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私の夢は冒険者だったのにっ!!  作者: ウニア・キサラギ
18章 成長した少女
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418話 不安と求める力

 メル達は孤児院へと辿り着くとほっと息をついた。

 だが、まだライノは戻ってきていない。

 移動はしてしまったが彼の事だ崖を見ていなかったらこちらへと来てくれるはずだ。

 手早く、盗賊たちを近くにあった木へとつなぐと不安そうな子供達へと近づく……。


「もう大丈夫だからね」


 メルはそう言い、一人の子の頭を撫でる。

 そして、被害に遭った二人の女性へと目を向けた。

 シスターはまだ大したことは去れていなかったようで落ち着きを取り戻している。

 しかし、もう一人……ルカという少女は違った。

 ただ、ただ黙ったまま連れられるまま彼女は歩く。

 その瞳には光が無い……。


「…………」


 大丈夫ですか? なんて聞ける訳もなく、メルは黙り込んだ。


「それで、メル……どうするんだ?」


 リアスがメルへと近づきながら訪ねメルは彼の言葉に少し考えこんだ。

 理由は簡単だ。

 彼の言う通り、これからどうするのかが問題だ。


 メルは魔力が高い方だ。

 しかし、精霊の力を解放するには多くの魔力を消費する。

 恐らくメルでは持って数秒使い続ければ魔力切れを起こしてしまうだろう。

 そうなれば当然、魔力を回復する為に気絶してしまう。

 そうなっては意味が無い。


「やれるとしたら一回、それも一瞬だけ……」


 メルはそう口にした。

 事実、それ以上は無理だろう……。

 魔力さえ回復すればできない事は無い。

 メルはそんな自信があったが、今は無理だ。

 出来るとしても僅かな魔力だけ……それだけで出来るとしたら……。


「一瞬か……」


 リアスは顎に手を当て考え込む。


「一日休めばもっと余裕が出来るんじゃないか? 一日ぐらいならレライの兵と協力して俺達でも守れる」


 彼はそう提案した……それはそうだろう……たったの一瞬で壁を築くことが出来るのだろうか?

 ただでさえ精霊の力で壁を作るなんて言う無茶をしようとしているのだ。

 何よりメルへの負担があるだろう……。


「一瞬でも十分じゃないのか?」


 だが、シュレムは首を傾げる。

 メルは首を振ると彼女は訝し気な表情を浮かべた。


「じゃぁオレの魔力じゃ駄目なのか?」


 それが出来れば問題はない。

 しかし、シュレムには魔力はあっても魔法の才は無いのだ。

 アーティファクトであれば扱えてもそれでも、彼女に精霊を解放することは不可能だろう。

 それが出来るのは魔力と精霊力を併せ持つメルやエスイルだけだ。


「……とにかくやってみる、なんとかするから」


 メルはそう口にした。

 それは母の口癖だ。

 なんとかする……それは不思議な言葉だった。

 母はそう言うと必ずなんとかしてくれる……しかし、メルには不安があった。

 しかし、だからといってしないわけにはいかないのだ。

 メルは壁を作ると言ってしまったのだから。

 いや、事情さえ話せば待ってくれるだろう。

 それでもメルは街の人々を待たせたくない。

 そう考え――。


「だから、今は休むね?」


 少しでも魔力を取り戻せるようにその場に座り込み、瞼を閉じた。






 嘗てメルの母は夢の中で本の精霊ソティルと話をしていたらしい。

 それを聞くとメルも話をしてみたいと望んだ。

 しかし、ソティルはメルの所には現れなかった。

 いや、正しくは精霊なのに見ることが出来ないと言った方が良いだろう……。


 その理由はメルとユーリの魔力の差もあるのではないか? と祖母ナタリアは言った。

 何故そんな理由になったのか分からないメルは尋ねてみた。

 すると母ユーリは恐らく世界一魔力を持ち、その回復力が常人の数倍、通常の魔法であれば永遠と唱えられる。

 対し、ソティルの魔法を使えば数回で魔力不足に陥るのだ。

 つまり、並みの魔法使いはおろか、魔力がすぐれた才ある者でもソティルを使うにはユーリ並みの魔力が必要ではという事だった。

 メルは確かに魔力が高い方だ。

 比べる人には寄るだろうが熟練の魔法使い……大人をも越すだろう。

 だが、それでも母ユーリには届かない。

 だからソティルはメルの前には姿すら現さなかった……。

 しかし、メルはそれが羨ましいとは思わなかった。


「…………」


 それでも、今は母の魔力が欲しいと願った。

 それさえあれば街を救うことが出来るのに……と……。






 どのぐらいの時間が経ったのだろうか……。

 メルはゆっくりと瞼を開けると丁度リアス達がメルの元へと向かって来ているのが見えた。

 きっと彼らはメルを休ませている間にレライの民が来るのを確かめに行ってくれたのだろう。


「メル! 国の人達がこっちに来ている、もうすぐ着くはずだ」

「うん……」


 メルは頷き、左腕を擦る。

 不安な時にそこを触る癖は何時から無くなったのだろうか?

 少なくとも冒険者になる! と口にする前までは頻繁にあったはずだ。

 左腕にあるのは……偽りの聖紋、祖母に無理を言い掘ってもらった母と同じもの。


 不安……なのかな?


 これから世界を救う。

 そんな大それたことをするというのに、メルは怖かった。

 自分が失敗するだけでまず国が一つ滅びるのではないか? と……。

 それでもメルは逃げたり諦める事はしなかった。


「よしっ! 陽光よ我が身に降り注ぎ糧となれ! マナヒール!」


 メルは魔法を一つ唱える。

 現状を変えるにはまず魔力が必要だ。

 そして、メルは魔力が満ちてくるのを感じた……。


 やっぱり、これでも魔力は十分じゃない。

 だけど……使えない訳じゃない。

 一瞬、たったの一瞬だけど……それでも魔力をギリギリまで使えば、そうすれば……きっと壁は作れる。

 なんとか、するしかないんだ。


 メルは覚悟を決めるとシュレムの方へと目を向けた。

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