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私の夢は冒険者だったのにっ!!  作者: ウニア・キサラギ
17章 止めるために
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373話 酒場での食事

 その日、メルはアイビーの作ってくれた温かい食事を口にする。

 スープにパンという普段の食事からすれば質素に見えるかもしれない物。

 だが、スープには野菜が入っているだけではなく、肉も入っていた。


「あ、あのこれ……」


 そう、一見質素に見える食事は豪華な物だったのだ。


「ああ、今この街はドラゴンの脅威にさらされてるでしょ? だから、冒険者には英気を養ってもらわないとね!」


 それは、彼女なりの気遣いなんだろう。

 事実この酒場にはドラゴンの脅威が迫っている街とは思えない位活気があふれていた。


「…………」


 メルはスープを口に入れる。

 優しい味は口の中に広がり、喉を通るとその暖かさはまるで心まで温かくしてくれる様だ。

 煮込まれた野菜は柔らかいのは当然だが、肉の塊もまた柔らかく口に入れて噛みしめるとそれだけで解れていき……。

 中からはスープの味が染み出てきた。


「美味しい……」


 メルは思わずそう口にした後、パンをちぎって口に放り込む。

 パンも焼きたてなのだろうか? ふわふわで口に含むとその匂いが食欲をそそった。

 恐らく塩を使っているのだろう、ほどよい塩分がまた美味しいのだ。


「そう言ってもらえると嬉しいね」


 アイビーはカウンターに肘を乗せての上に顔を乗せて笑顔を見せた。

 メルは食事を夢中になりながら口にする。

 そんな彼女を見て、周りの冒険者も笑みを漏らす。


「やっぱり若いのが居ると良いな! その喰いっぷりが食欲をそそる!」

「おま、まだ食うつもりかよ!?」


 何処かの机から聞こえてきたそんな会話にアイビーは顔を上げて答える。


「食べるのは良いけど! 残したら承知しないよ!!」


 彼女の言葉に笑い声をあげたのは様々な机からだ。

 すると、メルは辺りを見回してみる。

 やはり、この酒場は活気づいている……これならドラゴン相手でも大丈夫かもしれない。

 メルはそう思った。

 確かに実力はあるであろう冒険者。

 しかし、一番怖いのはその実力が発揮できないという時だ。


 だが、メルは辺りを見て確信をしていた。

 これなら戦える。

 ドラゴン相手でも決してその刃は揺るがないだろうと……。

 そう思いつつ、メルは食事をすすめた。


「さ、食事が終わったら休むと良いよ」


 メルは頷き、席を立ちあがる。

 酒場の中の賑やかな声はアイビーに案内された部屋まで響いていた。


「ごめんね、うるさくてさ……」

「いえ、大丈夫です」


 メルはそう言うと微笑む。

 するとアイビーはベッドを指差し。


「一つしかないけど使って良いよ、私は仕事があるから、ね?」


 そう言われると少し悪い気がしたメル。

 当然だろう、此処はアイビーの部屋で彼女の好意で泊まらせてもらっているのだから。


「あの、私はそっちの……」


 椅子で良いと言おうとした。

 しかし、アイビーは首を横に振る。


「君は明日旅立つんでしょ? ならここで疲れをしっかりと取っておかないとね」


 それはメルにも分かっていた事だ。

 しかし、ちゃんと休息を得なくてはならないのはアイビーも同じだ。

 だからこそ、ドラゴン退治の士気に関わるであろう彼女にはちゃんと休んでほしかったのだが……。


「それに手紙が万が一届いてない可能性があるし、それもちゃんと伝えてもらわないとね」


 そう言って笑う彼女に対し、メルはそう言う理由ならと納得する。


「分りました、なるべく早く伝えられるように頑張ります」


 普通の人には無理だろう。

 だが、メルには魔法があり、母程ではなくとも浮遊の魔法には自信があった。

 だからこそ、ここ迄リシェスに早く付けたのだ。


「早くって……ここからは馬車でしょ?」


 それを知らないアイビーはそう言うが……メルは首を横に振る。

 そう、馬車には乗る事は無い。


「馬車になると出発の時間や、休息の時間が決められてるから乗らないつもりです。私一人なら、皆の力も借りれるし……なにより自由ですから」


 メルが言う様に自分にまだ余力があろうが馬車を使えば強制的に休まなければならない。

 かと言って降りて歩くか? と言われるとそうなれば馬車に追い越され結局遅くなってしまう。

 だが、空は違う。

 確かに陸には居ないような魔物と遭遇する可能性はある。

 だが、方角さえ分かっていれば大した邪魔もなく真っ直ぐ進めるのだ。

 だからこそメルは空を進もうと考えていた。


「自由って貴女……無茶をする気じゃ!?」


 焦るアイビーだったが、メルは笑みを浮かべて答える。


「無茶はしませんよ……だって、私は絶対にリラーグに行かないといけないんだから」


 メルはそう口にし、自分の中で誓いを立てる。

 ここで倒れる訳にはいかないのだ。

 仲間達が待っている……だからこそ、メルは無事にリラーグに着かなくてはならない。


 それに……アリアもきっとあっちに戻ってる。

 だから、あの子為にも戻らないと!!


 メルはお使いを頼んだ風の精霊の事を思い出し、その姿を思い浮かべるのだった。

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