367話 再会
翌日、メルは起きてすぐに旅立ちの準備を進めようとしていた。
すると突然扉を叩かれる音がし、首を傾げる。
「はい?」
嫌な気配を感じなかった彼女は扉を開けると其処には……。
「フィ、フィオさん?」
そう、かつてこタリムで助けた女性フィオだった。
彼女は部屋の中へと一瞬視線を動かすが、すぐにメルの方へと向き直る。
「本当にリアスは居ないんんだね」
「は、はい」
メルはやはりこの女性が苦手だった。
だが、そうだとしても追い出す訳にはいかない。
「なんの用ですか?」
丁寧にだが、顔を引くつかせ彼女は問う。
すると……。
「様って、まぁ……大したことじゃないけど……」
彼女はそう言うと包みを渡して来た。
メルは首を傾げつつ受け取ると包みを開けてみる。
そこには――。
「も、もらえないよ!!」
思わず驚いた彼女はそう口にした。
だが、フィオは大きなため息をついた。
「もらえないも何も……もうあげた物でしょ?」
「ま、まだもらった訳じゃ!!」
メルは彼女の言葉に反論をするが、フィオは首を振る。
そう、堤の中に入っていた物はメルにとっては普通だ。
だが……この村にとっては貴重な物。
「それにお父さんが取って来るし」
「でも、干し肉は保存食だよ!! それもこんなに一杯!!」
包みいっぱいに入れられていたのは干し肉。
確かに今のメルにとっては嬉しい物だ。
だが、それでもこの貧しい村で受け取るのは気が引けた。
「それに、何で私がここに――」
そこまで言いかけてメルはふと思い出したことがある。
フィオの父親は猟師だ。
そして、この酒場に食材を降ろしているはずだ。
そうなれば当然、店に来る。
メルが知らない内にやり取りがされていたのではないか? 彼女はそう思うと頭を抱え……。
「お金払います」
というのだが……。
「お父さんからの伝言、娘を助けてもらったんだから料金は要らないってさ」
そうは言われてもメルの気持ちが収まるはずもなく……。
「ただ当然の事をしただけなのに……」
と呟いた。
するとフィオはもう一度大きなため息をつく。
そして――。
「もう手渡したんだから返すは無し! って言うか返してくれるならリアスの方が嬉しいんだけど?」
「リアスは物じゃないよ!!」
彼女の言葉に思わず反論をするメル。
すると、声を荒げられた事に怒ったのか彼女は頬を膨らませ。
「もともとこの村の人だからね!! 怪我とかさせたら絶対に許さないから!!」
そう言ってその場を去って行くフィオの背をメルもまた眉を吊り上げ不機嫌そうに尻尾を立て見送った。
そして、その後すぐに手に持っていた干し肉を思い出し……。
「あ、か、返しそびれちゃった」
とがっくりとするのだった。
手元に残った干し肉を見つめメルはどうしたものかとため息をつく。
一度受け取ってしまった物を付き返すのは失礼だ。
それも今となってはわざわざ家に向かい返さなくてはならない。
そうなるとフィオだけではなく親であるフィッツ達に対しての失礼にもなる。
「かと言って黙ってるわけにも……」
そう思った彼女は困ったような表情を浮かべ、少し間を置くと……。
「行こう」
そう呟き、干し肉を包み直す。
「お礼ぐらいは言わないと」
そして、そう呟き……部屋から出るとカウンターに立ち仕事をしている主人へと目を向けた。
「ありがとうございました!」
「もう良いのか?」
「はい! 食料は貰えたので……あとちょっと買い足して、出発します」
彼女はそう言うと宿の主人はうんうんと頷いた。
彼は笑顔で満足そうだ。
やはり、夜のうちに彼が伝えていたのかもしれない。
メルはそう考えたが、黙って頭を下げた。
「行ってきます!」
そして、それだけを残し宿を去る。
そこまでは良かったのだが……。
「……………………」
右を見て左を見る。
別に何か危険があるという村ではない。
だが、一つ彼女は忘れていた事があった。
宿はすぐに分かる建物だ……シレーヌが案内出来た。
しかし、フィオの家はどうだろうか?
何処を見ても似たような家しかない。
そうなると自力で探さなければならないのだが……。
『メ、メル? まさか……』
「どこだろう?」
すぐに追いかけていれば後を付けるだけだ。
だが、もうすでにフィオの姿はない。
引きつった笑みを見せながらメルは呟いた。
下手に動いたらこの後迷ってしまうのは分かり切っていた。
そうなれば当然、出発が遅れてしまう。
「そ、それだけは駄目!!」
メルは一人焦った様に口にすると辺りを見回し人の良さそうな女性を見つけた。
「す、すみません!」
声をかけると彼女は首を傾げながらメルの方へと向いてくれた。
「は、はい?」
「猟師のフィッツさんの家ってどちらですか?」
「ああ、フィッツさん」
名前を言うと彼女は頷き指をさし始める。
しかしメルは首を全力で左右に振った。
「ど、どうしたの?」
「わ、私迷いやすくて……道を教えてもらうだけだと不安なんです」
若干引いてしまった女性に対しメルは正直に答えると彼女はクスリと笑い。
「分かった、お姉ちゃんと一緒に行こうか?」
と言ってくれたのだった。




