363話 閉じた門
メルが回廊の中に閉じ込められてから……。
リアス達は魔法陣を調べていたが、何か有益な情報が得られることない。
それも当然だ、リアス達は魔法使いではない。
例え魔法使いだったとしても転移陣を見てもすぐに理解することはできないだろう。
「クソ!!」
不安を感じ焦るリアス。
それは仲間達全員同じ気持ちだった。
しかし、現状を変えるにはどうにかするしかない。
じゃなければメルが無事かどうかすら分からないのだから。
「せめて、せめてエスイルが居れば」
シュレムはそう言うと歯を噛みしめた。
そう、メルと同じく森族と魔族の血を持つエスイルなら精霊を通し連絡を取ることが出来る。
彼さえいてくれればそれだけ助かるのだが……今はどんなに求めても少年はそこには居ないのだ。
「焦っちゃ駄目よ、以前結界を解いた時の事を思い出しましょう?」
「ああ……」
ライノに諭された彼らは頷き、再び魔法陣へと目を向ける。
「あの……」
そんな時だ、彼らに話しかけてきたのは他でもない。
レライの兵士。
「なんだ?」
彼らを邪険にする訳にはいかない。
そう考えたのだろうリアスは視線を少しずらし彼らに答えた。
「その魔法陣に何かあったのですか? そうなると我々がずっと見張っていたにもかかわらず何かをされていたという事になります」
「いや、確かにそうかもしれないが、まだそうとは限らないしその可能性は低い」
兵の言葉にリアスはそう答えた。
事実彼の言う通り、魔法陣に細工をしてある可能性は低いだろう。
「ですが、他に……」
「もしそうだとしたら、君達の中に裏切り者が居るって事だ……その可能性が無いとは言い切れない。だけど今はその可能性よりも……」
リアスはそう言うと魔法陣を睨み。
「今はメルが無事かどうかを調べる方が先だ……メルに何かがあったら……」
「ああ、メルを助けねぇと!!」
二人は頷き合い、魔法陣に怪しい所が無いかを調べた。
しかし、彼らが知る所では何も無く……。
「クソ!! 一体……何がどうなってるんだ」
リアスは拳を地面へと叩きつけた。
一方メルはその場で座り込んでいた。
回廊が閉ざされた場合、どれだけ進んでも意味が無いからだ。
迷子になるという事は無いが、もうすでに迷っていると言っても過言ではない。
そもそも外に出るための出口が無いのだ。
「リアス……皆」
メルは彼らの事を思い出し涙を流す。
もう二度と会えないそう思ってしまった彼女は不安と恐怖で押しつぶされそうだった。
思えば旅を始めてから近くには誰かが居た。だが今は誰も居ない。
魔法は成功したはずで、何故こんな事になったのか?
「どうしよう、どうすれば……」
回廊に閉じ込められたメルには手段が無い。
だが――。
『メル!』
声をかけられはっとした。
「え?」
誰に声をかけられたのだろう? なんて考える程メルは彼女が居た事に気が付かなかったのだ。
心配そうに近づく精霊は水の精霊シレーヌ。
「シレーヌ……どうやって?」
一緒に来たの? と問おうとし、メルは口を閉ざした。
言う前になぜ彼女がここに居るか分かったからだ。
いや、当然と言った方が良かっただろう。
寧ろなぜ彼女が居ないと考えていたのか、メルは自身が冷静じゃなかった事に気が付き恥ずかしくなった。
『大丈夫ですか?』
不安そうなシレーヌを見てメルは立ち上がる。
この場に閉じ込められたのは自分だけではない。
なんとかしてここから絶対に抜け出さないと!
彼女はそう考えると自然と身体に力が入っていく……。
「きっとなんとかするよ!」
そう口に出すと更に力が溢れるような気がしたメル。
だが――。
『でもどうやって? こんな暗闇なんですよ? 地上の様な地面がある訳じゃないですから此処に転移陣を描くなんて事も出来ないんですよ?』
「分ってる」
それはメルも理解していた。
確かにそうだ……だが、諦めたらいけない。
そう考えた彼女はどうするべきかを考える。
脱出の手段は閉ざされている。
回廊はなくなり、メル達が居るのは闇の中だ……。
「下に魔法陣を描く事は出来ない……」
そう呟いた時、メルはふと考えた。
口にした言葉はたった今シレーヌに指摘された事だ。
待って、もしかして転移陣を書くことが出来れば……ナタリアの転移陣と繋げて回廊を?
でも、此処も元々その回廊だったのに転移陣を新たに作る事なんて出来るのかな?
考え込むメル。
しかし、答えが簡単に見つかる訳もなく、尻尾は垂れ下がりそうになってしまう。
だが、それを奮い立たせるようにピンと立てると彼女は外套を外した。
『ど、どうするのですか?』
「転移陣を作ってみる……墨とかはあるし、私達だけなら小さなものでも通れるはずだよ!」
メルはそう言うと荷物の中から墨とペンを取り出したのだった。




