389話 合流……そして、シルトの元へ
ユーリとフィーナの所へと向かうメル達。
彼女達はまだ昼間に居た部屋にいるらしい。
中に入ると二人はメル達へと目を向けてくる。
「メル、ナタリーお帰り!」
フィーナは笑みを浮かべてメル達を迎えてくれた。
だが、メル達はそれどころでは無い。
「二人共、メルの話は聞いたか?」
ナタリアの言葉を聞くと彼女達は目を合わせ頷く……。
「なら話は早い……シルトの所に行くついて来てほしい」
「うん、行きたいんだけど……」
ナタリアの言う事に頷いたユーリだったが、すぐにその瞳は下に落とされた。
そこにあるのは大量の書類。
依頼や他にもいろいろあるのだろう。
「そんな事よりも世界の方が大事に決まっているだろう!?」
だが、ナタリアはユーリにそう一括すると彼女はびくりと身体を震わせながらも立ち上がり。
「え? ええ!? せ、世界!? ……そ、そうだよね」
と口にする。
「こっちも大事な気がするけど……? でも、世界って何があったの?」
フィーナは笑みを引きつらせていたが、確かに世界の方が大事だという事は分かっている。
だからこそ何も言わないのだろう。
だが、仕事は仕事だ。
誰かがやらなくてはならない……それはナタリアも十分承知している事だった。
「バルドにでも任せて置け、それに話だけだすぐに戻ってくる」
そう言ってほぼ強引にユーリ達を連れ出すナタリアを見て、メルは……。
「い、良いのかな?」
と疑問を浮かべた。
だが、すぐにナタリア達を追いかけシルトの元へと向かうのだった。
自分たちの戦いとはいえ、世界の危機に関わる事だ。
それを優先してくれたことに感謝しつつ……メルは心強い背を見つめた。
嘗て世界を救った母達。
彼女達はこうやって前を進んだのだろうか?
メルはそう思い浮かべながら……母達が旅立った当時の事を思い出す。
その時は不安で怖くて……もう戻ってこないのではないか? と疑ったものだ。
だが、今は違う。
彼女達が居れば大丈夫だと思えた。
しかし、今世界の危機の中心に居るのは自分だ。
メルは初めてリラーグから旅立った日を思い出す。
あの時はこんな事になるとは思わなかった。
だが、今は違う……。
「お願い、ママ……皆も待ってるの!」
「……分かってるよ?」
フィーナは複雑そうに表情を歪める。
「リラーグとレライが戦争を起こすかもしれんのだぞ? 何を迷ってるフィー?」
「……うん、それは止めないといけないって分ってるよ?」
彼女は頷くと……ゆっくり口を動かした。
「メルは精霊を生み出す儀式ってどういうのか知らないよね?」
メルは彼女の言葉に頷いた。
具体的には分からなかったからだ。
「私もね、クルムさんに聞いても分からないって言われたの……」
彼女はそう言うと一冊のボロボロの本をメルへと手渡して来た。
「これは?」
「前の依頼で偶々見つけた本なんだけど……これに書かれている事見て?」
メルは言われるがまま本を手に取りパラパラとめくっていく。
ナタリアやユーリも本を覗き込んできた。
「……どういうことだ?」
「そこに書かれている事が本当なら……ルーフにあるエルフを否定する国も仕方がないのかもしれないよ?」
「だ、だって……これ……」
メルは何故それが残っているのかが疑問だった。
そう、メルがエルフから聞いた話だ。
それは……エルフが何度か世界を壊して再生している事実、その事は聞いている。
「……でも、これって」
もう一人のエルフは元々人間だ。
そして、そのエルフが言っていた通り何人かは助かるのだろう。
その助かった者達の記録……それがその本なのだろう。
「……これって……」
メルが食い入るように読むその本に描かれていた事実は驚くものだった。
生き残った者達は当然厳しい世界に取り残される。
仲間も居らず、今まで築き上げてきた物も失い。
小さな集落で必死に暮らして来た。
そして、エルフを恨み、憎み……そして、それを忘れないためにエルフの討伐を決めた。
「……」
そして、秘かに力をつけ次の選別の時も生き残れるよう、過ごして来たのだ。
「彼らの腕には皆、鱗がある……か……爬虫類かなんかから進化した結果だろうな古来の人間と言う訳か」
「古来の人間? でも、そんなのおかしいよ! だって……なんで今まで」
そんな人たちが見つからなかったのか?
ユーリはその疑問を思い浮かべたのだろう。
そして、ナタリアはそれに対して答えた。
「ルーフに引きこもっていたのだろう、エルフに忠実に、そしてずっと機会をうかがっていた」
「それが、今? なんで……?」
ユーリは当然の疑問を思い浮かべた。
だが、メルには心当たりがあったのだ……。
「今回はエルフの意見が割れてる……ユーリママ達と出会ったから……それもあって選別に選ばれない?」
「だろうな、ユーリは精霊を助けた。例えエルフが世界を壊そうとしてもその家族である私達もまた生き残れる可能性がある……」
「だから、その……ルーフの人達が悪いって思えないよ?」
フィーナの言う事にメル達は黙り込む。
だが、それでも……。
「戦争は起こせないよ! それにもう一人のエルフは私達のこの世界を残したいって言ってくれたんだよ! だから、私はそれに賭けたい!」
戦争を起こしてしまえば、多くの人や精霊、動物が被害にあう。
そうなってしまえば、折角メル達を救おうとしてくれているエルフの考えも変わってしまうかもしれない。
メルはそう思い自身の言葉で伝えた。
「行こう! シルトさんの所に私は……私は……英雄でもない、ママ達とは違う、だけど……自分で出来る事はしておきたいの!」
その決意はその場にいた者達の首を縦に振らせる力があった。




