378話 力無き少女とメル
メルは火を見つめながら考える。
この先に街はあっただろうか? と……。
流石に彼女を連れてリラーグまで飛ぶのは無理がある。
かと言って放って置く訳にはいかないだろう。
「うーん……」
メルは首を傾げ困った様子で女性へと目を向けた。
彼女はどう見ても一般人だ。
これで騙していると言われたらメルは人を信じられなくなりそうだった。
だからこそ、何らかの実験に巻き込まれたのでは? と考える。
その上、ルーフから来たという事は……。
「あの人達はルーフの人? だとしたら……私達は」
これからメル達が目指す場所でもあるルーフ。
そこには森族の住む村があり、そこでエスイルの力を借り精霊を生み出す儀式をする。
それが目的だった。
だが、そのエスイルがエルフの手に落ちた。
「エスイルは助けるとして……あんな人達と戦わなきゃいけないの?」
やっとの思いで倒す事の出来た騎士達。
実際にはシレーヌのお蔭と言って良い。
偶然、彼女の力が目覚めたからこそ虚をつくことが出来た。
だが、ルーフにはあの恐ろしい騎士が何人もいる。
そう考えるだけでメルはぶるりと震え、尻尾は丸くなっていく……。
無事エスイルを助けられたとして守りながら目的の場所へと向かえるのだろうか?
精霊達を助ける事は出来るのだろうか?
メルは疑問と不安を感じながら燃え盛る炎を見る。
そこにはメルを心配そうに見つめる精霊フラニスの姿があった。
『メル! 悩み事か?』
「……うん」
彼女の言葉にメルは頷く。
すると彼女は誇った様に胸を張り答えた。
『悩んだ時は寝ると良いらしいよ!! 考えても悶々とするからだって!!』
そんな彼女の言葉にメルは大きな瞳をぱちぱちとさせる。
そして、くすりと笑うと……。
「それ、誰から聞いたの?」
と尋ねた。
フラニスはメルの表情がわずかにほぐれたのを感じたのだろう。
嬉しそうに答えた。
『ケルム!!』
「やっぱり……」
想像通りの人物の名を聞きメルは笑みを見せた。
ケルムとはナタリアが連れてきた森族の男性だ。
シュレムの師でもある彼はいつもは頼りなく、また女性に弱い。
だが、いざという時には頼りになると母は褒めていた。
確かに彼なら、気が落ち込んだ時こそ別の事を進めてきそうだ。
メルはそう思いながら膝を抱き……。
「でも、今は寝られないかな?」
と微笑みながら呟いた。
明日、日が昇ったら空から村でも街でも探そう、そう思いながら新しい薪を火にくべるのだった。
翌日、女性が落ちてからメルは魔法で空を飛ぶ。
勿論おいて行くわけではない。
近くに村か町が無いかを調べるためだ。
「んー……あ、あった!」
くるくると回り見渡すと小さな集落を見つけた。
メルは下へと戻り、女性へと近くに集落がある事を伝える。
すると彼女は――。
「す、すごいですね、魔族でもないのに魔法が……」
彼女が驚くのも当然だ。
メルは何処からどう見ても森族であり、本来であれば森族は魔法が使えない。
だが、メルはその使えないはずの魔法を使ったのだから。
「えっと、私はちょっと普通の人と違うだけです」
メルはそう言いつつも詳しい事を言うのは避けた。
彼女が何者だか分からないからだ。
「普通と違う? それってどういう……」
「あはは……えっと……」
だが、当然のように疑問を投げかけてくる女性に対しメルは引きつった笑みを浮かべた。
すると彼女は何かを察した様子になり……。
「あ、ごめんなさい、何か言いたくない事でした?」
と再び尋ねられたメルは空笑いをする。
彼女は困った様子だったが、メルは取りあえずはまだ信用すべきではないと考えた。
メルらしくない考えではあったが、それでも目の前の女性はあの騎士達の国から来た可能性があるのだ。
もしかしたら、これは演技で……メルンに何かしようとしてるかもしれないし……。
可能性としては薄いだろうけど……。
メルはそう思いつつ集落へと向け歩み始めるためシレーヌへと目を向ける。
水の精霊は頷き前を先導し始めた。
すると後ろからは――。
『メル! 気を付けてな!』
というフラニスの声が聞こえ、呼びかけられたメルは振り返ると笑顔で答えた。
「うん、ありがとうフラニス、行ってきます」
メル達は集落へと向け歩み始める。
すると女性はメルの横で歩き……。
「すみません、助けていただいて」
「い、いえ……それが冒険者の役目ですから」
メルはそう口にし笑みを浮かべた。
だが、その笑みは何処かぎこちない。
彼女が何者であるか、まだ分かっていないというのもあるのだろう。
「「………………」」
続く沈黙に耐え切れなくなったのだろうメルと女性は互いに目を合わせた。
「「あの……あ、お先にどうぞ」」
同じ言葉を発し、互いに顔を合わせた彼女達はそれがおかしかったのか笑い始めた。
「ご、ごめんなさい」
「わ、私こそごめんなさい」
二人して謝ると、メルは彼女に話を先にしてもらう事にした。
「それでどうしたんですか?」
すると彼女は言いにくそうな表情を浮かべたが、ゆっくりと口を開き始めた。




