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私の夢は冒険者だったのにっ!!  作者: ウニア・キサラギ
18章 成長した少女
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391話 成長した少女

 勝ち誇ったかのような表情を浮かべるボルア。

 彼に対し、メルは嫌悪感を覚えた。

 当然だ……こんな時までそんな事を考えなければならないのか?

 彼のその心の汚さが見えたからだ。


「あの……」


 だからこそ、メルは一歩前へと出た。

 するとボルアは彼女の方へと向き、その表情を歪める。


「なんだ? 何か言いたい事でもあるのか?」

「はい! 今は誰のせいとかそんな事よりも転移門とレライとの連絡をどうするかの方が問題ではないですか?」


 はっきりと口にするとボルアは後ろへと一歩下がる。

 メルの言っている事に何も間違いが無かったからだ。

 彼は唸り声をあげると主人であるシルトへと目を向けた。

 すると彼は頷き……。


「そうだね、メルちゃんの言う通りだ……ナタリア、君以外に魔法陣を壊すことはできるのかい?」

「ああ、流石に罠までは再現できないだろう……大丈夫だ」


 シルトは彼女の言葉を聞くとすぐにボルアの方へと目を向けた。


「馬を走らせ、各地の転移門へ! 壊し方はナタリアから学べ!」

「は、はい! 畏まりました!」


 ボルアは姿勢をキレイに正すとそう伝えた。

 そして、メル達の方へと目を向けたシルトは……。


「メルちゃん、君はすぐに書簡をレライ王へ緊急時だ勿論、飛龍船を使って構わない」

「うん!」


 彼の言葉に頷いたメルだったが、自分だけ名前を呼ばれた事を疑問に思った。

 だが、それもすぐに理由が分かる。


「ユーリさん達は街に残って有事に備えて欲しい、此処にも転移門はあるし万が一直された時内部から責められては……」

「分ってる、元々ドラゴン退治の件もあるし、此処からは動けないよ」


 ユーリはそう言うとメルへと近づき頭を撫でた。

 優しい手つきを懐かしく感じながら目を細めたメル。

 彼女は嬉しいのだろう、その尻尾は揺れていた。


「メル……レライとリラーグを頼んだよ」

「うん……」


 そう言われなくてもメルはやるつもりだった。

 向こうには仲間が居るのだ。

 それだけではない……あそこに住む人たちが戦争に巻き込まれて良いはずが無いと考えた。

 いや、レライだけではない。

 リラーグもタリムもリシェスも……たった一回戦争が起きてしまえば何かが壊れてしまうだろう。

 幼いながらもメルはそう考えたのだ。

 だが、リラーグの王は愚かではなかった。

 そこに安堵を覚えた彼女は――頭を下げる。


「シルトさん、ありがとうございます」

「いや、こっちこそ知らせてくれて助かった」


 彼は例え王になってもその姿勢は変わらなかった。

 メルへと礼を告げ……。


「だが、今日はもう遅い。急いでは欲しいが何かあった時の為、万全にしておいてくれ……食事は……ここゼファーさんが作った方がおいしいか」


 そう笑みを浮かべた。

 確かにシルトの食べている物は少し豪華だ。

 だが、その味であればゼファーやシア……また屋台の肉巻きの方がメルとしては好みだった。

 それを考えると……そう言えばあの肉巻きを食べていないとメルは思い出し……。


「あの……私食べたい物が……」

「駄目!」


 メルがおずおずと言うとそう答えたのはフィーナだ。

 びくりと身体を震わせ耳と尻尾を垂らした彼女は母の方へと向く。


「アレは美味しいし、野菜を取れるのも分かるよ? でも、ちゃんと座ってご飯食べよ?」


 彼女は家族の時間を取りたいのだろう。

 その声は優しいものだった。


「じゃ、じゃぁ……家に来てもらって作ってもらうとか……」


 メルもそれは理解していたが、食べたいと思ったらやはり我慢と言うものが出来ない。

 だからこその提案だったのだが……。


「メル?」


 フィーナは腰に手を当て怒っているようだ。

 何故そこまで怒るのか? メルは気になったが……その理由は母ユーリが教えてくれた。


「フィー張り切ってたんだ……メルが帰って来たからって……今日は我慢してくれるかな?」


 こっそりと耳打ちをされ、メルは垂れていた尻尾と耳を発たせると嬉しそうに表情を変える。

 そして……。


「分かった、我慢する」


 と告げるとフィーナもまた笑みを浮かべた。






 酒場へと戻り、メル達は自分達の食堂へと向かう。

 この屋敷は一階が酒場になっているが別にもう一つメル達専用の食堂もあるのだ。

 そこに運び込まれてきた料理は懐かしいものだった。


「これ、フィーナママじゃないよね?」


 そう言うとフィーナは頷いた。


「勿論私も作ってるよー?」


 相変わらず不格好なガレットへと指を向けた母。

 見た目こそは悪いが、味は良いというお菓子だ。

 それは母が作っているのは分かっていた。

 だが、目の前に出てきた料理はメルが奴隷商に掴まったあの日に出てきた物だったのだ。


 嫌いな野菜が入った料理……いや、嫌いな味付けと言った方が良いだろう。

 だが、それをメルは口に頬張る。

 口に広がる野菜の味と砂糖の甘味がやはり、嫌だった。

 だが、メルはそれでも口にした。

 まずは嫌いな物を平らげると好物である肉へとナイフを入れる。

 小さく切ってからフォークで口へと運ぶと……。


「メル、それ食べれるようになったの?」

「ううん、やっぱり嫌いこれ、変に甘いから」


 メルはそう言いつつ、それでも……食事を続けたのだった。

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