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私の夢は冒険者だったのにっ!!  作者: ウニア・キサラギ
16章 失われた仲間
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361話 転移門の元へ

「どうぞ……」


 男はそう言うとそれ以上は何も口にすることなく道を譲ってくれた。

 アベルはそれを見てメル達へと向き直ると。


「さぁ、ついて来てくれ」


 と口にする。

 彼の後を追うメル達だったが、先程の男性が気になったのだろう、彼の方へと目を向ける。

 すると醜く歪めた顔を隠すことなくメル達を……。

 いや、アベルを睨んでいるようだ。


「あ、あの……」

「気にするなあの人はいつもああだ!」


 笑いながらそう口にした彼は一人の兵士へと目を向ける。

 そしてその兵へと近づくと……。


「なぁ……」


 声をかけた。

 すると彼はびくりと身体を震わせアベルの方へと向いた。


「ア、アベル様!」

「酷い顔だな? ちゃんと休んでるか? それに食事は?」


 彼の質問に無言という回答を返す兵士。

 それで十分なのだろう。


「俺が許可する……休め、そうだな水浴びでもした方が良い、すっきりした方が疲れも取りやすいだろう」

「で、ですが……この場を任されているのは……」


 アベルではない。

 そう言いたいのだろうが、言うことが出来ず彼は口をもごもごとさせる。

 そんな彼に対し笑みを浮かべたアベルは。


「気にするな、今は王の使いとして来ているからそれぐらいの権利は多分あるだろう。それに、転移陣を護衛する人間は此処にいるそれなら問題はないだろう?」


 とアベルはメル達へと目を向けた。

 当然兵は顔をしかめた。

 何故ならそこに居るのは転移陣を守っている理由である人達が居たからだ。

 しかし――。


「彼女達もまた王の願いを聞いて動いてくれている。信頼に足る人物だ……」


 アベルがそう言うと兵は……ようやく首を縦に振った。


「よし、じゃぁ休め……他の奴にも伝えた方が良いな、掲示板へと通知を出しておくよ」

「あ、いえ、そこまでしていただくのは……」


 申し訳なさそうにする兵を見て、メルは疑問に思った。

 先程の兵士も目の前の兵士もふらふらだ。

 確かに、国の危機となれば一大事。

 しかし、こんな風になるほど疲れていたら、いざという時に何も出来ないだろう。


「あの……だったら、此処で一筆書いて、掲示板に貼り付けた方が早いと思うよ? ライノさんや私なら空からでも行けるし」


 と提案するとアベルは嬉しそうに笑う。


「そうか、なら頼むよ」


 そう言って彼は懐から羊皮紙とペンを取り出し、さらさらと書いて行く。

 その内容がたまたま目に入ったメルは唖然とした。


「今日は皆休み、王の使いアベルよりってこれで良いんですか!?」

「何も面倒くさい事を書く必要はない、休む事だって仕事だ」


 確かにそうだろう、だが、釈然としないメルは引きつった笑みを浮かべる。


「ま、まぁ……休ませるのは大事だな」

「分かりやすくていいと思うぞ?」


 リアスも顔を引きつらせつつも同意している中、一人首を傾げるのはシュレムだ。

 彼女はアベルの方へと向き。


「色々理由書くのは面倒だもんな! 休むなら休むでいいと思うぜ!」

「そうだな!」


 二人は頷き合う。

 何故か二人は気が合う様だ。


「……な、なんか、シュレムが二人いるみたいだよ」

「そうだな……だけど、本当にこの人が騎士団長候補なのか?」


 メルとリアスはこそこそと話し、その様子を見聞きしたライノは呆れたように笑いつつ。


「失礼よ? 王様に信用されているのだから、きっとすごい人なのよ」


 と口にする。

 メル達は頷き彼を見るが……。


「それじゃ! この羊皮紙を掲示板へと貼りだそう!」


 彼はそう言うとライノへと羊皮紙を手渡そうとするが、兵士は慌てて止めた。


「どうした?」

「い、いえ、皆様は何か用事でここにいらっしゃっているのですよね? なら私が貼っておきます。宿舎の所ですし、それ位なら休めと言う命令にも逆らった事にはならないのでは?」

「そうか、ならそうしよう」


 彼の言葉を否定するつもりはないのだろう、アベルは兵へと羊皮紙を託す。

 そしてメル達に向かい。


「頼む、早く皆を安心させて休ませたい……すぐに事を済ませてもらえるかい?」


 と頭を下げる。

 メルはそれを見て慌てて首を縦に振った。

 勿論そのつもりだ。

 しかし、いかにナタリアの孫娘と言っても彼女の転移陣を起動出来るか、出来ないかはやってみない事には分からないのだ。

 だが、それを言ってしまえば不安が更に大きくなる。

 メルは――。


「分りました!」


 と答え、アベルの後をついて行く。

 仲間達も居る、きっと大丈夫だと自分に言い聞かせて……。


 辿り着いた転移陣は光を失っていた。

 役目を終えたソレを見つめていたメル。

 やがて、アベルが話を通してくれたからだろう兵士たちは転移陣から離れてくれた。

 メルはそれを確認し一歩ずつ転移陣へと近づく。

 そして、右手をかざし……。


「我望む……目的の地へと続く道を、繋がれし地への扉へと我らを送り賜へ…………ヴェークポールト」


 静かに、だが、力強く……魔法を唱えるのだった。

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