362話 開かれた門……
光を帯びていく魔法陣。
どうやら魔法は成功したらしい。
それは神秘的な光で見ている者は魅了された。
しかし……感心する声が上がる中に悲鳴が上がる。
メルはびくりと身体を震わせ悲鳴の方へと顔を向けた。
するとそこには……。
「……え?」
倒れる兵士、その首には何か刺さっていた。
見覚えのあるそれを見てメルは――。
「――っ!!」
抑え込んでいた黒い感情が膨れ上がるのを感じた。
「メル!!」
だが、そんな彼女に対し声をかけたリアスは――。
「早く行け!! それは一人通ったら効果が無くなるんだろう!?」
リアスの言葉は聞こえていた。
しかし、それよりもメルはロクを殺した者が近くに居る!
そう思う事で冷静さを欠いていた。
そして、その犯人らしき影を見つけた。
兵士の格好をした男は手に何か筒の様な物を持ち、ニヤリと笑みを浮かべると背を向けて走り出す。
「――」
メルはその人物を追おうとし、大地を蹴ろうとする。
しかし――。
「きゃあ!?」
突然身体は浮き、彼女は魔法陣の方へと倒れてしまった。
一体なにが起きたのか? 困惑していると一人の青年が笑みを浮かべているのが見えた。
「君はそっちだ! 頼むぞ」
……王の使いとして一緒に来てくれたアベルだ。
彼はそれだけをメルに伝えると怪しい兵士の方へと目を向ける。
「アイツは俺が捕まえる」
その表情を険しい物へと変え、青年はそう言うと駆け始めた。
メルは慌てて魔法陣の外へと出ようとしたが、もう無駄だ。
彼女の身体は光の中へと消え――。
「リ、リアス!!」
「メル……頼んだぞ」
頼れる仲間の名を呼んだが、彼はそう言い残すだけだった。
メルは光の回廊へと導かれた。
戻ろうとするも魔力が十分じゃなかったのか、入口は無くなっていた。
このままでは回廊の中に閉じ込められる。
そう判断した彼女は先へと進む。
胸の中はざわついていた。
「…………」
怒り、憎しみは消える事無く、勿論仲間達に対する不安があった。
相手はリアスさえ知らない毒を使い、その毒はライノさえ治せない。
大丈夫だろうか?
だが、彼女は前へと進むしかない。
そんな、わずらわしさを感じつつリラーグへと急ぐ……。
やがて回廊の出口が見えた。
だが、メルは嫌な予感を感じ……後ろを振り返る。
「……う、嘘……」
メルは信じられないものを見た。
後ろから闇が迫っているのだ。
回廊は徐々に消えていき、メルは恐怖に顔を染める。
急いで出口に向かわなければこのまま閉じ込められてしまうだろう。
「あ、あともう少し!!」
出口に辿り着く……そこまで来て、メルは足を速めた。
しかし――。
「――え?」
何かが割れる音が響く……メルは嫌な予感と共に冷や汗をかいた。
しかし、立ち止まる訳にはいかず彼女はより一層足に力を入れ光の回廊を駆ける。
だが――彼女の願いは無情にも届かず。
「駄目駄目駄目!! まって、待って!!」
ヒビが出口の方へと向かって走り出した。
そして、空間は割れ……。
「あ……」
出口は光を失った。
残ったのは闇に閉ざされた回廊。
「嘘……」
メルは呆然としつつ出口のあった場所を探る。
しかし、そこにあったはずの出口は見つからず彼女の手は空を切った。
「なんで……魔法は確かに」
発動した、もし何か問題があったのなら魔法は発動しないはずだ。
だが、魔法は確かに発動し、問題なくここまでこれた。
だというのに……魔法は失敗した……。
「ど、どうしよう!?」
呆然といしていたメルだったが現状に気が付いた彼女は慌てて辺りを見回す。
だが、ある物は暗闇だけだ。
「で、出れないの?」
暗闇の中を歩くメル。
だが、出口は見つからないのだった。
「そんな……」
メルは当然不安になりその場にうずくまる。
だが、彼女を慰めてくれる人は何処にもいない。
彼女はただ一人その暗闇に捉えられてしまうのだった。
レライの魔法陣前。
リアス達は消えた光に不安を覚えていた。
「なぁ、これおかしな消え方しなかったか?」
アベルは魔法陣を指差しそう告げる。
「分からない、だけど普通の魔法の消え方じゃない」
リアスはそう言うと魔法陣へと手を添えた。
「おい! 分かるのかよ!?」
シュレムは彼に聞くが、当然彼が知る訳が無い。
リアスは首を横に振った。
「だけど、調べてみた方が良い……今の消え方はおかしい!!」
リアスはそう言うと魔法陣を睨み……かつて結界を解いた時と同じように魔法陣を調べはじめた。
「手伝うわ」
ライノはそう言うと同じように魔法陣を睨む。
アベルは彼らの行動を見て何かをしなければ、と考えたのだろう……。
「俺は城に戻って魔法に詳しい奴を呼んでくる」
と走り始めるのだった。




