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私の夢は冒険者だったのにっ!!  作者: ウニア・キサラギ
18章 成長した少女
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403話 精霊の瞳

 やはりこの老人は何かを知っている。

 メルはその事を確信し、ゆっくりと歩み寄る。


「私はもう一人のエルフに皆を守るように言われています」

「なに……?」


 老人は眉をピクリと動かし、初めて話を聞くような姿勢を取る。

 メルはそれを見逃さずに言葉を続けた。


「助けるためにはエルフの道具が必要です……だから――」

「…………」


 道具と言う言葉を聞くと彼は顔を歪める。

 だが、メルはそれでも彼へと頼み込んだ。


「お願いします、知っている事を教えてください」


 ちゃんとお願いすればきっと教えてくれる。

 そう思っていた。

 だが、老人は……。


「帰ってくれ……選ばれたんだ」


 頑なに情報を教えてくれようとしない。


「お嬢ちゃんが何を言おうがワシは人を信じられん」


 先程の様に怒鳴り散らす訳でもない。

 だが、その言葉に怒りと悲しみが溢れており、メルはこれ以上は何も話せないだろうと悟った。

 事実、老人はそれ以降はもう口を閉ざしてしまったのだ。


「…………」


 ここは古く、整理もされていない。

 だが、この老人の家だろう……。

 勝手に探す訳にもいかず、メルは途方に暮れる。


「なぁ、どうするんだ? あの爺さん追い出すか?」


 シュレムはメルへと近づくとそんな事を口にしたが、メルはゆっくりと首を縦に振った。


「そんな事したら駄目だよ」


 シュレムの事だ追い出すとは調べ物が済むまでと言う意味だろうとは思ったが、メルは彼女にそう答える。

 だが、ここまで来てなんの情報も無い。

 それは事実であり、何か情報が欲しいとも考えた。

 しかし、そう簡単に情報が手に入る訳でもなく……。

 メルは深いため息をつく……。


「とにかく戻ろう?」


 メルはそう言うと転移陣へと目を向ける。

 そして、仲間達を引きつれ元の場所へと戻って行った。




 そんな彼女達を見送るのは先程の老人だ。

 彼は険しい顔をしながら魔法陣を睨む。

 そして、ため息をつくと魔法陣を壊し机の方へと向かい椅子に腰かけた。


「……仕方がない、あの人が選んだことだ」


 彼はそう呟くと突如胸を焼けるような痛みが襲った。

 何が起きたのか? 疑問を感じる彼は自身の胸へと目を向ける。


「なん……!?」


 彼が視線を上げるとそこには一人の女性が建っていた。

 彼女は驚くほど冷たい瞳を持ち……。


「貴様の仕事は何だ?」


 彼女は老人の胸に深く剣を突き立てながら問う。


「わ、ワシは……」

「あの魔法陣を通ってきた奴は殺せ、そう言ったはずだ」


 彼女はそう言うと、刃を引き抜いた。

 そして、彼を蹴り倒すと魔法陣を睨み……。


「あの子供に情でも沸いたか? 我々の受けた屈辱を忘れるなどと……なんと愚かしい」


 女性はそう言うと息が途絶えかけた老人を蹴り、その部屋を去って行くのだった。

 老人はその身体をずりずりと引きずると……たった一つの本へと手を伸ばす。

 だが……その身体にはもはや力は残されていなかった。


「い……い……あ……この国は……もう……」


 彼は何かを呟くと力尽きるのだった。









 メル達が魔法陣から出てくると光は途絶えてしまった。

 恐らく向こう側から魔法陣を壊されてしまったのだろう。


「…………なんなんだよあの爺」

「仕方ないよ、何か事情があるんだよきっと……」


 憤るシュレムにメルはそう答えた。

 レライの騎士アベル、王宮魔法使いであるリユ……二人の前では言えなかったが、恐らくその理由は間違いなく国への恨みだろう。


「とにかく、分かった事は一つあるよ」


 メルはそう言うと血に濡れた日記を取り出した。


「精霊の道具には目には見えないものがある……そして、それが私達が見つけられてないもの」


 一体なんであろうか?

 それは何となくだが予想が出来た。

 精霊から受け取り、目には見えない力……やはり精霊との対話ではないだろうか? と……。


 そして、その力は本来の姿ではなく、何かしらの影響でそうなったのでは? と彼女は考える。

 そうなると……恐らくだが、メルの近くにある力と言うのは……。


「精霊の瞳……なんだと思う」


 何故瞳が会話になったのかが分からない。

 だが、他に何か別の力を持っている訳ではないのだ。

 確かにエルフはすぐそばに力があると言ったのだから……。


「だとしたらもう全部集まってるという事か……」


 リアスの言葉にメルは頷き……。


「早速ルーフに行きたい所だけど……」


 今はそんな事を言っている場合ではない。

 レライとリラーグ、この両方の安全を確保しなくてはならないのだ。

 特にレライは大打撃を受けてしまった。

 どうにかしたい所ではあるが……彼女達に今何が出来るだろうか?


「なぁ、メル……」


 そんな時、メルへと話しかけたのはシュレムだ。


「なに?」

「レライとリラーグを助けるならルーフに責めに行っちまえば良いんじゃないか?」

「……駄目だよ、相手は国だよ!?」


 少数の冒険者でどうこうなる話ではない。

 だが、同時にそれが良い手である事も知っていた。

 しかし、最善とは言えないだろう。


「そうね、まずはレライとリラーグの連携をさせて明確な敵を双方に確認させるべきだわ」

「いや、王様やシルトさんは――」


 シュレムが反論をしようとした所をリアスは止め。


「いや、その方が良い、王様達は分かっていても民は知らない、勘違いしていたら面倒な事になる」

「うん! そうだね、まずはそうした方が良いよね」


 メルは2人の意見に従う事にしたのだった。

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