394話 ルーフの騎士
町中に現れたルーフの騎士。
本当であれば街の中では戦いたくない。
メルはそう考えていた。
しかし、このまま外へと連れて行く事が出来ないのだ。
なら、この場で戦うしかない。
メルは剣を構えながらも次はどうするかを考える。
魔法で意表を突く事は出来た。
しかし、次はないだろう……かといって精霊の力を解放することはできない。
この場で解放してしまえば何が起きるか分からないからだ。
どうしよう……でも、誰かが来るまで……。
メルは守らなければと焦っていたからこそ、気が付かなかったのだろう。
「人の街に無許可で攻めに来るなんて頭がおかしいんじゃないか?」
そう言ってメルの傍に立つのは黒髪の男性だ。
彼は面倒そうな態度を取ると拳を握る。
「バ、バルドさん?」
「ったく、テメェ一人で突っ走るな」
彼は振り返らずにそう言うと騎士を睨んだ。
そう、メルが居る場所、そこは龍に抱かれる太陽の前だ。
当然、彼女の知る冒険者達が沢山いた。
騒ぎを聞き、次々と店の中から飛び出してくる冒険者。
「こ、こいつら……冒険者!?」
冒険者の数が予想より多かったのだろう、騎士達は当然狼狽え始めた。
「ここが何の街って呼ばれてるか知らないのか?」
バルドは狼狽える騎士達に問う。
だが、騎士達は答えなかった。
いや、知ってはいるのだろう……それでも予想外だったに違いない。
「ここは冒険者の街だよ、だから……これぐらいいてもおかしくはない!」
メルは彼らの代わりに答えると、剣を握る手に力を籠める。
だが、同時に不安もあった。
ここが襲われている……と言う事はレライはどうだろうか?
無事なのだろうか?
メルはそんな不安を抱えながらも騎士に挑もうとした。
すると――。
「――待て、突っ走るな」
「ひゃい!?」
尻尾を掴まれたメルは素っ頓狂な声を出し、涙目でバルドの方へと目を向けた。
すると彼は――。
「ナタリアの所に行け、此処は十分だ」
「で、でも……」
ここで自分も戦う! そう言おうとした時、バルドは苛立ちを見せた。
「テメェにはやる事が行く所があるんだろ!!」
一括されたメルは身を縮こませるが、すぐにその言葉の意味を理解し……。
「あ、ありがとう! バルドさん!!」
剣を収めるとすぐに流に抱かれる太陽の中へと入り込んだ。
すると……。
「メル! 無茶をするな!!」
今一回に降りてきたばかりのナタリアにメルは注意をされる。
だが、そんな彼女へと近づいたメルは――。
「ナタリアお願い! 転移魔法で私をレライに連れて行って!!」
「な、何を言っている!?」
メルの願いに驚きの声をあげたナタリア。
当然だ。
メルは転移門を潜った先、光の回廊で襲われた。
今回も恐らくは転移門からの襲撃だろう……つまり、転移門には敵が潜んでいる可能性がある。
ナタリアは当然としてメルもそれを知ららない訳がないのだ。
「レライも危ないの! あっちにはリアス達も居る、だけど……お願いナタリア! 転移門を使って!」
だが、メルはそれでも転移門を使ってくれと告げた。
それはただ仲間達を助けたい、そう言った純粋な思いだった。
「しかしだな……」
「もう飛龍船じゃ間に合わない! でも転移門なら……それに、あっちだってリラーグの兵士の格好をした人たちが攻め入ってるかもしれないんだよ!?」
そう、リラーグにレライの兵士を偽り来た以上、レライは何もないという事は可能性として低いだろう。
ナタリアはメルへとそう指摘されると唸り声をあげる。
可愛い孫娘を危険な事に合わせるのだけは避けたいと考えたのだろう。
だが、メルの言う通りもう飛龍船では役に立たない。
例え、デゼルトの背に乗って急いで飛んだとしても、転移門に勝る速さでつくなど到底不可能だろう。
「……危険だぞ?」
「分ってる……」
念を押すナタリアに対し、即答をするメル。
もうこうなったら止められない、それはナタリアも知る事だ。
彼女は大きなため息をつくと……。
「ゼファー! ここは任せた、私はメルを先に送ってくる」
やり取りの一部始終を聞いていた店主ゼファーにそう言うとナタリアは階段の方へと目を向けた。
「い、良いのかい!? 危険なんだろう!?」
当然ゼファーは驚くのだが、彼女はそのまま呟くのだった。
「こうなったらもう、無駄だ……最悪閉じた門を勝手に使おうとするだけだ」
メルは流石にそこまではしないよっと思ったのだが、黙って置いた。
するとナタリアはもう一度ため息をつき……。
「書きかけの門がある、地下に行くぞ」
「うん!」
メルは先を歩き始めたナタリアについて行くのだった。
目的地はレライ……。
仲間達が無事でいてくれることを願いながら彼女は地下室へと辿り着く……。
するとナタリアは地面へと描かれている魔法陣に手を加えていく……。
そして――。
「我望む、目的の地へと続く道を……繋がれし地への扉へと我らを送り賜へ……ヴェークポールト」
場所と場所を繋ぐ魔法を唱えるのだった……。




