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私の夢は冒険者だったのにっ!!  作者: ウニア・キサラギ
16章 失われた仲間
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364話 闇の回廊の中で

『メル?』


 シレーヌはメルの名前を呼び、首を傾げた。

 暗闇の中、何が出来るというのだろうか?

 だが、確かに周りは真っ暗だったが、メル達のいる場所は不思議な場所だった。

 メル一人では気が付けなかっただろう。

 しかし、そこは本当の暗闇ではなかったのだ。

 黒い世界に居ると言った方が良いかもしれない。


 事実、メルは魔法無しにシレーヌの姿をはっきりと見ることが出来た。

 もし暗闇なら何も観えなかったはずだ。

 それだけで少しメルは自身の中の不安が薄れた気がした。


「これで転移陣を作る」


 そう口にし、メルは外套の傍へと座り込む。


「えっと……」


 チャンスはたったの一回。

 今度こそ失敗は許されない。

 だが、幸いにも彼女は詠唱を知っていたし魔法陣の実物を見ている。

 作り出すことは十分に可能のはずだ。

 自身があった彼女はペンを外套へと近づけていく……。

 瞬間――。


「困るんだよなぁ」


 声が聞こえ、メルはびくりと身体を震わせた。

 一体誰が居るというのだろうか、慌てて立ち上がった彼女は辺りを見回す。

 だが、そこにあるのは暗闇だけだ。


「だ……だ……」


 もしかしてお化けだろうか?

 そんなありえない事を考えた彼女は恐怖を感じ心臓がバクバクと鳴り響いた。


「誰!!」


 ようやくその言葉を紡ぎ出すと暗闇からは笑い声が聞こえる。

 聞いた事が無い声だ。


『メル!! 右です!!』


 その声が近づいてきた時、シレーヌが叫びメルは大きく左に避ける。

 するとメルの右腕に……いや、服が裂けてしまった。


「え? え?」


 突然の事に困惑するメル。

 だが、すぐに持ち直すと先程まで居た場所を睨む。

 すると暗闇の中に何かが揺れているのに気が付いた。


「人?」

「人以外なにが居るんだ? それよりも匂いも消してたのに……どうやって気が付いた?」


 男はそう言うと驚いたような素振りを見せる。

 すると黒衣が少しはだけ見覚えのある紋章が見えた。


「――っ!」


 以前二人の騎士に襲われた事があった。

 その二人の騎士と同じ紋章を持っているのだ。


「貴方は……」

「ん? どうした?」


 あっけらかんと答える男性。

 だが、メルは疑問だった。

 何故あの二人の騎士と同じ紋章を持つのか……ではない。

 それは恐らく仕える国が同じだからだろう。

 だが、何故ここに居るのかが疑問なのだ。


 先程の困るんだよなという言葉から分かる通り、メルをここに閉じ込めたのは彼に間違いないだろう。

 しかし、それならなぜ彼がここに居るのか?

 そして、何が目的なのか……。


「貴方はなんでここに居るの?」


 幽霊ではない、その事に気が付いたメルはある程度持ち直し問う。


「なんで? なんでか……仕事だからとしか言いようがないな」


 そんな事を聞いている訳ではない。

 メルはそう言いたいのを我慢した……。

 問題は此処にいる以上出れないかもしれないのだ。

 だというのに何故ここに居るのか? が疑問だった。


「閉じ込められてるのによく平気でいられるね」


 メルはそう口にする。

 すると男は怪訝な顔を浮かべるがすぐに笑みを浮かべた。


「ああ、そうだな、そうだ……君は閉じ込められている」

「…………」


 その言葉と態度は自分は大丈夫だと言っているような物だった。


『メル、なんか変ですよ、気を付けてください』


 それはウンディーネも理解したのだろう、メルに忠告をする。

 メルは頷き、男を睨む。


「どうやってここに来たの? それに、どうやって出るの!」


 再び向けた質問。

 それに対し彼は笑い声をあげる。


「それを言ってどうなる? だが、そうだな……一つだけ、転移なんて便利な物独り占めにしたと思っているようだが、それは違う」


 つまり、自分達も転移魔法を使えるという事だろう。


「それと、困るんだよな……せっかく仲違いの理由を作ってる最中結束を強められたらさ」


 等と口にし、ナイフを構える。

 するとメルが魔法陣を書こうとしていた外套を切り裂き……。


「え? 待って!?」


 メルの懇願は虚しく、布が裂ける音がその場に響いた。

 たった一つの希望はいとも簡単に奪われてしまったのだ。

 もう手元には魔法陣を描けるような大きさの布は無い。

 つまり、メルには外に出る手段がなくなったという事だった。


「まぁ、悪く思うなよ? その内運が良ければ道が繋がる……元の世界に帰れるとは限らないけどな」


 と彼は言うとその場を去って行こうとする。


『メル!! 追いかけましょう!』


 呆然とするメルにそう提案したのはシレーヌだ。

 メルはハッとし、彼を必死で追いかける。

 彼には外に出る手段があるのだ……それに、賭けるしかなかった。

 だが……。


「おっと、ついて来られても困るんだよ」


 彼はそう言うと再びナイフを構え、メルへと対峙をする。


「殺せなんて言われてなかったけど、ついて来るなら話は別だ。外に出るために君は邪魔だからな。いない方がこっちの都合が良いんだ」


 冷めた瞳で睨まれたメルは一歩後ろへと下がりそうになるのを堪え、アクアリムを構えた。

 そして……。


「私だって外に出ないといけない理由があるの!」


 と口にするのだった。

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