402話 転移先に居たものは
振り返ると其処に居たのは一人の老人。
彼は警戒するようにメル達を睨む。
「あ、あの……」
彼が警戒するのは当然だ。
いきなり転移してきたのだから……。
しかし、メル達もそれは一緒であり、転移したその場所に居る老人にどう答えるかを迷った。
すると老人は溜息をつき。
「誰だ?」
もう一度問う。
見たところ彼は武器等を身に着けていない。
その事にメルは警戒を解いた。
「私はメアルリースです」
とはいえ、魔法を使うかもしれない。
それは頭の片隅に置いておき、彼の質問に答える。
「ここにはレライのお城の跡にあった魔法陣から来ました」
「それで……?」
老人はそこから来たという言葉に一切驚かずに近くにあった椅子へと座り込んだ。
「その、此処にこの日記の人の情報があるって思って……」
そして、メルは血で汚れた日記を取り出す。
すると老人は一切目を向ける事無く……。
「帰りな」
「おい! ちょっと待ってくれよ! いきなり帰れは無いだろ!?」
彼の言葉にそう口にするシュレム。
だが、そんな彼女をライノはすぐに止め。
「急に押し掛けたのは謝るわ、まさか家に繋がってるとは思わなくて」
「帰りな」
「で、でも、あのお城から繋がっていたのよね? 何か些細な事でも構わないわ、教えてくれないかしら?」
ライノは途中また帰れと言われても彼に喰いかかる。
すると彼はライノを睨み……。
「聞こえなかったのか?」
とだけ口にした。
当然、シュレムは暴れ……ライノもその言葉にカチンときたのだろう。
表情を変える。
しかし、彼は大人らしく深呼吸をすると冷静さを取り戻し……。
「変えれと言われても、うちのメルちゃんが求める情報がここにあるかもしれないの、それが分かるまでは帰れないわ」
「そうだな、何故ここに繋がっていたのかも気になる」
リアスもまた頷き――アベルとリユは共に頷き合うと前へと出る。
そして……。
「レライの騎士、アベルそして――」
「王宮魔術師のリユです……どうか、協力願えませんか?」
と彼に告げると――。
「――っ!!」
彼は近くにあった食器を二人へと向け、投げる。
「な、何をするんだ!?」
「罪を隠匿し、後世の人間は忘れるどころか知りもしない……お前達の協力なんてするものか!!」
その言葉は誰が聞いても分かるほどの恨みがつまっている。
そして、彼は――。
「だからこそ、俺達はいずれ道を開くものの為にあの仕掛けを作った! 作ったんだ!!」
「仕掛け……魔法陣の事? でも……あれって定期的に開いてたんじゃないんですか? ネズミが……」
メルは怒る彼にやはり何かがあると感じ尋ねる。
すると――彼は――。
「一瞬だけなら俺の魔力でも開くさ……だが、お前達には関係ない帰ってくれ!」
「……それはレライの人と一緒に来たから? でも――」
「もし、貴方が関係者だとしたら、私達に謝る術はありません……」
リユがそう言うと男は尚、眼光を鋭くする。
しかし、リユは恐れずに言葉を続けた。
「隠匿し、更には知る事すらできなくされていた……これは事実で謝罪をしても許される事じゃないでしょう、ですが……これを知り、何も知らないふりをすることは私達にはできません……二度とこんな事が起きないよう、心に刻まなければいけないと思うんです」
「綺麗事を……」
彼はリユの言葉にそう返した。
「あの……」
このままでは話が聞けない、メルは一歩前へと出てゆっくりと口を開く。
「私の母は魔族で精霊と会話する力があります。この力に聞き覚えはありませんか?」
メルの言葉にピクリと反応した老人。
彼はゆっくりとメルの方へと向く…‥。
「今、世界は一人のエルフによって滅ぼされかけてます。まだ相手は動いてないけど、いずれ……どうしても、力が必要なんです」
メルは続けてそう言うと老人は笑い。
「そうか、ならそれで良い、あの子が選んだ未来だ」
「あの子? ちょっと待て、あの子って誰だよ!」
老人の言葉に疑問を浮かべるアベル。
しかし、老人はそれ以上何も言わない。
それどころか……。
「いつまで居るつもりだ?」
どうやらメル達が邪魔だと思っているようだ。
折角ここに訪れたのに何も得られずに帰るのか? メルはそう思ったが、首を横に振る。
そして――。
「あのエルフの関係者なんですか?」
と、問う。
「貴方はあのエルフの子孫?」
「は? メ、メル? 何を言ってるんだ? エルフは精霊だぞ?」
人間を恨む精霊。
だが、子孫が居ないとは限らない。
ましてや、エルフは最初から魔族たちにも見ることが出来る精霊。
子孫を作っていたとしてもおかしくはない。
「小娘……」
「だから世界が滅びようとあの人が考えている事だからで済ませるの?」
更に問うと彼は目を見開き――。
「そんな訳あるか! だが、他にどうしろと言う!? 選ばれてしまったんだ! 愚かな人間達が滅びる事を!!」
老人は吼えるのだった。




