399話 精霊の加護を受ける者
「エルフは各地に精霊の道具を隠した……その一つである物のお蔭であの地は豊かだ……って」
そこに書かれている言葉を口にし、メルは読み進めていく。
どうやら、憶測で書いたようではない。
何故ならナトゥーリッターだけではなく、アクアリムの事まで書かれていたからだ。
「水の剣は作物に命を与える……だが……」
「なぁ、これって……」
メルが朗読をしているとリアスはその本へと指を向け、疑問を感じた。
「炎の剣は極寒の地を人が住まう地へと変えた……」
「……なんで、此処にそんな情報が?」
あるのだろうか? それは誰にも分からなかった。
ただ、分かることはたった一つ……。
「だが、なぜ我々には何もない」
「……エルフからなにも貰えなかったのがレライって事か?」
シュレムはそう判断したのだろう。
だが、メルはゆっくりと首を横に振った。
「何故エルフと出会ったあの少女には何もない、幸せを……富を与えるのではないのか?」
メルはそこまで読み切るとゆっくりを顔を上げる。
そして――。
「何故、あの子には大して役にも立たない力を授けたのか? …………」
その文章を仲間へと伝えた。
一体何の事を指しているのか? 仲間達には分からなかった。
勿論、メルにもすぐには理解できない事だった。
だが、彼女は一つ一つ整理をしていく……。
「まず、精霊の首飾りの事が書かれてないのは外に出てないからだと思う」
次に水の剣とはアクアリムで間違いないだろう、あの地は豊かだというのはこの前手に入れたナトゥーリッターが関係しているのだろうか?
「リアスの持つナウラメギル……」
「だが、他にもう一つあるみたいだな?」
「うん……」
しかし、そこに書かれているのは物ではなく力だ。
残る氷の宝石と考えるのは違うだろう……。
なら一体なにか? エルフから授けられたモノ……それは……。
「エルフとあった人が手に入れた力……能力?」
そこまで考えて、メルはハッとする……。
「精霊との会話?」
嘗て母ユーリが望んだ力。
精霊と話す力……だが、それはあくまで実体化したものとの会話を可能とする力だ。
使い勝手が良いかと言われると疑問であり、また精霊と会話が出来るだけでその力を行使できるわけではない。
だが、間違いなく精霊エルフ本人から授かった力だ。
「もしかして、ユーリママ本人が精霊の加護を受けてる? でも、それじゃ……」
何故いきなりシルフはアリアへと変わったのか?
その時にユーリは傍に居なかったはずだ。
そこまで考えてメルは――。
「私にもユーリママの力が?」
もしかしたら、自分にもその力が受け継がれているのではないか? と考えた。
しかし……。
でも、本当に私その力があるのかな?
だって、ユーリママがエルフからもらったものを私が?
力が受け継がれる。
そんな事はあるのだろうか? まして、もしそうだったとしたらこの本に書かれている人はどうなったのか?
メルはそんな疑問を浮かべつつ書物を読み進めた。
「……なぁ、メル?」
黙り込み本を読む彼女に対し、シュレムは一冊の本を持ってきた。
「どうしたの?」
メルは本から目を離し、シュレムの方へと向く。
そして、差し出された本を取り、持っていた真っ黒な本をシュレムへと渡した。
「これ……なに?」
「いや、暇だから適当に歩いてたら、宝箱があったからな! こじ開けたらその中に入ってた」
「って、何してるんだ!?」
シュレムの報告に焦った様子のリアスはアベル達の方を見る。
だが、彼らは気にした様子もなく……。
「いや、使える物は使ってくれ」
「だ、大丈夫なのかしら?」
ライノも引きつった笑みを浮かべていたが、リユが頷いた事でほっとしたようだ。
メルも内心は気が気ではなかったが、持ってきた本へと目を通す。
「何が書いてあったの?」
「いや、良く分からない」
思わずかくんと体勢を崩してしまった一行だったが、気を取り直し、メルは本を開いた。
中を読み進めていくとそれは日記の様だった……。
「これ、さっきの本に書かれてた人の日記だ」
最初に書かれていたのはエルフにあったという事。
そして、精霊と会話をする力を得たという事だ。
だが、次第にそれは国の求める物ではなかったという言葉が出てきはじめる。
「『国の為に、私は精霊と話したかったわけじゃないのに』」
本の主は単純に精霊と会話をしたかっただけの様だ。
その為に日頃から花に話しかけていたりしたとの事が書かれていた。
そして、日記を更に読み進めると……。
「『助けて……私は何も悪くない』」
「助けてって……なんで助けを求めてるんだ? まさかひどい目に?」
リアスはその一文が気になったのだろう、繰り返す。
そして、メルはその続きを読むのだった。
「『他の道具なんて知らない、私は喋れるだけで良かった……なのに、何で私が……私達がこの国の希望だったのにって……私はそんなつもりじゃなかった、あの子を……あの子を返して……』」
殴り書かれたのだろう、乱雑な文字をメルは読み上げていく……。
「なんか段々と汚れがひどくなってきてるよ……固まってるところもあって無理剥がすと破れそう……『エルフとだって出会えるなんて思いもしなかった』もうこれ以上は汚れて――――っ!?」
そして彼女は気が付いた……。
その先から血で汚れ、本が読めなくなっている事に……。
古い本だから汚れて真っ黒になっていた訳ではなく、血で黒く汚れていたのだ。
「こ、これ……まさか、日記を書いてる途中で……!?」
メルは……その日記の主が殺されたのでは? と考える。
吐血をしたというのも考えられるがもしそうであればほかのページにも血の跡があるかもしれない。
だが、これは恐らく後ろから刺された際に出た血だろうと思ってしまったのだった。




