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私の夢は冒険者だったのにっ!!  作者: ウニア・キサラギ
18章 成長した少女
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419話 ドリアードの詠唱

「シュレム、近くに……!」


 メルはシュレムの持つその盾を求めた。

 いや、正確には盾に張り付いて居る精霊だ。


「お、おう! ついにこの時が来たんだな」


 だが、彼女は何かを勘違いしている様だ。

 その顔をニヤケさせている。


「シュレム?」


 メルは当然、何を考えているのかは大体予想が付いた。

 家族、それもこれまで一緒に旅をしてきたのだ。


「今はふざけてる場合じゃないよ?」


 メルがそう言うとシュレムは真剣な顔で頷く。

 どうやら分かってくれたようだ。

 と安堵するもどこか不安にも感じた。


「ああ、分かってる、必ず幸せにするってちゃんと誓うぞ!」

「そうじゃなくてね!?」


 やっぱりか、メルはそう思いつつ苦笑いをする。

 だが、幸か不幸か彼女のお蔭で緊張は解けた。


「それじゃ、ドリアード……お願いがあるの」


 メルはシュレムの傍にいる精霊、ドリアードへと声をかけた。

 植物をあしらえたかのようなドレスに身を包んだ少女はこくんと首を縦に振った。


「この辺りに大きな壁が欲しい……街を囲いたいからなるべく広い範囲で……出来る?」

『多分、でも……メルが……』


 彼女の不安は今のメルの魔力では倒れてしまうっと言うものだろう。

 だが、メルは引く訳にはいかない。

 そう思い、力強く頷いた。


「分ってる、だからちょっとは回復するようにしたよ……お願い」


 そう言うとドリアードは迷うそぶりを見せる。

 当然だ。

 幾ら魔力が少し戻ったからと言って大精霊の実体化は魔力の消費が激しい。

 メル自信、それは分かっている。

 それでもメルは引く訳にも逃げるわけにもいかない。

 もし、此処でそんな事をしてしまえばレライの住民たちは眠れぬ夜を過ごすことになるのだ。

 それこそ悠長に休んでなど居られないだろう。

 ほんの僅かでも彼らを守る壁が欲しい。

 メルはそう思い、ドリアードに頼んでいるのだ。


『分かった……』


 態度を変える様子の無いメルに大きなため息をついた草花の精霊はようやく折れた。

 そして、ゆっくりとその詠唱を口にする。


『草花の精霊よ、我願うは命育む草花の恵……我らを邪なるものから守る力を与えん、我が願いを聞く精霊(モノ)よ、今ここに草花の王の力を示せ』


 ゆっくりと口にされたそれは、精霊を覚醒させる詠唱だ。

 メルは頷き、彼女に向かって微笑んだ。


「ありがとう、ドリアード」


 詠唱は覚えた。

 後は……ちゃんとできるかどうかだね……。


 メルは深呼吸をしレライの人達を待つ。

 緊張はシュレムのお蔭で解けた。

 後は彼らが来た後に魔法を唱えるだけだ。






 メル達の元へ彼らが来ると一人眉を顰める男性が居た。


「なんだ、まだ壁が出来ていないではないか!」


 そう言うのはレライの王宮魔術師だ。


「え?」


 だが、その事に関してはもうすでに話は伝えられているはず。

 メルはそう思っており、首を傾げた。


「え? ではない! こちらには民の安否が――!」

「ま、待って! それには理由が!」


 困惑するメルの前へと立ち、そう叫んだのはリユだ。

 彼女は王宮魔術師の前に立つとちらりと倒れたアベルの方へと目を向ける。


「むぅ……何かあったのか?」


 流石に同じ国の仲間に叫ぶ気にはならなかったのか……それとも彼もまたアベルの方へと目を向けたからか……。

 勢いは失われ、話を聞いてくれる様だ。

 ほっとしたリユはその口をゆっくりと動かした。


「実は――孤児院が野盗に襲われ、ルカちゃんも攫われていました」

「……それで?」

「アベルは暴走……してしまい、先走りあんなことに……でも、子供達を守る為にこの子達が手を貸してくれたんです。だからまだ壁が出来ていない訳で……」


 リユの説明を聞き、納得がいかない様子の彼は大きく溜息をつく。


「事情は分かった。だが、それとこれとでは――」


 話が違う、とまでは言わなかった。

 だが、メルは怒られて当然だと思ってしまった。

 何故なら不安がり、泣き出す子供……今にも泣きそうな女性。

 苛立つ男性に……ようやくここまで来たのだろうよろよろとしている老人。

 彼らの命を守るのが、騎士達の仕事だ。

 しかし、だからと言って今回は安全な場所への移動と言われていたはずであり、彼らは喜んだのだろう。

 だが、現実はただの平原。

 これでは魔物に襲われてしまう……。


「なぁ、ライノの旦那は? 話をしに行ったはずだぞ?」


 そんな中、シュレムはふと疑問を口にする。

 すると王宮魔術師は更に眉をひそめた。


「ライノ? そう言えばお前達の仲間が一人足らんな」


 彼は何かを考えるようなしぐさを取るが、すぐに首を振る。


「だが、私は知らん会っていない」

「で、でも……ライノさんは現状を伝えてくれるって……」


 魔力不足に陥ったメル。

 その事は伝えてくれるはずだった……。

 まさか、迷子になったのだろうか? いや、ライノに限ってそれは無い。

 メルはそう思いながら不安を感じるのだった。

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