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436話 異変と声

 シュレムの言葉に黙り込んでしまったメル。


「シュレムちゃん……他に、どうすればよかったのかしら?」


 ライノが問うと彼女も黙り、下を向く……。


「ルーフを目的地にしてるのは一緒よ? だけど、現状そのルーフは新しい国があってその人達が襲ってきている」


 彼はそう言うとメルの方へと目を向けた。


「そして、魔族(ヒューマ)以外の種族、私達を狙ってるわ……遅かれ早かれ、戦う必要はあるのよ?」

「だとしても!!」


 シュレムは彼の言葉に顔を跳ね上げた。

 するとライノは――。


「その時に手段が無かったらどうするの? 精霊の道具は強力な武器。それは貴女にも分かっているはずよ」

「それは……」


 分かっていた。

 確かに精霊の道具が無ければどうにもならない時があった……。

 無ければ今回以上の無茶をメルはしていただろう。

 だが、シュレムは――。


「納得できるかよ……人が、旦那が死にかけたんだぞ、エスイルも攫われた……」


 シュレムの言葉はメルの胸に刺さる。

 鋭利な刃物になったそれは……メルの心を抉るには十分すぎる物だったのだ。


「…………私は」


 意気消沈し、尻尾を丸めてしまった彼女。

 自分には何も出来ない、母達の様な力はない。

 そんな事は分かり切っていたのだ。

 だが、それでもメルは前へと進もうとしていた。

 しかし、エスイルを失い。

 彼女の心は知らず知らずの内に傷ついていた。


「メルがエスイルを怒らせたんだろ」

「――っ!?」


 覇気も無く――ただ、呟かれた言葉。

 それは彼女にとってのトドメとなってしまった。

 目を見開きシュレムを見つめながら大粒の涙を流した彼女。

 彼女はすぐにその焦点が泳ぎ始め……。

 ガチガチと歯を鳴らし震え始めた。


「メル!!」


 彼女の異変に気が付いたリアスはすぐに立ちあがりメルの傍へと寄る。

 だが――。


「シュレムちゃん、貴女は疲れてるのよ」


 ライノのそんな言葉にシュレムは反発した。


「ライノの旦那が死にかけてた時だって温めなかった! 死んでたかもしれないんだぞ!? 何を暢気な事言ってるんだよ!!」


 今度は怒鳴り声だ。

 目の前で起きた事に町長であるトサは口を出してはいけないと思っているのか、それとも困惑しているのかただ黙って成り行きを見守っていた。

 時期に収まるだろう……そう思っていたのかもしれない。

 だが……。


 私の所為? 私がいけないんだ……。

 わたしが……わたし……。


 そうじゃない、お前は裏切られた。

 大切な仲間に、姉に……お前は見捨てられた……。

 何故怒鳴る? お前は最善を尽くした。

 なのに……。


「私……の……」

「……メル?」


 ぶつぶつと呟き始めたメルの様子がおかしい。

 リアスはそう気が付き、彼女の名前を呼ぶ。

 するとメルの魔力に反応したのかナウラメギルから炎があふれ出た。


「私? 違う、私……私じゃ…………裏切られ……」

「おい、メル? メル!!」


 分からないのか? お前は裏切られた……。

 そんな奴らの為に何故お前が苦しまなければならない。


「メル!!」


 虚ろな瞳でぶつぶつと呟くメルに対し、リアスは横から彼女を揺する。

 何度も声をかけ、揺すり続けると――。


 り……あ……す?


 裏切られたんだ。


 裏切られてる? 違う、シュレムはそんな事してない。

 何なの? なんでそんな事考えて……。


 メルは次第に意識をはっきりとさせていくと、ゆっくりと周りを見た。

 目が見えなかった訳ではない。

 だが、ようやく彼女は辺りの景色を目にしたと言っても良かった。


「メル!!」

「……リアス?」


 彼の呼びかけにようやくメルは堪えると彼はほっとしたような表情を浮かべる。

 何があったのか?

 彼女は理解できず辺りを見てみるがどこか変な所は無かった。

 だが……。


「あれ?」


 メルが座っていた椅子から変なにおいがする事に気が付いたメルはゆっくりと手を動かすと……。


「……え?」


 そこには焦げた跡があり、メルは驚いた。

 魔法を使った記憶はない。

 禁忌も使えないはずだ……。

 なのに、そこは焼け焦げ……メルは慌ててトサの方へと目を向ける。


「ご、ごめんなさい!!」


 メルが謝るとトサは――。


「いや、それよりも、今の声はなんだ?」

「え?」


 彼の言葉にメル達は首を傾げる。


「声? 声ってリアスちゃんがメルちゃんを呼んでただけでしょう?」

「そうじゃない、彼女や彼の声ではない……別の、別の者の声だ」


 彼は首を横に振るとそう言う……。

 メルは先程の事を思い出し、彼へと聞き返した。


「あの、女性の声……ですか? 裏切りとか見捨てられたとか……」

「ああ、そうだ。そんな事を言っていた……まるでその声は真実のようにも聞こえた……」


 彼は困惑し、メル達を見るが勿論その場にいる女性はメルとシュレムの二人だけだ。

 その両方の声を聞いている彼は先程聞こえた声とは違うと考えたのだろう。


「一体なにが起きた?」


 そう問いかけられたメル達。


「何がって……」

「分りません、だけど……もしかしたら」


 もしかしたら、今の声もう一人のエルフ?

 それにあの言葉……私は信じそうになった。

 もしかして、エスイルは……。


 あの言葉を聞いてエスイルは……だけど今必死に違う違うって思ってるのかな?

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