398話 コダルの宝物庫へ
何度見ても街の様子は酷い物だった。
焼き焦げた跡、剣の跡……そして、血の跡に死体。
このままでは病気が蔓延しそうだと誰もが思った。
「この死体も弔ってやらないとな」
アベルがそう言うとリユは頷き。
「このニ、三日大変だったからね、折角来たんだし、そうしてあげよう」
その死体は先程の話からすれば恐らくルーフの騎士だろう。
だが、死んでしまえば皆同じ、アベル達もそう思っているのだろう……。
「私達も手伝います」
彼らの言葉に賛同したメルはそう伝える。
目の前に転がる死体達に恨みがある者もレライにはいるはずだ。
だが、それでも……このままにしていいはずがない。
「メルは優しすぎるんだよ、そいつら敵だぞ?」
「分ってるだけど、かわいそうだよ。それにこのまま放置してたら本当に此処の場所は使えなくなっちゃうよ?」
殆どの死体は焼け焦げているので魔物が臭いを嫌がり近づいて来る事は無いとは思ったが、すべて焼け焦げているわけではない。
これ以上腐れば病気を撒き散らす可能性もある。
メルはその事を懸念したのだ。
「そうね、レライの人達の為にこの人達を弔うのは当然だわ」
「わ、分かったよ」
不貞腐れた態度ではあったが、シュレムはどうやら納得してくれたようだ。
メルは笑みを浮かべ「ありがとう」と伝えると、再びアベル達の案内の元その宝物庫へと向かった。
「それで、その宝物庫は一体なんなんだ?」
歩く途中、リアスはアベル達に問う。
すると彼は前を見ながら話し始めてくれた。
「前王宮魔術師ゼアルさんの話ではコダルという男はマジックアイテムに執着していた」
「それも呪いに関する物が多かったみたいだよ」
アベルの説明にリユは言葉を付け足す。
それはメルも頷き――。
「それで、ユーリママがその呪いを浄化した……んだよね?」
二人はメルの言葉を肯定するように首を縦に振った。
「だが、何も呪いの道具だけに執着していた訳じゃない」
「アーティファクト……古代のマジックアイテムにも興味があったみたいなの、そして……君達もアーティファクトを集めてるんだよね?」
メル達の持つ武器はエルフと精霊の加護がある武器だ。
作られたのは昔、アーティファクトであることは間違いないだろう。
「うん……でも、残る一つが見つからないの」
それは先程思い浮かべた疑問だ。
近くにあるアーティファクトは一体どこにあるのだろうか?
「アーティファクトに関する書物も集めていたそうだ、それも一緒にしまってある……恐らく力になるというのはその事だ」
アベルはそう言うと城のあった場所で立ち止まる。
そして、瓦礫をどかしていき、一つの扉を見つけた。
その先には宝物庫へと続く地下室があるのだろう……。
「ここだ……」
彼はそう言ったのだった。
扉を開け、その先にある階段を進んでいくメル達。
奥にはもう一つ厳重そうな扉があった。
流石にアダマンタイトではなかったが、これも何か魔法が掛けられているのだろう……。
「じゃぁ開けるね?」
リユが前へと出るとなにやら扉の前で指を動かしている。
するとそれをなぞるように光が現れ……。
やがてガチャリという錠が開く音がした。
「え? え?」
見た事も無い魔法にメルは思わず困惑する。
すると彼女はにっこりと笑みを浮かべた。
「レライの王宮魔術師に伝わる鍵の魔法。私達はまずこの魔法を覚える事が仕事なんだ」
そう言うと扉を開けた彼女は……。
「我が行く道を照らせ、ルクス」
灯を魔法で灯し、中を照らす。
その中には様々な宝があった。
装飾が派手な武器、大きな宝石が付いた首飾り。
煌びやかなドレス。
どれも宝と言って申し分ない物だ。
それが目的ではないと言ってもメル達は思わず目が奪われてしまった。
「うわぁ……」
「まぁ、どれか気に入ったのがあったら持って行って良いと思うぜ」
感心する彼女達にアベルはそう口にした。
「本当か!?」
シュレムはその言葉に食いつくのだが、すぐにライノが彼女の肩へと手を置き。
「いや、やめなさい? 確かに凄いお宝だけど、中には彼女たちも知らない呪いの道具もあるかもしれないわ」
「っと、そうだった……」
呪いはどんな条件で発動するのか分からない物もある。
だからこそ、扱いには気を付けなければならないのだ。
そして、此処にはそんな呪いの道具もあるだろう……シュレムはをその事を察し、首を横に振った。
「いや、ぜんっぜん欲しくないからな!? 金とか、金とか……」
「あはは……それで本棚はそっちだよ」
彼女の素直な様子にリユは思わず笑みをこぼしつつ、本棚を指す。
メル達はそこにある本へと目を通した。
「どれも古いね、これなんて背表紙が無くなってる」
何の本なのだろうか? メルは気になり手に取るとパラパラと中を確認する。
「……レライの歴史?」
そこに書かれていたのはレライと言う国の成り立ちだ。
そう、この地に来る前からの歴史の様だ。
「本当に頼りになる物があるか、探すしかないな」
そんな中、リアスは辺りを見回してみる。
だが、特別必要そうだと言うものはない……。
「うーん? ……ん?」
そして、メルは本を眺め続け、ある一文に気が付いた。
「精霊の加護……かの地が豊かな理由?」
それは恐らくナトゥーリッターの事を指すのだろう。
だが、そこにはどうにかして支援を受けれないか? と言う事しか書かれていなかった。
問題はその後の文だ……。
「エルフの残したもの……」
事細かに書かれているそれは――紛れもなくメル達の持つ精霊の武器、その一部だった。




