438話 出港! ルーフ地方に向けて
メル達は船へと乗り込む。
目的地はヒューエンスと言う街があるルーフ地方だ。
勿論乗組員は魔族が多く居た。
その理由は簡単だ。
「上に出る連中は魔族で固めろ! 海上にも奴らが居るかもしれないあくまで貨物船を装うんだ!!」
そう告げるのは船長だ。
彼はメル達へと目を向けると――。
「悪いがあんた達も会場にはあまり出ないでくれ……出る時は必ず確認を」
「はい!」
今度こそルーフへと渡る為にメルは頷いた。
だが、沈没した時、もし何も知らずにルーフに行っていたらどうなっていたのだろう?
そんな事を考えると彼女は恐ろしくなった。
もしかして、あのドラゴン……もう一人のエルフのドラゴンだったのかな?
そうだったら私達が生きてたのも頷ける。
だけど、流石にそれは無いか……やり方としては乱暴すぎるもんね……。
そう思いつつ、メル達は船の中で過ごすことにした。
出航をしてから早三日。
海の魔物に襲われることもあったが、そこは船が雇った冒険者のお蔭もあって難なく航海を続けてきた。
もうすぐルーフにつくだろう。
そう思っていたその時――。
「錨を降ろせ!!」
そう声が聞こえメル達は疑問を浮かべた。
「まだ、ついてないよな?」
リアスが窓を見て呟くが、まだ海が続いており陸は見えない。
「うん……」
メルは頷き不安そうに扉を見た。
すると外から聞こえたのは――。
「この船は何だ? 何故ここに居る?」
高圧的な人の言葉だ。
「見ての通り貨物を運んでいる」
どうやら話の内容から察するにルーフの船に止められてしまった様だ。
運が悪い。
そう思いつつもメル達は息をひそめた。
だが……。
「何だこの部屋は?」
「そこは船員の部屋の一つだ……入るのか? 臭いぞ?」
対応してるのは船長だろう。
そう聞こえ、周りには船員が居たのだろうげらげらと笑う声も聞こえた。
「……嘘をついている」
凛とした声が響く……。
それは女性の声だった。
女性は――嘘と言う言葉を使うと――。
「その部屋には乗客が乗っている。随分大事みたいだね?」
あざ笑うかのような声が聞こえた。
それはまるでそこに本当に誰かがいる事に気が付いている様でもあった。
まさか――まさか……。
メルはそんなはずが無いと考えつつ、頭を振る。
だが、確かにそれしか考えられる原因が無いのだ。
「何を言っている?」
「嘘をついてると言ってるんだ。開けてみればいいただの臭い部屋ではない。臭いが獣か魔物の臭いがするはずだよ」
ケラケラと笑う女性の声に息をのむ雰囲気を感じたメルは確信した。
心を読む瞳だっ!!
メルが考えた事、それは祖母ナタリアと同じ瞳だ。
魔眼と呼ばれるその力は様々な物がある。
だが、一人一人全く違う能力と言う訳ではない。
同じ力や似たような力もあるのだ。
だからこそ、メルは聞こえてきた女性には祖母と同じ魔眼があると睨んだ。
「そこの部屋に居る、開けてみればいい」
女性はそんな事を言い、彼女の言葉に従ったのだろう、扉は乱暴に空けられた。
鍵がかかっていた訳でもないのに乱暴にだ。
「ルク様、居ました!」
「ほらね……ああ、臭い酷い臭いがする」
入って来たのはルーフ……ヒューエンスと言う国の紋章を持つ兵士にメルと同い年位の少女。
彼女はメルを睨み。
「今すぐ、抵抗をせずに大人しくしていると土下座をするなら奴隷にしてあげる。そうじゃないなら死んで?」
ところころと笑った。
しかし、それに応じるようなメル達ではない。
黙って睨みつけると答えが買って来ない事に苛立ちを覚えた様子の少女はメル達を見回し。
「……っ!?」
リアスへと視線を向けると固まった。
「ルク様?」
そして、兵士の声には答えず。
彼女は見る見るうちにその顔を赤く染めていく……。
「そ、そうね、そこの人! どうするの?」
やけに上擦った声を出し始めた少女に疑問を浮かべつつ、メルが口を開こうとすると――。
「お前じゃないよ獣」
と淡々と言い放たれてしまった。
当然、メルは苛立ちを覚えるのだが、リアスの腕が前に出され立ち止まる。
「リアス?」
「俺達には俺達の目的があるし、奴隷も死ぬのも遠慮する」
彼はそう言うとメルへと目を向け、微笑む。
メルはその顔を見ると顔を赤くしていき尻尾はゆらゆらと揺れ……耳も落ち着かない様子だった。
「「チッ……」」
そんな二人のやり取りを見て、不機嫌そうにしたのはシュレムとルクという少女だ。
だが、二人がそれに気が付く事は無く……。
ライノと兵士は困ったように表情を変える。
「そう? じゃぁ死ぬしかないね? さっさと殺して、あの男はそうね。薬を飲ませて私の所に……顔を傷つけたりしたら許さないから」
彼女はそう言うとその場から去って行き……兵士達は剣を構える。
メル達はその行動に慌てつつも武器を手に取ろうとしたのだが……。
「待って!」
メルは武器に手を伸ばす仲間達にそう告げるのだった。




