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私の夢は冒険者だったのにっ!!  作者: ウニア・キサラギ
17章 止めるために
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385話 誓いを立てる

 メルはクルムに別れを済ませると家を去って行く。

 ちゃんと話せたからと言って心が晴れる訳が無い。

 メルは絶対に弟を助けるんだ!

 そう、誓いを立てそして……少年が助かった時、ようやく心が晴れると自覚をしていた。


「…………」


 メルは空を見上げ、そこには居ない少年へと向け声をかける。

 絶対に助けるから……っ!! と……。


 そんなメルを見送ったクルムは彼女が見えなくなると家の中へと戻り……。


「……エスイル」


 扉を閉めるとそれを背にずるずると座り込んでしまった。

 そして、声を殺すことなく、泣き始めた。

 当然だ、彼女はたった一人の息子を攫われたのだから。

 だが、恩人の娘にお前のせいだなんて言える訳が無かった。

 そう思ってもだ。


 ましてや、メルの事だどうにもしようがない事情だったのだろう。


「えす……いる……」


 息子の名を呼び、泣くクルムは……ただただ、後悔をした。

 幼い息子を何故旅立たせたのか?

 世界の危機だからと言ってそれでよかったのか?

 何度も自分に問い、その度に後悔は増えていく。

 本当はその場で泣き出したかった。

 しかし、そうすれば優しいメルは傷つき、後悔をしてしまう。

 ただでさえ、メルは……その時、悲しそうな顔をしていたからだ。

 だから、大人である自分が彼女を傷つけてはいけない。

 クルムは自分を押し殺し、メルと接していたのだ。


 誰も居ない家の中、彼女の鳴き声は響くのだった。





『メル……』


 暫く歩いた所でメルは風の精霊アリアに呼び止められた。

 だが、メルは頷くだけだ。

 彼女が何故呼び止めたのか分かっていたからだ。

 そして、今から戻っても何も出来ない事も知っていた。

 だからこそ、今はすこしでも前へと進むためにナタリアに会わなければならない。


「行こう、龍に抱かれる太陽に……戦争を事前に回避して、それで……エスイルを見つけるんだ!」


 その為に……とメルは言葉を付けたし、仲間である精霊を見る。


「ナタリアやシルトさんにと話さないと……転移門の事も、向こうの王様の事も」


 今、彼女に出来る事はそれしかない。

 ここではエスイルの情報など得られるわけがないのだ。


「それに……」


 メルは先程のクルムの表情を思い出す。

 ……優しい瞳だった。

 だが……悲しんでいないわけが無い。

 彼女は上手く隠してはいたが、それを察せない程メルは子供ではなかった。


「私の所為だ、守るって約束したんだから……だから!!」


 もう立ち止まる訳にはいかない。

 いや、元よりもう進むしかないのだ。

 メルが世界を存続させようと動くなら、エスイルにつくエルフは世界を滅ぼそうとしている。

 それぞれが自身の目的の為に動けばおのずと出会う事になるだろう。

 だが……。


「エスイルの意志が残っている内に助けないと!」


 メルはそう呟くと目の前に見慣れた女性が居るのに気が付いた。

 晴れているというのに雨避けを差し、歩く銀色の髪の女性。

 彼女もまたメルを見つけ、目を丸めて驚いている。

 メルは彼女の元へと向かいかけていくと……。


「ナタリア!」


 その名を呼んだ。


「メ、メル!? どうしてここに……」


 驚いた様子のナタリアだったが、何故かメルが近づいてくるとほっとした表情をしていた。

 まさか、と思いメルは尋ねる事にする。


「ね、ねぇナタリア? ここ、龍に抱かれる太陽やシルトさんの屋敷とは全く違う方向だよ?」

「………………いや、なに、珍しいものが売っていると聞いてな、その……」


 しどろもどろになる女性は明後日の方へと目を向けている。

 これは間違いない。

 メルはそう思い彼女へと手を差し出した。


「お話は終わったの?」

「ああ、終わった……」


 短い会話、だがそれだけで十分だ。


「それじゃ帰ろう? アリア、シレーヌお願いね」


 そう、メル達の家系にはある呪い染みたつながりがある。

 それは……。


「何だこの手は!? い、良いか? 私は迷っていた訳ではないぞ!? 決して迷子になんか……」

「………………私にそう言われてもこれ、ナタリアからの遺伝だからね?」


 メルがそう言うとナタリアはその白い肌を赤く染めていき……。


「く……っ、私だって好きでこんな体質になった訳ではない!」


 そう悔しそうに叫ぶ女性ナタリアはメルの祖母だ。

 その見た目からは信じられないが血が繋がっており、迷子になりやすいのは彼女からの遺伝だと母ユーリは言っていた。

 はた迷惑な遺伝ではあるが……メルには精霊の瞳がある為、迷わずに済んでいたのだ。

 ナタリアにも迷わない方法があるはずだったが……周りを見てみると人が居ない。

 いつもなら人が居てもおかしくないのにだ。


「ねぇ、ナタリア……」

「ああ、何かおかしい」


 不安を感じるメルを守る様に前へと出たナタリアは辺りを見回す。


「先ほどから人の気配がしないんだ……それに空気もおかしい何か重くのしかかってくるようだ」

「そ、そう?」


 ナタリアの言葉に疑問を感じたメル。

 だが、彼女の言う通り空気が重いというのを感じる事は無かった。

 しかし、何かがおかしい……そう思った彼女もまた辺りを見回すのだった。

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