433話 港町デゼルト
港町デゼルト。
フォーグ地方の港町の一つであり、水龍デゼルトが現れた場所。
その龍が連れてきた冒険者達により現レライ王が助けられた。
その為、その冒険者の一人フィーナとの面識があったロクに統治を任された場所でもあった。
「ここがその港町か……」
リアスは目の前に広がる街の外壁を見て取りあえずはほっとしたようだ。
メルもまた安堵の溜息をついていた。
その理由はちゃんと門兵が立って居たからだ。
「なんの用だ?」
彼らはメル達が近づくとそう口にする。
いつも通りだ。
「ルーフ地方に行く船を探しに来たんです」
メルがその地方の名を告げると二人の門兵は顔を合わせる。
「ルーフ地方、か……」
「何をしに行くのか分からないが、森族やパラモネが行くのは辞めた方が良い」
どうやら問題がある様でお勧め貼られなかったメル達。
だからと言って行かないという訳にはいかず……。
「どうしても行かなきゃいけないんです」
メルがそう言うと門兵達は止める理由が無い。
ため息をつきながらも道を開け……。
「滞在は船の出向迄、街に入るには一人銀貨三枚だ」
と口にした。
メルは財布の中から金貨一枚と銀貨二枚を取り出すと門兵へと渡す。
門兵は頷くと扉を開けてくれた。
「入って良いぞ」
メル達は門を潜り抜け、デゼルトの中へと入る。
ルーフの騎士の信仰はまだ受けていないのだろう、街は平和そのものだった。
だが……。
「行くなら気を付けろよ、相手は子供だろうと殺したり、その……酷い事をするという話だ」
「ええ、気を付けるわ」
ライノは頷き、答えると門兵は心配そうな目をメル達へと向ける。
「やっぱり……」
「ごめんなさい! 行きますね」
メルはまた注意をされるのだと判断し謝ると街の方へと目を向けた。
にぎやかな街だ。
元々は何もない街だったとは誰が思うだろうか?
ここに嘗て母達が来た。
それを聞いただけでメルは気持ちがはずんだ。
「早く港に行こう?」
この街はデゼルトの銅像があるという事だ。
メルはそれを見てみたく、仲間達を急かす。
「メル、待ってくれよ!」
そんな彼女を見て楽しそうに言うのはリアスだ。
彼はメルの後を追い、それを他の仲間達も追う。
そして……。
「わぁぁぁぁああ」
メルは歓喜の声をあげた。
そこには立派な銅像があり、それは確かにデゼルトそっくりなのだ。
余りにもそっくりなそれを見て、メルはその銅像へと触れようとした。
だが、当然その手は止められた。
「それはこの街の守り神様だ、気安く触れるな!」
「あ、す、すみません……」
余りにも精巧な作りであり、メルは思わず嬉しくなってしまったのだ。
だが、確かに触れては失礼だ。
すぐに謝ると注意をした兵は柔らかい表情へと変えた。
「いや、分かれば良い……物わかりの良い子供で良かったよ」
「凄い銅像だな」
リアスが彼にそう言うと彼は頷き誇らしげに胸を張る。
「ああ、この街が出来る前に現れた救世主を運んできた――」
彼がそう語り始めた時だ。
メル達の周りがざわざわとし始めた。
一体どうしたのだろう? メルが気になっていると――。
「ユーリ様? いや、それにしてはお若い……」
「いや、いやフィーナ様のようにも見えるぞ?」
聞こえてきたのはそんな声だ。
メルが声が聞こえた方に目を向けるとざわつきはより大きくなった。
「きっと二人の子よ、確か子供が生まれたって聞いたわ」
「どちらも女性だろ? それはありえん! とは言ってもお二人によく似てる」
「……なんだ急にこいつらは」
眉をひそめる兵士は集まった人たちを散らす為だろう腕を振るう。
その時だ、人垣をかき分け一人の男性が現れた。
「……初めまして、でよろしいですな」
「……え?」
その彼は頭を下げ、メルは困惑した。
「私はロク様の部下でこの街を統治するよう言いつけられた者です。名を……トサともうします」
「トサ爺、この騒ぎは何だ!!」
老人が丁寧なあいさつをする中、兵士は苛立ったように問い詰める。
すると老人は溜息をつき……。
「とんだ迷惑をおかけしました」
「い、いえ……私達は迷惑だなんて――」
思っていない。
事実、そうだった……だからこそ、メルはすぐに否定したのだが……。
「やはり、お二人のご息女だ。お優しい」
「あの、えと……」
彼の言葉にメルは困惑してしまう。
それもそうだろう、メルは本当に迷惑だと思っていないのに何故か感心されてしまっているのだから。
「コギル、この者はデゼルト様が連れてきた英雄の子だ。丁重にもてなすように……あの無法違ってな」
「は! ……へ? ちょ、ちょっと待ってください!? この子が……!?」
メルを示しそう言う村長と兵士。
当然メルは目を丸くし……。
「どうやらユーリさん達のお蔭、な……みたいだな?」
「う、うん?」
シュレムとメルは短い会話を交わすと困惑するのだった。




