422話 ライノの行方
メルがリアスに支えられ外に出ると其処には多くのテントが見られた。
どうやら壁を作る事は多少ではあったが成功したようだ。
『…………』
ほっとする彼女の目の前に現れた精霊はドリアードだ。
彼女は幼くなってはいたが、他の精霊とは違い頬を膨らませメルを睨んで居た。
「え……えっと」
その理由が無理をしたからだと察したメルは瞳を泳がせる。
しかし、そんな事をしても無駄だ。
彼女はメルの視界から外れると視界に入るように動いたからだ。
「ご、ごめんね?」
謝るもドリアードはぶんぶんと首を横に振る。
そして、その瞳に溜めた涙をこぼしながら……メルへと抱きついた。
「どうした?」
困惑するメルの横で精霊が見えないリアスは首を傾げる。
だが、彼女の様子を見てすぐに何があったのかは理解したのだろう。
「精霊にも心配されていたんだ……これからは無茶はしないようにな」
「うん……」
メルは頷き、ドリアードを撫でる。
そして、周りへと目を向けた。
何人かがメルを見て驚いている表情を浮かべていた。
彼らはメルへと近づき……。
「お前! こんな中途半端な壁を作りやがって!!」
そう叫びながら近づいて来た。
しかし、中には……。
「止めろ、相手は子供だぞ! それに中途半端だって? 元々壁は木々の後ろで作る予定だった! 十分に役目は果たしてくれている!」
と言う者も居た。
メルは様々な人に囲まれてしまう結果となり、彼女を責める者、庇護する者の間でわたわたとする。
「メルが困ってるだろ? 他でやってくれ……」
リアスは申し訳なさそうな表情で彼らへと告げるが、メルを庇護する者はともかく、責める者はそれで納得いくわけがない。
彼らはリアスへと迫り、彼が支えるメルへと指をさす。
「ガキの癖に男付なのもむかつくが、お前らが先に壁を作るって言ったんだぞ!」
「そ、それは……」
間違いない。
メルは思わず口を濁した……。
だが、リアスはあくまで冷静だった。
「だから、それに関しては魔力が足りなかった……まさか、孤児院に居た人達は見捨てろって言いたいのか?」
「……当たり前だ! 奴らは街の人間じゃねぇ!!」
そう叫ぶ男の瞳には若干迷いが見られた。
それはそうだろう。
だが、それでも彼は口にしてはいけない言葉を口にしたのだ。
それにより火が付いたのは庇護派だ。
「子供達を見捨てる!? ふざけるな!! そもそもお前達のような人間が食料が何がって拒み、解決策も考えずに邪魔者扱いをするから、彼女達は離れた場所に孤児院を立てたんじゃないのか!?」
そうだそうだ! と叫ぶ庇護派。
それに勢いつけられたのか、怒鳴る男は……。
「最初から街に居れば一緒に逃げていた! こんな事にはならなかったんじゃないのか!? そうすればお前達の望むような壁をこの子達は生み出せたはずだ!」
それは買い被り過ぎだろう。
メルはそう思ったが、敢えて何も言わなかった。
事実、メルの魔力がちゃんとあったとしても壁を作り切る事は難しいだろう。
そして、現実は現実。
そうならなかったのでは? と言うのはあくまで違った結果を予想した願望に過ぎず。
しかし、邪魔者扱いをするという言葉は彼らに刺さったのだろう。
「チッ!」
腕を回し暴力に訴えようとする者も居た。
慌てるメル達だったが、もはや止められはしない。
そう思っていた時だ。
「やめないか……」
そう言葉を発し止めたのは他でもない王自身。
彼らは此処に王がいる事に驚き、呆然としていた。
彼は彼らが黙ったのを見るとメルへと目を向ける。
「もう良いのか?」
「は、はい……多分、なんとか……」
メルがそう言うと、彼はうんうんと頷いた。
「まだ疲れていそうだな、しっかりと休んでくれ」
「あ……」
見透かされていた事にメルは驚いた。
だが、そうも言ってはいられないのだ。
「まだ、魔物が近くに居るかもしれませんから……」
壁は作った。
しかし、壁の中の魔物はまだ倒していない。
メルはそれを倒し、やっと終わるのだと考えていた。
しかし……。
「それならもう兵を派遣している。君達は君達のやる事があるのだろう? なら、しっかりと休み、それをするべきだ」
「メル、王様の言う通りだ……シルフの道具ももう見つかったんだろ?」
リアスにも言われメルは一瞬迷った。
しかし、頷くと……。
「そう、だね……」
と口にした。
だが、ふと不安がよぎったのだ。
「ライノさんは?」
エスイルが居なくなった時を思い出し、メルはライノの事を問う。
だが、リアスは首を横に振った。
「分からない、まだ戻って来てはいないんだ」
「で、でも……」
ライノなら空を飛んでレライの兵達の元へと向かった。
しかし、その兵達とはメル達が先に出会い、彼の姿は無かったのだ。
なら、もう合流したと考え、此処に向かって来ていても良いはずだ。
だというのにライノは一向に姿を見せない。
「どこに行ったの?」
メルはその事にひどく不安を感じ……空を見上げるのだった。




