396話 エルフの爪痕
リアス達の案内で王の元へと向かうメル。
大きなテントの中へと入った彼女は呆然とした。
王と言えど、城での暮らしとは全く違うものになっていた。
テントの中には質素な物だけがあり、恐らくは他のテントと変わらない。
もしくは机や椅子があるだけマシと言った所だろうか?
メルは他のテントを見ていないので何とも言えないが、予想の範囲内ではそう考えた。
「おお、戻ったか」
王はメルを見るとほっとしたような表情を浮かべる。
「は、はい……」
遅れてしまった事が申し訳ない。
謝っても謝り切れないとメルは落ち込んだ。
だが、王はそうは考えていないのだろう。
嬉しそうな表情を浮かべた。
「それで、あちらの王シルトは何を言っていた?」
「……こちらとは戦争をするつもりはないです、でも……」
メルは言葉を詰まらせる。
レライの兵士を知る物なら彼らが襲って来た。
そう思う者がリラーグの中に居てもおかしくはない。
何故なら彼らはレライの人の格好をしていたからだ。
しかし、それはもう大丈夫だろう。
レライの者でない事はシルトが説明してくれるはずだ。
「でも、どうした?」
「レライ兵の格好をした人達がリラーグに責めてきました」
そう言うとシュレムは表情を変え――。
「お、おい! それじゃ皆は!?」
「大丈夫……きっと大丈夫」
戦いを最後まで見た訳じゃない。
だが、メルは大丈夫だと口にした。
きっと冒険者の皆なら何とかしてくれる。
そんな自信があったからだ。
「そうか、では民の不安や不信感は増えているな」
例えレライの兵と分からなくても彼らがレライの者と叫べばそう信じる者は居てもおかしくない。
メルもその事には頷き……。
「でも、それも時期に解消されると思います。それよりも……」
レライの現状の方が問題だ。
メルはそう思い、言葉を続けた。
「エスイルとルーフの騎士のせいだって聞きました、その……」
本当ですか? そう聞きたかったが、声が出なかった。
「……エルフと名乗る少年とルーフの騎士、双方の戦いの爪痕があれだ」
王はそう言うとリアス達に目を向け――。
「彼らが逃げるよう、誘導してくれたおかげで我々は生き残った。だが……多くの民や兵が犠牲となってしまった」
「…………」
それを聞き、メルは落ち込んだ。
人が犠牲になっている……更にはもしかしたらもうエスイルは助からないのでは? と不安になったのだ。
「なぁ……」
そんな中、少女は前に出て眉をひそめた。
「本当にあれはただ暴れただけなのかよ!?」
暴れたとはエスイルの事だろうか?
メルは疑問に思うと彼女はメルの方へと目を向けた。
その瞳は優しく……。
「オレは思うんだ! あれはエスイルがオレ達を逃がそうとしてくれたんだってな!!」
そう主張するシュレム。
対しリアスもまた頷いた。
「そう信じたい、いや……そう言っても良いと思う」
意見が一致した事に驚いたのはシュレムだけではない。
ライノやそこに居た者達はお時の表情を浮かべた。
「何を言ってるの!? アタシ達はエスイルちゃんに魔法を撃たれたりしたのよ?」
「そう、なの?」
メルの言葉に頷くライノ。
しかし――。
「なら! なんでオレ達は生きてるんだ!!」
「ライノ、今回はシュレムの意見が正しい……例えエスイルを知らなくとも相手は子供だ……ルーフもレライも油断をしていた。なのにこっち側の被害は少ないんだ」
周りを見ると、確かに怪我人は多いです。
ですが、当然そこに死体が転がっているという訳もなく……二人の言葉がメルを安心させるための嘘じゃないか? と考えた。
「俺達もそう思うな」
「え……?」
そんな時、シュレム達に加勢する声が上がる。
メルが声の方へと視線を向けると……そこに居たのは長い髪を後ろで一つにまとめた男性と綺麗な女性。
「アベルさん、それに……リユ? さん」
「そうリユであってるよ」
女性は微笑むと王へと目を向ける。
「今回の被害を調べました、兵の殆どは怪我をし動けません、ですが……死者は普通に戦をするより遥かに少ないでしょう」
「エルフに操られてるって少年が本気を出せば全滅ってのはあり得るというのが俺達の意見です……実際怪我をしてない兵を探す方が難しい」
「そうか……」
レライの王シュタークはそう言うとメルへと目を向け……。
「だそうだ、何らかで我々の危機を知った彼が、エルフの力に抗い必死の思いで助けてくれたのだろう……」
王はそう言うと、立ち上がり……その場にいるものへと宣言をする。
「勇敢な少年は今! 苦しんでいる……それを助けるべく動く少女達の手助けをしたい、だが、民の暮らしを安定させるのが私の仕事だ……アベル、リユ、レライのあの場へとこの者達を案内をしてくれないか?」
「あの場って……もしかして、シュターク王!?」
「そりゃぁいい! あそこならこの子達の役に立つ者も気っとある!」
驚くリユ、そして笑うアベル……一体あの場とは何なのだろうか?




