407話 新生レライのために
メルはそれからアリアの話を詳しく聞いた。
どうやら、シュカの事はあったものの、街の人々やシルトたちの被害は少なく、ひとまず大丈夫だという事だ。
リラーグ王、シルトの話ではレライ王シュタークと協力体制を取り、ルーフの暴挙に対し反撃に出たいという事だった。
だが、現状レライは身を守る事も精一杯だ。
何故なら野営地には壁も無いのだから……。
メルは仲間を連れレライ王シュタークの元へと行くとアリアの話を彼にも伝えた。
すると彼は頷くものの……。
「今は難しいな」
それは誰もが予想していた事だった。
国の現状がこうなっている以上、リラーグと連携を取りたくともできないだろう。
それは分かっているはずだ、なのに何故そんな無茶な要求を出すのだろう?
メルも疑問に思ったのだが……。
『シルトは勿論こっちの支援を先にするって言ってたよ?』
「そう言う事は早く言おうね?」
メルは頭の上に居るシルフに思わず突っ込みを入れてしまった。
幸い、精霊との会話なので森族ではないレライ王には良く分からない言葉だろう。
例え森族の者が聞いたとしてもそれはそれでアリアの声も聞こえるので問題はない。
「……精霊との会話か?」
シュタークはメルへと問い、メルは頷いた。
そして……。
「シルトさんはこっちの支援を優先させるって言っていたみたいです」
「そうか、助かる……」
これで安心して旅立つことはできる……かといったらそれは違う。
何故ならこの野営地は未だ危機に晒されてるからだ。
このままでは魔物に襲われたりしたらひとたまりもないだろう。
幾らエスイルが自我を保ち魔物を倒してくれていたとしても、それも長くは持たないはずだ。
だからこそ、早々に対処をしなくてはならない。
「…………それで、俺達は何をすればいいんだ?」
メルがその事を考えていると、リアスはメルへと問う。
どうやら、彼はメルがこのまま去るはずがないと考えたようだ。
ライノもその事は予想していたのだろう、頬に手を当てるとゆっくりと口を開く。
「まずは壁を作らないといけないわね、簡易的な物でも良いから魔物が入って来ない様な……それにここは確かに今は安全よ? だけど攻められてしまったら逃げ道がないわ。上の方に出た方が良いと思うのだけど」
「しかし、壁の材料はどうするのです? 木材もそう簡単に用意できるわけではないんですよ?」
そう口にしたのは王の傍にいる男だ。
彼は戦いには向かないような感じだが、まるで王を守る様に立ち腰には剣があった。
だが……メルにはそれが変に見えてしまった。
隙だらけなのだ。
有事だから武器を持っている、そう捉えて間違いは無いはずだ。
だが、そんな事は今は関係ないかとメルは彼の問いに答えた。
「それには……考えがあります」
「まさか魔法で作るとでも? 幾らあの魔法使いの娘だとしても、あの者本人ではない、私は信用できないな」
彼はメルの事を誰からか聞いたのだろう、そう言うとメルを見下すような目で見てきた。
それに対しシュタークは……。
「止めるんだフリッツ、私の恩人の娘だぞ」
「ですが、王……お話に聞く本人であれば新たな街を囲う壁を作り、その親である大魔法使いなら結界をも作れるでしょう! だが、此処に居るのはその二人ではなく、ただの小娘です! どうやって信用すればよいでしょうか?」
どうやら、メル達に不信感を抱いている訳ではなく、メルでは出来ないと考えているのだろう。
だが、メルには……いや、メル達にはその手段があると考えていた。
「魔法は使いません、ですが、魔法を使うよりはより確実だと思います」
「なに?」
メルの言葉に耳を疑うフリッツと言う男とシュターク。
「そんな方法があるのか!? 流石オレの嫁!」
メルはちょっと疲れた表情をしながらもシュレムの方へと目を向けた。
いや、正しくは彼女が背負っている物だ。
「精霊の道具を使い、新たな街を作る土地に一種の結界……いえ、木々の壁を作るんです」
「何を言っている……そんなことが出来るはずがない」
信じられないのは当然だろう。
木々の壁とは言ったが、普通は成長するのに長い年月が必要だ。
しかし、メルはそれが出来ると信じていた。
「あれは精霊の力を覚醒させるカギです……それを使えば私の魔力と精霊力で彼女達に力を与えられます。下手に魔法で作るよりは確実です」
「何を言っている、精霊魔法ということだろう? なら魔法がましだ!」
魔法は精霊魔法よりも優れている。
だからこそ、森族が使う精霊魔法より、魔族の使う魔法の方がましだというのは誰が聞いても納得する理由だ。
ましてや魔法とは破壊の力……それで街を覆うなど誰が安心できるだろうか?
しかし、メルはだからこそドリアードに任せたいと思った。
「精霊はこの世界を支える力を持っています。だから本来の力を使えば街一つを守る壁位は作れるはずです」
彼女達、精霊は世界を維持する為に守る為に存在している……。
それなら、魔法よりも精霊の力を借りた方が守る事には特化しているのではないか? そう考えたのだ。




