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私の夢は冒険者だったのにっ!!  作者: ウニア・キサラギ
18章 成長した少女
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406話 風の精霊の帰還

 翌日、メルはそわそわとしながらアリアの帰りを待つ。

 寄り道はしないようにと告げたので恐らくは大丈夫だろう……。

 そう信じたかったが、この頃アリアは見るモノに興味を引かれがちだ。


「だ、大丈夫かな?」


 メルはそう考えると不安を感じ思わず口にしてしまった。


『心配です! きっとまたどこかで寄り道しているんじゃないでしょうか?』


 それはシレーヌも感じた事なのだろう、メルの独り言に彼女はそう答えた。

 メルは当然苦笑いを浮かべるが……。

 事実、彼女の言う通りと言う事もあり得るのだ。


「うーん……」


 だが、今は信じて待つ事しか出来ない。

 メルはそう思い、テントを出ると空を見上げた。

 そこにはレライの惨劇など嘘の様な青空が広がっており……。

 太陽のまぶしさにメルは目を細める。

 アリアがリラーグに向かった時間から考えてももうそろそろ帰ってきても良い頃ではないか?

 メルはそう考えた。

 そんな時だ――。


「きゃ!?」


 突風のような風が吹き、スカートがまくれ上がった彼女は慌ててそれを押さえる。

 周りを見ると他にも当然人が居り、彼らは気まずそうに視線を逸らした。


 み、見……!?


 メルは当然慌てるが、聞いて恥ずかしい思いもしたくはないと感じ、何も無かったように取り繕う。

 すると――。


『メル!』

「きゃあ!?」


 大声を近くで聞いて彼女は肩をびくりとさせ驚く。

 そう、先程の突風の正体は風の精霊アリアによるものだったのだ。


『伝えてきたよ!』


 メルの目の前で胸を張り、自慢げな風の精霊。

 それは可愛らしく、見ることが出来れば癒されるようだろう。

 しかし、彼女の仲間の一人である水の精霊は手を腰に当て……。


『伝えて早く帰ってきたのは良いですが! こんなに風を吹かせる理由はありませんよね!? 何かが飛んだらどうするんですか!?』


 と彼女に怒る。

 するとアリアは明後日の方へと目を向け……。


『て、手加減はしてたよ!』

『手加減も何もありません! メルが恥ずかしい思いをしたんですよ!?』


 反論をするがすぐにまた怒られてしまうのだった。


「ええと、それでリラーグは?」

 

 メルはこのままでは話が続かないと感じ切り出すとアリアは頷き……。


『街は結構ぼろぼろだったよ! だけどルーフの騎士は追い返したって! 今は魔法陣も全部壊したから安全だって言ってるよ!』


 その事にほっとしたメル……。

 しかし……。


『アリア?』


 アリアの様子がおかしいのに気が付いたのはメルではなくシレーヌだった。

 彼女はアリアの顔を覗き込むようにし……。


「ど、どうしたの?」

 

 メルも不安になり訊ねる。

 すると、アリアは迷いを見せつつゆっくりと口にした。


『騒ぎの中でシュカが子供を産んだんだって……』


 それはめでたい事だ! なんてメルには手放しで喜べなかった。

 その理由は……。


「シュカさんが!? そんな、だって今……」


 今の彼女に無事子供を産むことが出来たのだろうか?

 メルはさぁーっと血の気が引く気がした。

 するとアリアは首を横に振り。


『……子供は無事、寧ろ元気な位、シュカも産んだ後は大丈夫だった……だけど子供を守ろうとして……』


 メルはそれを聞き呆然とした。

 なぜ彼女がそんな目に遭わなければならないのか……。

 そして、残されたフォルは? バルドは?

 その事が気になる。

 だが……気になると言っても駆けつけたくとも行く手段はない。


「それで……それで、皆はどうだったの?」

『…………フォルはバルドのせいだって暴れたみたいで、今はクルムが預かってるって』

「そ、そっか……」


 フォルはまだ幼い。

 だが、賢い子であり、本当は父のせいではない事ぐらい理解しているだろう。

 しかし、母の死とは突然居なくなるとは……彼にとって、いや子供にとってどれだけ不安なのだろう?


 メルは両親がちゃんといるが、その事は理解していた。

 何故なら、母ユーリは一度血塗れで気を失い戻って来たからだ。

 死を十分に理解できるとは言い切れなかったが、それでも不安はあった。

 もし、あの時彼女が死んでいたら冷静でいられただろうか?

 いや、居られるはずはない。

 メルはそう思い……フォルの気持ちを察することが出来たのだ。


「…………」

『メル、どうするんですか? リラーグに戻りますか?』


 シレーヌの質問にメルはゆっくりと首を振る。

 戻る事は簡単とは言い難いが、それでも可能だろう。


「戻ろう!」


 心配だった、家族が……何より口は悪くとも優しい弟を支えたかったのだ。


『駄目だよ、シュカは僕たちで治すから大丈夫だってユーリが言ってた!』

「……え? 今の話シュカさんが亡くなったっていう話じゃなかったの!?」


 アリアの言葉にメルは思わず聞き返す。


『言ってないよ?』

『アリア? ちょっと紛らわしい言い方でしたよ?』


 シレーヌは笑顔をひきつらせながらそう言い、メルもまたがっくりと項垂れる。

 しかし、シュカが生きているなら話は別だ。

 母が大丈夫という伝言を残してくれた。

 その理由はきっと……メルにはやる事があるからだろう。


「なら、このままルーフに行く……多分、騎士が邪魔してくるだろうけど……それでも、私達がやらなきゃいけない事があるんだから」


 メルがそう言うとアリアは定位置である彼女の頭に乗る。

 そして――。


『うん! フィーが言ってたよもし、戻ってくるって言ったらナタリアが怒るって』


 祖母が珍しく怒ると口にしたのだろうか?

 メルは首を傾げたが、それでも頷き……。


「分ってる、ちゃんと全部終わってから戻るよ」


 と口にするのだった。

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