439話 子供であり、冒険者
「なんでだよ!」
シュレムはそう叫ぶがメルは冷静だった。
ここは船の中だ。
そして、狭い船内。
更には運がメル達に味方をするかのように心を読む少女は此処には居ない。
「武器を持ったら動きにくくなる」
だからこそ、メルは小声で仲間に伝えた。
「確かにそうだな……」
リアスは頷き伸ばしかけた手を引っ込める。
それを見て兵士達はあざ笑った。
「どうした? 我らが怖いのか」
「所詮は子供は子供」
もし、此処にあの少女が残っていならそんな愚かな事は言わなかっただろう。
しかし、メル達は怖いから武器を取らないのではない。
「皆、今!!」
メルが叫ぶとリアスがローブの下から取り出した針を飛ばす。
そう、元々彼はそう言う戦い方を得意としていた。
それだけではない。
「おらぁぁぁあああああ!!」
シュレムは拳を握り床を蹴ると兵士の懐へと入り込み拳を振るう。
鎧はあったが、彼女もそれが分からない程馬鹿ではない。
守られていないわき腹を狙ったそれは見事にめり込んだ。
ライノは笑みを浮かべると矢を撃ちだす武器を作り、それで交戦をする。
そう……。
彼女らは愚かでも恐怖を感じた訳でもない。
「我が意に従い意思を持て!!」
「な、なんだこのガキ共!?」
それは嘗てメルの祖母ナタリアが言った言葉だ。
子供だ女だと油断しているなら丁度良い……。
「マテリアルショット!!」
ルーフの兵士が窮地に陥った理由。
それは単純だった。
例え相手がだれであろうと油断してはいけないのだ。
それが弱いとされる魔物であっても、子供であってもだ。
しかし、彼らはそれをしてしまった。
だからこそ――。
「ル、ルク様――ひっ!?」
ただの兵士ではメル達を止める事は出来なかった。
「よし……後は兵士さん居ないね。今のうちに縛って置こう」
「それなら、私がしよう」
船長は拘束をするのを手伝ってくれた。
だが、同時に――。
「だが、まだ兵士はいるぞ? どうするんだい?」
「…………」
確かに今ここに居た兵士達は倒した。
だが、同じように行くとはメルは考えなかった。
まだ居るというのなら今のうちに責めた方が良いだろう。
しかし、入口は彼らに占領されているはずだ。
そうならメル達が出てきた事で警戒されてしまう。
かと言ってそれ以外に出る場所も逃げる場所も無い。
「ねぇ、船長さん……この船って丈夫?」
「ん? ああ、この船はリラーグとの友好の証でな。オーク製だ。そんじょそこららの船とは違う」
自慢げに語る村長の言葉を聞き、メルは強く頷く。
オークの作る船……それならきっと……耐えてくれる。
彼女はそう思うとゆっくりと仲間達へと目を向けた。
「シレーヌの力を使うよ」
「は?」
シュレムはそれを聞くと聞き返した。
シレーヌは水の精霊ウンディーネが姿を変えた者だ。
確かに彼女の力を借りれば何とかなるかもしれない。
だが……。
「海を荒れさせるって事? 流石にそれはちょっと……」
提案を聞き顔を引きつらせたのはライノだ。
彼はメルの提案を受け入れられずにいた。
だが……。
「違うよ、シレーヌにちょっと頼んでこの船を少し早く進ませてもらうの」
「……なんだって!?」
リアスは驚きの声をあげたが、無理もないだろう。
メルが言う精霊の力ならばそれは可能だろう、しかしそれは――。
「メル、また無茶を――」
「待て待て待て……力を使うとか良く分からんが、もしかして精霊か? それは無理ってもんだろう」
事情を知らない村長は呆れたように笑うが、メルは首を振るう。
「違うってか? だが、仮に出来たとしてどうやって船に乗ってる連中を降ろす?」
「海が荒れれば流石に船に戻ると思います……私達と一緒に死にたくはないでしょうから」
それはあくまで願いみたいな物だった。
しかし……メルはそうなることを確信もしていた。
海の龍……あの姿をもう一度出せれば……きっと怯えて逃げるはず。
「…………」
それを黙って聞くのはシュレムだ。
彼女は何も言わずただただメルを見つめていた。
「リアス、シュレム……もし、私の魔力が足りなかったらその時はお願い」
メルはそんな彼女を含んだ二人にそう言うと、部屋を飛び出していく……。
「って嬢ちゃんそっちじゃないぞ!?」
その直後、そうつっこまれ、慌てて反対へと走る彼女をリアスも慌てて追い。
シュレムは溜息をつきその場にとどまった。
「良いのかしら?」
「良くねぇよ……また無茶するんじゃないか……」
ライノの言葉にそう答えたシュレムはゆっくりと首を振るう。
そして、彼女は腕を組むと……。
「クソ、どうしたらいいんだよ」
と呟く……それを聞いたライノは微笑み。
「貴女しか出来ない事あるでしょ?」
「オレにしか?」
彼の言葉に首を傾げるシュレムはライノに耳打ちをされ……その表情を変えるとメル達を追うのだった。




