390話 シルトへ報告
急ぎシルトの所へと向かうメル達。
門兵へと急用だという事を告げると彼女達は屋敷へと迎え入れられた。
その足ですぐにシルトが居るという部屋へと向かうのだが……。
「シルトさん!」
メルは扉を勢い良く開け、彼の兵に警戒される。
彼はどうやら食事を取っていたらしい。
驚いた顔でメル達を見つめていた。
すると……。
「なんですか? 騒々しい……夜中だというのに……なんて迷惑な」
「すまないなボルア殿急用だ……」
嫌味な言葉を発したのは王宮魔術師であるボルアだ。
そんな彼に対し、ナタリアはすぐに言葉を返すとシルトの元へと近づいた。
「急用? 食事の時に飛び込んでくるぐらいと言う事は……それだけ重要と言う事ですか? いやいや、まさか……」
「ボルア……」
ボルアがメル達を睨むとシルトは彼の名を呼ぶ。
振り返った彼に対し首を横に振った。
すると、ボルアは黙り込み……一歩後ろへと下がった。
「それで、どんな要件だい?」
彼はメルが自分に用件があると気が付いたのだろう、彼女の方へと目を向け言葉を待つ。
「実は……」
メルは母達に伝えた事を彼にも伝える。
話を聞いて行くにつれその表情を変えて行ったのはシルトだけではなかった。
「まて! それは本当か!?」
前へと出てそう叫んだのはボルアだ。
「は、はい……」
いつもと様子が違う様子の彼にメルは少し引いてしまったが頷いて答えた。
「シルト様、本当にそうだとしたら一大事です! フォーレは友好国……それも大国です」
「分っているよ、食料などの糧ならこちらの方が上だ……戦争をするなら負けはしないだろう、だけど……被害免れないそれも少なくはないだろう」
彼らはそう話すと再びメル達へと目を向ける。
「もし本当だとしたら、すぐにレライ国王シュタークと連絡をしなくては」
「はい、その為に此処に来たんです……でも……」
メルはまだ話していなかった事を伝える為にその口を開く……。
「実は……転移魔法で問題があって」
ナタリアの方へと目を向けるメル。
すると彼女は前に出てその続きを口にした。
「私の転移門に細工が出来るらしい。門を閉じたり中に入ったりとな……」
「なんだって!? それじゃ……この頃起きていた魔物の問題は……」
ナタリアは頷き、メルの方へと向く。
「メルは光の回廊で襲われたらしい」
「私がリラーグに戻る事を警戒してたみたいです、それに多分彼らは転移門を使って移動をしてます……」
メルはそう言うとその場にいる者達は黙り込んでしまった。
「転移門で襲われたというのならそれもあるかもしれない……」
シルトはようやく口を開き、黙り込む。
するとボルアがナタリアへと目を向けた。
「おい! どうにかならんのか?」
「……今考えている、転移門を他に干渉されん方法を……だが……あれは……」
ナタリアは言いにくそうにしていた。
メルは何かあるのだろうか? と首を傾げたのだが……。
「転移の魔法は元々様々な場所に繋ぐようにできている、そうしなければならない理由があるんだ」
「その所為で今、迷惑しているのだが?」
ボルアの指摘は最もだったのだろう、ナタリアは頷き……。
メルはどうしてそうなのかを考えた。
そして、気が付いたのだ……。
「そうか、だから私はタリムに!」
「タリム? タリムがどうかしたの?」
ユーリの言葉にメルは頷いた。
「私はリラーグに来るつもりだった、だけど出てきたのはタリム。それってこっちの門が使えなくなってたからじゃないかな?」
「それもおかしいんだ……」
ユーリはメルの方へと向きそんな事を言った。
当然何の事か分からないメルは首を傾げるのだが……。
「シルトの命でまずタリムの転移陣を壊しに行った、あそこに出てくる事は無いはずなんだ……」
「……え? でも私……」
嘘は言ってないよ? とメルは口にしそうになったが、そんな事は母達が知っている事だ。
別に言う必要はない時が付き……。
「誰かが直したって事?」
メルは改めて質問をする。
するとナタリアは考え込み……。
「ありえないよ! あれはナタリアのオリジナル……そう簡単にまねできる魔法じゃないし」
「いや、正確に言うとあの魔法は私だけの魔法ではない」
ナタリアの言葉にメル以外は驚いた。
当然だ今までずっと彼女だけの魔法だと思われていたのだから……。
「ナ、ナタリー? どういう事なの?」
「考えても見ろ、あれは元々フィーを助けるための魔法だ。だが、あの時の私は――」
呪いにかかっていた。
メルはその当時の事を知らないが、彼女は太陽の下に出ると死ぬ呪いにかけられていた。
だからこそ、わざわざ危険を冒して無駄な事をするはずがないのだ。
「だからこそ、転移魔法を作ったんでしょ?」
「ユーリ……君は優秀だが、そう言った所はまだまだだな。確かにそう思ったがフィーが死ぬまで時間が無かったそんな状況ですぐに転移を思いつくか?」
今までなかった瞬時に移動をするという魔法。
確かに思いつくには簡単ではないだろう……。
「とういう事は協力者がいたのか?」
「詳しくは言えんがな……まぁ、似たような者だ……だが……彼女が加担する事は無い」
そう言い切ったナタリアに怪訝な表情を浮かべるのはボルアだ。
「何故そう言い切れる?」
「彼女はもうこの世界に居ない、そして戻って来る事も無い……」
そう言った彼女に対し、納得いかない様子のボルア。
だが、メルは祖母の言う事は嘘ではないと信じた。
「それで、考えられるとしたら、その人の影響で転移魔法が他にも伝わってる?」
「いや、それも無いだろう……彼女は私と出会ってから一緒に行動していた……だからこそ、もし直したと新たに手に入れたというのならば転移は別人が私の魔法を元にしたと考えても良い」
彼女はそう言うと黙り込み……。
「つまり、貴女のせいと言う事ですね、ナタリア……」
ボルアの言葉に唇をかむのだった。




