387話 エルフの騎士
エルフの騎士……そう呼ばれたメル。
確かに、エルフに言われこの世界を存命させるために動いている。
エルフの意志に従っていると言われればその通りだ。
だが、そうは言ってもメルはメルの意志で皆を助けるためにそれを選んだのだ。
「関係ない、私は私の目的の為に戦ってるの……貴方達にナタリアは連れて行かせない!!」
そう言った彼女は騎士を睨む。
すると騎士は意外そうな顔を浮かべた。
「ほう……なるほどな、こんな子供でも丸め込めるほどの力を持っている、ということか……」
そう、騎士が言うとその言葉に笑い始めたのはナタリアだ。
彼女はひとしきり笑うと騎士に告げる。
「違うな、メルの頑固さは母親でもあるユーリとフィーナから受け継いだ物だ」
「……そうなのか、だが、私には関係のない事だ」
騎士は構えたまま、メルへと迫る。
対しメルは相手の動きを捉えるため観察していた。
焦ったらだめ、私は焦ったら駄目!!
それは嘗てリアスに言われた事だ。
だからこそメルは焦らない様に自分自身に言い聞かせる。
そして、迫る剣をはじき返した。
いや正確にはアリアの風で剣の勢いを殺し、、シレーヌの水の勢いで剣を逸らしたと言った方が良いだろう。
だが、それは相手にとって意外だったのだろう。
「な、なに!?」
騎士は当然驚いているが、メルはその隙を見逃さなかった。
剣を握る手を返し、騎士に向け振り抜く。
だが、騎士もその剣を交わし、メルと距離を取った。
「なるほど……一筋縄ではいかないという訳か……」
彼女はそう言うと再び剣を構え直す。
だが、それさえも彼女の油断だったのだ。
「我が意に従い意思を持て……マテリアルショット」
メルの耳には聞こえたが、騎士には聞こえなかっただろう。
魔法は解き放たれ、騎士へと辺りにある樽や木材が飛んだ。
騎士は突然の事に対処し、避けようとしたが幾つもの飛来物に対応できる事は無く……。
「ぐっ!?」
慌てて剣で防ごうとしたが、剣ははじかれ騎士は吹き飛ばされていく……。
メルはそれを見てナタリアの方へと向き、改めて祖母がすごい人だと感心した。
「…………」
「どうした?」
だが、ナタリアはあくまで冷静に何事も無かったようにメルへと尋ねた。
メルは首を横に振り……。
「な、何でもない」
魔法をまともに受けてしまった騎士を少し気の毒に思いながらメルはそちらの方へと目を向ける。
すると――。
『メル! 風が揺れてる!! 気を付けて!!』
「っ!? ナタリア!! 避けて!!」
シルフの声を聞き、メルはナタリアへと忠告をした。
声を聞きナタリアは大きく後ろへと飛ぶ。
すると彼女が先程まで居た場所で騎士の蹴りが空を切った。
「チッ!!」
騎士の目的はあくまでナタリアを連れて行く事なのだろう。
だからこそ、彼女に対し剣を使わなかったのだ。
メルはそう理解しつつ、騎士を睨む。
「それにしても……」
騎士もメルを睨み、眉をひそめた。
そこにはもう油断は無く……先程の様にいきなり剣を振って来る様子はない。
「めんどうだな」
心底面倒そうに剣を構えた彼女だったが……。
ゆっくりと後ろに下がると突如剣を収めた。
その様子を見てメルは驚くが……。
騎士は溜息をつき……。
「これ以上は此方も消耗する。ディーネ・リュミレイユは反逆者と報告させていただこう」
「反逆も何も最初から、お前達の仲間ではないぞ」
騎士の言葉に最もな言葉で返すナタリア。
しかし、騎士にとってそんな事はどうでもいいのだろう。
彼女はメル達を警戒しつつその場から去り……。
「……あれ?」
メルは空気が変わったのを感じた。
「結界の一種だな、人除けだったのだろう」
「そ、そっか」
ほっとしたメルは息をつき、ナタリアは彼女を見ると優し気に微笑んだ。
「助かったよ」
「そ、そんな……ナタリアだけでもなんとかなったはずだよ」
祖母は強い、例え相手があの騎士だったとしても負けるはずがない。
メルはそう信じ口にしたのだが……。
「いや、流石に初めて戦う相手では分からない、ましてや今回はメルが前に立ってくれたからこそ隙を付けたんだ」
彼女はそう言うとメルの頭を撫でた。
メルは目を細め尻尾を振るのだが……すぐにそれどころでは無かったと思い出し……。
「ナ、ナタリア! 早く家に帰ろう!?」
ここでは話せない! そう感じた彼女は早く家に帰る事を提案する。
するとナタリアは目を丸めつつ。
「そ、そうだな」
メルの提案を受け入れ、二人は龍に抱かれる太陽へと戻るのだった。
酒場へと戻るとすぐにメル達はある部屋へと向かう。
メル達家族の部屋だ。
そこで椅子へと座っているナタリアを前にメルはこれまで起きた事を説明するため、ゆっくりと口を開く。
「ナタリアが……こっちに戻ってからの話なんだけど……」
何故自分がここに居るのか?
そして、精霊の道具はどうなったのか……メルは焦らないようにゆっくりと丁寧に話すのだった。




