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私の夢は冒険者だったのにっ!!  作者: ウニア・キサラギ
17章 止めるために
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376話 野営二日目

 夜営と言ってもメルは一人だけだ。

 普通は寝れないだろう。

 たった一人の野営は危険だ。

 しかし……メルには休む手段があった。


「それじゃ、皆お願いね」


 メルは作業が終わると眠る準備をし始め、そこに居る精霊へと告げる。

 すると炎の精霊フラニスは焦ったように声を上げる。


『メル! 火が消えたらどうするんだ!!』


 そう、火が消えてしまえば寒くなる。

 そうなれば精霊フラニスの居場所は無くなってしまうのだ。

 暖かい場所を好む彼女達には火が必要。

 だが、薪をどんなにくべても朝までは持たないだろう。

 それはメルにも分かっていた事だ。


「消えそうになったら教えて」


 それに火を消してはいけない理由ももう一つあった。

 魔物や動物は火を嫌うものが多い。

 その為、フラニスが心配するように火が消えるというのは自殺行為。

 だからこそ、一人では休めないと言った事にもつながる。

 強固な小屋を建てられればそれも変わってくるが……。


『アースウォールで小屋は作らないんですか?』

「うん、壊さないといけないし、野盗とかに見つかったらすぐに囲まれちゃうよ……」


 そう、もし小屋を作れたとしてもそれは目立つ為、逆に餌食にされるかもしれない。

 何より逃げ場所が無くなってしまえば、リラーグの時のように捕らえられてしまうかもしれないのだ。

 それだけは避けなくてはならない。


『でも目印なら焚火もだし! 盗賊に襲われたら意味が無いぞ!』


 フラニスの訴えももっともな事だ。

 しかし、休まなければそのうち倒れてしまう。

 なら……少しでも休むことは大事なのだ。


「大丈夫、ただ休むなんて事はしないよ、もう対処はしてるから」

『そうですが、あれだけで良いんですか?』


 シレーヌは周りを囲んだそれを見て不安そうにしている。


『罠としては不十分です』


 メルは周りに糸を張り、そこに引っかかると音が鳴る様に細工をした罠。

 鳴子と言うものを作ったのだ。

 しかし、それだけでそうこうするという事は勿論できない。

 出来るとしたら……。


「警戒させることはできるし、でも……多分盗賊とかはあんな見え見えの罠はすぐに外しちゃうと思うよ」


 メルは笑みを浮かべてそう口にした。

 鳴子を外したら魔法が……なんて言うことが出来たらいいのだが、生憎そんなマジックアイテムは無い。

 だが、精霊も罠もある。

 それにメルが張った罠が目に見える者だけとは限らない……と錯覚させることが出来るのだ。

 リアスなら本当にそれが可能だろう、だがメルにはできない。

 しかし、ワザと見せる事でメルが準備をする時間を稼ごうという訳だ。

 もしかしたらメルの言葉が聞こえているかもしれない為、大きな声であれだけだなんて事は言えなかったが……。


「でも、大丈夫! ね?」


 メルはそう言って薪をくべると布団の中へと潜り、丸くなるのだった。




 真夜中、パチパチと薪が音を立てる焚き木の傍。

 夕日髪の森族(フォーレ)の少女は静かに寝息を立てる。

 どのぐらい時間が経ったのだろうか?

 誰にもわからなかったが、その傍へと寄る影があった。

 気配に気が付いた炎の精霊フラニスは慌てて彼女を起こす。


『メル! メル!! 誰かが来る!!』

「――っ」


 その声は確かに届き、メルはゆっくりと瞼を持ち上げた。

 そして、傍にあるアクアリムへと手を伸ばし、耳を澄ませる。

 サクッサクッサクッと言う音は非常に軽く……彼女を惑わせた。


「音が軽い……女の人? それにこの音だと……」


 ろくな装備を見に着けていないのでは?

 メルはそう疑問を浮かべるとその音は近づいてくる。

 決して弱っているという感じではなく、確かな足取りでサクッサクッサクッと近づいて来るので逆に恐怖を感じる。

 だが、途中では確かになる子の音が鳴り……。

 それに焦ったのだろう、慌てて近づいてくる音が聞こえたのだ。


 一体なにが近づいてきているのか?

 メルは警戒し、睨む……。


 すると、奥から現れたのは……。


「……え?」


 普通の少女。

 服も汚れておらず、武具の類も無い。

 ただの少女が現れただ。

 メルは当然、おかしいと感じた。

 だが、少女はメルを見ると心底ほっとしたような表情を浮かべている。


「良かった、人が居た……道に迷ってしまって……」


 そういう少女は何処か不気味だ。

 見た目は普通の魔族(ヒューマ)で肌が露出している所には少なくとも魔紋は無い。

 服で隠れているという可能性も十分にあり得るが、今のところはただの少女。

 そんな少女がこんな所に何故? と誰しも思う事だろう。

 道に迷ったというのもおかしいと彼女は感じた。


「貴女は誰?」


 メルは剣から手を離さずに警戒を続ける。

 すると少女はようやくメルが手にしている物に気が付いた様子で――。


「ひっ!?」


 小さな悲鳴を上げその顔に明らかな恐怖を浮かべている。


「ま、ま……」


 そして、何かを訴え始め、メルは彼女の様子を見てふぅとため息をつくと剣を構えるのをやめる。

 今の彼女の顔に嘘が無いだろう、と思ったからだ。


「ごめんなさい、こんな夜中に武装もしてない人だから……」


 落ち着かせるため優しく言うと彼女はへたりとその場に座り込みます。


「そ、そうです……よね……」


 彼女は顔を引きつらせながらそう答える。

 そして、そんな彼女にメルは改めて尋ねた。


「それで、こんな夜中、それもろくな物どころか何も持たずに何をしているの?」


 警戒は怠らずに……。

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