ、もっと寄越せと催促をし始めた。

 当然人を飲み込む大きさの魔物相手に船が無事な訳が無い。

 大きく揺らぎ、悲鳴と共に落ちていく兵。

 それを食らう魔物……。


「おい、おいおい……これってまずいんじゃないか?」


 シュレムは苦笑いをしつつ相手の船を見た。

 人は落ちそれを喰らい。

 海は血に染まる……どう見ても以前襲って来たドラゴンではない、見たことも無い魔物は己の腹を満たす為だけに船を襲い始めたのだ。


「学習した……まずいぞ……この魔物を放置すれば……また船が……」


 襲われる。

 リアスはその言葉こそは飲み込んだが、意図はその言葉を聞いたものには伝わってしまった。

 青い顔をする船員と兵士。

 リアスは倒れたメルを見つつ顔を歪めるのだった。

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