393話 強襲
「それでさ! 母さんを放って旅まで出てさ!!」
フォルの怒りは収まらず。
メルはただただ彼の話を聞いていた。
だが、フォルの言う様にバルドが何も考えていない訳が無い。
ましてや、その息子であるフォルがそれを知らないはずがないのだ。
メルはそう思い、彼へと尋ねる。
「でも、本当は知ってるんでしょ?」
その質問に少年は黙り込んだ。
それはもう答えと言って良いだろう……。
「………………」
「バルドさんは2人を心配してるよ? だから、どうにかしたい。そう思ってる……その方法を探しに言った事ぐらい、フォルには分かるよね?」
メルの目の前で怒っていた少年は頭が良い。
それ位は理解できているはずだ。
だが、感情がそれを邪魔しているのだろう……。
「分からないよ!」
そう怒鳴り声をあげた。
「ほら、外行こう? ここで騒いだらシュカさんの体に障るよ?」
とメルが諭すと彼は再び黙り、立ち上がる。
メルはそんな弟を見て――。
やっぱり、エスイルの方が素直でかわいいよ……。
と思うのだが、放って置く事なんかは出来ない。
だからこそ、メルは少年の手を引き、一緒に部屋の外へと出た。
そして……。
これからどうしよう? シアさんの部屋……は、なんか気まずいしやっぱり私達の部屋かな?
でもそこで何を……。
そんな事をぼんやりと考えていた時だ。
「なんか、外が騒がしい?」
メルは窓から外へと目を向ける。
街の住人は慌てており、一体なにが起きたのか? メルは疑問を浮かべた。
だが、その疑問はすぐに晴れる事になる……。
「レライの兵士だ!!」
フォルが指を向けている方へとメルも目を向ける。
そこにはリラーグの住人を襲うレライの兵士が居た。
「嘘……」
メルは目を疑ったが、すぐにそれがあり得ないという事に気が付いた。
これは罠だと……。
「――っ!! フォル!!」
そして、早々に対処が必要だとメルはフォルへと頼むことにした。
「ナタリアに伝えて! 転移陣を確認してって!」
そして、窓を開けた彼女は足をかける。
「メルはどうするんだよ!?」
「私は……皆を助けてくる!!」
アクアリムを構え、窓から外へと飛び出た彼女は魔力を籠め、レライの兵士の格好をしたルーフの騎士達の前へと水の刃を解き放つ。
「な、なんだ!?」
騎士には当たる事が無かったが、それでも足を止める事は出来た。
彼女は大地へと着地すると剣を構え――。
「子供? おいおい、子供がいるぞ!」
メルを見ても子供という反応しか見せない彼ら。
それを聞き――。
「皆は?」
メルはリアス達の事を聞くが、彼らは何の事かは分からないのだろう。
「皆だと……? 何を言っているんだ?」
ケラケラと笑う彼らをメルは観察をする。
彼らが騎士だとすれば、こんな卑怯者の真似をしてもその誇りは少しはあるはずだと……そして、見つけたのだ。
「…………あった」
ルーフの騎士を現す紋章を……。
「やっぱり、ルーフの騎士!」
メルがそう言うと彼らはメルへ敵意をむき出しにした。
「ルーフ? 貴様! 我らは――」
そして兵士の一人がそう言うと隣に居た兵士が彼の口を塞いだ。
「馬鹿が! 我々は任務中だ」
そのやり取りだけでも彼らは愚かだと思えるだろう。
そして、もう遅いのだ。
「アリア! お願いフィーナママに皆にも知らせて! レライの兵士の格好をしたルーフの騎士が攻めて来てるって!」
風の精霊へと頼んだメルは剣を構え――。
「ここは私は通さないからっ!」
そう言ってその場にとどまる事を決意した。
だが、大勢の兵士相手にメルはたった一人……不利だと思われる状況だ。
騎士達は笑い。
「小娘一人で何が出来る!!」
と言うものも居た。
だが……メルは決して一人ではない。
そして、それはメル自身も知っていた事だ。
「誰が一人だって言ったの? 行くよシレーヌ!!」
水の精霊へと声をかけた少女は息を大きく吸い……。
「水の精霊よ、我願うは大いなる海の裁き、我が前に立ちはだかるじゃなる者達へ水の恐怖を与えん……」
詠唱を唱え始める。
それは嘗てシレーヌの力を引き出した精霊魔法だ。
だが、その詠唱はあまりにも長く……隙だらけに見えた。
「馬鹿か!! あの小娘を狙え!!」
当然騎士達は身動きが出来ないメルへと襲い掛かる。
だが……それこそが、メルの狙いだ。
にやりと笑った少女は――右手を剣から放すと前へと突き出した。
「我が意に従い意思を持て!! マテリアルショット!!」
そして、魔法を唱えたのだった。
「――なにっ!?」
本来森族では扱えないはずの魔法。
それを使ったメル……当然騎士達は驚くのだが……。
「って、流石に無理だよね……」
数人は魔法にあたってはくれた物の全員へと命中させることは出来なかった。
メルは表情を引き締めると再びアクアリムへと右手を添えたのだった。




