424話 捜索
ライノを探し始めたのは日がまだ上り切ってはいなかった。
だが、今はすっかり日が昇ってしまっており……。
「ライノさん、何処に行ったんだろう……」
メルは一向に見つからない彼に不安を感じていた。
「何かあったのか……」
リアスは顎に手を当てそう呟いた。
「ライノの旦那だぞ? そう簡単に……」
シュレムはそう言うが、リアスは首を振る。
その様子を不満気な目で見ていたシュレムだったが、彼の言葉に黙り込んだ。
「俺もそう信じたい。だが、もしそうだったとしたらライノはなんでいないんだ?」
そう、彼がこの場に居ない。
それは事実であり、変えようのない物だ。
もし、何かあった訳ではないというのならば……それはメル達を置いて逃げた。
もしくは裏切ったという事だ。
だが、彼がそうするとは考えにくい。
「…………」
だからこそ、メル達は心配なのだ。
楽観的に考えていたシュレムもようやく今の状況を把握し……。
「な、なぁ? 大丈夫だよな? ライノの旦那、だから、大丈夫だよな?」
わなわなと震え始めた。
「分からない、ライノなら危険は避けて通るはずだ……だけど、ここまで連絡が無いという事は」
最悪の事を考えた方が良い。
その言葉を飲み込んだ事はメルには理解出来た。
しかし、シュレムは――。
「ど、どういう事だよ! おい!」
彼女は意味を理解できずリアスを問い詰める。
するとリアスは溜息をつくしかなく……。
「とにかく探すのが先決だ」
そう言うと先を歩き始めた。
「ねぇ、リアス……空から探すのはどうかな?」
メルはそう言うとリアスは頷いた。
しかし、どこか不安そうだ。
「メルがか? 魔力の方は大丈夫なのか?」
「うん! もう大丈夫だよ?」
メルがそう言うとリアスは辺りを見回した。
確かに見わたしは利くが、陰になっている場所もある。
一つ一つ探すのは手間だろう。
「分かった、何かあったらすぐに降りてくれ」
「うん! 任せて!」
彼の言葉にメルは笑みを浮かべて答えた。
そして――。
「我らに天かける翼を――エアリアルムーブ!」
魔法を唱えると空へと舞い上がるのだった。
「おお! 良い眺めだ!」
そう大きな声で言ったのはシュレムだ。
メルは一瞬何の事かと考えたがすぐにその理由を擦ると慌ててスカートの前と後ろ抑えた。
そして、真っ赤な顔をリアスへと向けると……。
彼は明後日の方へと目を向けてくれている。
そんな彼の気遣いにほっとしつつ、メルはシュレムを睨む。
「もう! 変な事言わないでよ!!」
そして、彼女にそう一括すると溜息をつき改めて辺りを見回した。
「どうだ! メル!!」
リアスの声に反応し、彼女は思わずスカートを押さえ直すが辺りには何も見えない。
首を傾げつつ彼女はゆっくりと地上へと降りる。
そして――。
「駄目、少なくともこの辺りには誰も居ないよ」
そう口にするとリアスは首を傾げた。
だが、メルが嘘を言うはずないと彼は考えたのだろう。
「レライの谷は見えたか?」
彼が指しているのは恐らくレライの野営地だろうと考えたメルは頷き答えた。
「何も無かった ただ……」
「ただどうしたんだ?」
シュレムは彼女の言葉を待ち、彼女はリアスの目を見て話す。
「谷がいくつかあった……けど、どれが野営地だったっけ?」
がっくりと項垂れたリアス達。
それもそうだ……この状況で彼女がふざけている訳ではないが、まさかこんな時にまで方向音痴だったと思い知らされるとは思わなかったのだ。
そう考えたリアスは頭を抱え、メルはそんな彼を診て申し訳なさそうな表情を浮かべた。
「あ、あの……私、ふざけてるわけじゃ! それに谷だったら全部見たよ?」
分からないなら全部見ればいい!
そんな判断をするのはメルならではと思うが……。
「分ってる、うん、分かってた」
彼は諦めた様にそう言うとメルは申し訳ない気持ちになった。
だが、メルもメルでちゃんと周りは確認している。
彼女は何もないという事に関しては嘘はついていなかった。
「でも、何処に行ったんだろう?」
だからこそ、メルは疑問だった。
まだ魔法が切れてるわけじゃない……けど、飛び上がった所でなにかを見つけられるわけでも……。
そう思うと再び空を舞うのは魔力の浪費だ。
先程パッと見て判断したのならそれも手だろうが、メルはちゃんと確認していた。
だとすると……。
「レライに向かった訳じゃない?」
「何でだよ! 旦那が裏切ったって言うのか!!」
いくらメルの言葉でもそれは許せない! そうとでも言うかのようにシュレムが吼える。
しかし、メルはあくまで冷静に返した。
「そうじゃないよ、魔物や何かに追われて迂回をしたって言うのは考えられるよ? ライノさんなんだしちゃんと伝えてくれるはず……なのに伝わってない上に帰って来てないという事は……」
「考えたくはなかったが、やっぱり襲われたか……」
メルはリアスの言葉に頷きシュレムの方へと目を向ける。
彼女は黙ってはいたもののすぐにメルの言いたかったことを理解し……。
「でもさ、どうするんだよ! そうなったら何処にいるか分からないだろ?」
「うん……」
彼女の言葉もまた……真実だ。
だが、メルはどうしてもライノがそのまま逃げるとは思えなかった。
何か証拠を残しているはずだと……しかし、それらしきものは今まで見た風景にはなかった。
「おかしいよ……ライノさんが何も残さない? 助けに来れるようにって何か手を打ってくれてもいいのに……」
そうできない何かがあったのだろうか?
メルはそう考え、逝きついた答えに息をのんだ。
「まさか……」
そんなはずはない。
メルはそう思いつつ声を絞り出すように呟いた。
「ルーフの騎士に襲われた?」
その言葉は二人の仲間も固まってしまうものだった。




