表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
私の夢は冒険者だったのにっ!!  作者: ウニア・キサラギ
17章 止めるために
395/486

379話 迷子の少女?

「いえ、あの……本当に助けてくれてありがとうございます」

「そんな、さっきも言いましたけど……」


 礼を告げる事がそんなに言いにくい事なのだろうか?

 メルは疑問に思いつつ、彼女に当然の事だと伝えようとする。

 しかし――。


「街で聞いていましたから……本当はすこし怖かったんです」

「……え?」


 少し怖かったとはどういう事だろうか?

 メルは首を傾げる。

 すると、彼女は更に言いにくそうに表情を変えた。

 そして……。


魔族(ヒューマ)以外の種族は皆乱暴で魔物と変わらないって……」

「な、なにそれ!?」


 思わず素っ頓狂な声を出してしまうほどの理由。


「あ、あの……その……皇帝様がそうおっしゃっていて、その……」

「皇帝?」


 メルは聞きなれない言葉を繰り返す。

 いや、実際には聞いた事がある、だが……それはあくまで物語の話だ。

 皇帝と言うのは王の一種で、皆から恐れられていた。

 それを倒し、王となった青年の話はメルが好きだった話の一つだ。


「えっと、皇帝って……物語の?」


 メルは尻尾を揺らしながら彼女に問うと彼女は首を振る。


「そんな! 違います! 確かに怖いです、ですが……私達を助けてくれようと……」


 彼女はそこまで言って固まってしまった。

 メルは彼女の様子がおかしいと気が付いて……。


「だ、大丈夫?」


 と尋ねるが、彼女は段々と震え始める。


「あれ? そういえば……なんで私、こんな所に? だって街は聖地で……約束された平和があって……」


 ぶつぶつと紡がれる言葉から彼女の身に起きている事は彼女自身信じられないのだろう。


「なのに、なんで、私…………っ!!」


 そして、大きく目を見開くと彼女はその場に座り込む。


「ど、どどどうしたんですか!?」


 突然の事にメルは彼女を心配し、近づいた。

 すると彼女はすがるようにメルの腕を掴み……。


「思い、だしました……私、持ってたんです」

「持ってた?」


 一体なにを持っていて、何があったのだろうか?

 メルは彼女の言葉を持つ。


「禁書を……森族(フォーレ)天族(パラモネ)が出てくる本を持ってたんです! だから、追い出されたんだ」


 大粒の涙を流し、彼女はそう叫ぶと……両手で顔を覆い泣き始めた。


「そ、そんなのが禁書?」


 禁書と言えば危険な物が記されている物だろう、メルはそう思っていたが、街によってはそれも違うのだろうか?

 少なくとも彼女が嘘を言っている様子はない様に見えた。


「そんなのじゃないです!! だって……他の種族が仲間なんて恐ろしい」


 彼女はそこまで言うとメルの顔を見て固まった。

 メルも彼女の言葉にショックを受けていて、表情が強張っていたからだろう。

 だが、そうだとしても彼女を見捨てる気は無い。

 しかし……。


「ち、違う……私を助けて? でも、何人も喰われ……あれ? 私、あれ?」


 頭を抱えてガチガチと震える女性。

 その様子は普通ではなかった……だからこそ、メルは……。


 この人普通じゃない? ううん、そう思い込まされる事で今の状況が信じられないんだ。


「あ、頭が痛い、どうなってるの!? だって助けて……でも……」


 髪を振り乱し、彼女は叫ぶ。

 メルはそんな彼女に怯えられるのを覚悟で手を差し伸べた。

 案の定びくりと身体を震わせ恐る恐る上を見上げてきた女性。


 一体彼女のいる国ではメル達はどうとらえられているのだろうか?


「あの……私はそんな変なことしないよ?」

「本当ですか? ラルフ様とかと同じで?」


 ラルフ様と言うのはメルには勿論分からなかった。

 だが、よくよく思い出してみればあの騎士の一人からは勧誘を受けている。

 そう考えるとただ単にすべての森族を始めとする他種族を敵とみている訳ではなさそうだ。


「その人は知らない、でも……私は、私は――龍に抱かれる太陽の冒険者だから!! 困ってる人を助けるのが仕事なの!」


 笑みを浮かべそう答えたメル。

 しかし、龍に抱かれる太陽の名を出した所でそこの国で知られているかは分からない。

 名が通っている事自体が奇跡かもしれない。


「…………」


 怯えていた瞳は徐々に変わっていき、メルを見つめる目は何処か優し気だ。

 彼女は――。


「そう、だよね……昨日は必死だったから、怖いって忘れてましたけど……襲うなんて事はしませんでしたからね」


 ちょっとその判断方法は複雑だなぁとメルは考えたが、彼女がそれで安心するなら良い。

 そう考える事にし、頷くと……。


「すみません、国では一部の他種族以外は皆私達を食事だと思っていると聞いていたので……」


 それに……と続ける彼女。


「それに?」

「……森族は特にエルフの……支配者の配下だって聞いたので……」

「支配者……」


 嘗てあの騎士と対峙した時に聞いた支配という言葉。

 勿論メルは神である精霊エルフの支配というのは仕方ないと思っている。

 とはいえ、今までメル達に干渉をすることはあまりなかったはずだ。

 だが、今は違う……。


「それは多分……」


 間違っていない、そう思ってしまった。

 いや、正しくは半分正解で半分間違いだ。


「エルフには二通りの考えがあるの……二人が別々に考えてる」

「……え?」


 メルが口を開くと不思議そうにする女性は耳を傾けた。


「なんでもない」


 しかし、それを口にすれば目の前の女性は不安になるだろう、メルはそう考え口を閉ざし……。

 代わりに尋ねるのだった。


「そうだ、貴女のお名前は?」


 そう聞くと彼女は暫く迷いを見せたが答える……。


「イヴリル……皆からはイヴって呼ばれてます」

「私はメアルリース、メルだよ! よろしくね」


 そう笑みを見せメルは自身の名を告げるのだった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ