410話 子供たちは何処に?
「人、人って……」
シュレムは驚いており、辺りを見回す。
確かに斬り傷は荒く乱暴だが高い位置にあり、背の低いゴブリンでは届かないだろう。
「酷いわね……子供達も殺されたのかしら……」
血の跡を触りながらライノはそう呟いた。
「いや、それはないな」
だが、リアスはそれを否定する。
メルも彼の意見が正しいと考えた。
確かに服らしき布の残骸はある。
だが、レライの兵も含め人の死体は無いのだ。
そこから考えられることは一つ。
「まさか、攫われたのか? ルカも一緒に!?」
アベルは驚いていたが、ルカと言うのが彼の部下なのだろう。
「でも、ありえるかも……ルカちゃん、可愛いし……」
そう言うのはリユだ。
彼女はアベルの部下と言う人の事を思い出しているのだろう。
そこでメル達はようやく彼の部下の名前と性別を知る。
そして――。
「なら、なおさら連れて行かれた可能性が高いな」
「うん……」
メルは頷き、かつてリラーグであった事件の事を思い出す。
牢屋に捕らわれた少女達。
そして、ある部屋に居た美しいが、露出が多い涙目の女性。
彼女は助けを求めて来て、メルは彼女を助けようとした。
まさか、あんなことが?
でも、そうとは限らないよね……。
そう頭の中で考えるも、不安はどんどん膨れ上がっていく……。
当然だ、シスターも美しい人だった。
そして、子供の中には女の子もいた。
その上、アベルの部下は可愛いという情報をリユから得た。
「……つまり、攫ってあんなことやこんな事を……」
何故かつばを飲み込み険しい表情を浮かべるシュレム。
彼女は女性が好きだ……許せないと考えているのだろうか? とメルは思ったのだが……。
「う、羨ましい……」
「シュレム?」
メルは続く言葉に呆れ、声を低くし彼女の名前を呼ぶ。
すると彼女は慌てた様に手を振り……。
「ち、違うぞ! 浮気じゃないからな!!」
と言うのだが、メル達は一斉に溜息をつき半眼で彼女を見つめ。
「ど、どうした?」
彼女は引きつった笑みを浮かべている。
「今はふざけてる時じゃないの!」
「そうだよ!」
腰に手を当て怒るリユとメルの二人に困惑するシュレム。
何故怒られているのか分からないと言った所なのだろうか?
「いい? 女の子が攫われて酷い目に遭ってるの! 助けないと!」
そして、小さな子を叱る様にリユは言い。
不安そうな表情でアベルの方へと目を向けた。
「ああ、そうだな……ゴブリンならともかく、人に襲われたのなら早く助けないと」
自分の部下ならゴブリンに負けない。
彼はそう思っているのだろう、いや事実……油断さえしなければゴブリンは敵ではないだろう。
「どんな敵にも油断しないように、そう教えたからな」
格下の魔物に殺される。
冒険者や戦う者にとってそれは珍しくもない事だ。
何故そうなるのか? その理由は簡単だ。
「…………」
自分の実力が相手より高いと知り、実際に凶悪な魔物達を退けたという自信から……こんな魔物に負けないという過信が生まれる。
そして、その過信によって足元をすくわれ、思いもよらない失敗をし、命を落とすのだ。
メル自身、そんな冒険者を何度も見てきた。
何度も見送り、帰ってこない人達、帰って来たとしても無残な姿になって戻ってくることだってあった。
「とにかく、この人達が何処に居るか探さないと」
このままでは何も出来ない。
メルはそう判断し仲間達に告げる。
「そうね、このままじゃ壁を作ったとしても野盗に襲われるわ」
折角安全な場所を手に入れてもそこが襲われたのでは意味がない。
メル達は安全を確保するため、孤児院を襲ったであろう野盗を探すことにした。
そうなると当然最初にすることはねぐら探しだ。
どうやらこの孤児院は使われていない様だが……。
「外に出よう、布やらが残っていたって事はそんなに日数は経っていないはずだ。まだ足跡が分かるかもしれない」
リアスはそう提案し、外へと出る。
メル達も彼の後を追い、外で証拠となる物を探すことにしたのだった。
だが――。
「これは……」
地面を見てみると無数の足跡。
ゴブリンの物もあれば小さな子供の物もある。
すぐに犯人のものを特定するのは難しいだろう。
「急がなきゃいけないのに……」
リユはその表情に焦りの色を見せる。
だが、そうしたってなにも変わる訳ではない……。
メルはそう思い、しゃがみ込み地面を確認する。
「駄目だ! これじゃぐちゃぐちゃでどれがどれだか……」
リアスもお手上げなのだろう、頭を乱暴にかきむしった。
そんな時だ……。
彼の目に畑が移ったのは……。
「リアス?」
メルは不思議そうに彼を見る。
そこにはじっと畑を見ているリアスの姿。
「もしかしたら……! 皆はそこで待っててくれ!」
畑に近づいた彼はその中へと入り、何かを探す。
そして――。
立ち上がると口元に笑みを見せるのだった。




