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私の夢は冒険者だったのにっ!!  作者: ウニア・キサラギ
16章 失われた仲間
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360話 アベルという青年

 王も忙しいだろう。

 しかし、今回の事は国に関わる事だ……。

 メル達と共にアベルと言う男性が来るのを待ってくれていた。

 そして……それから暫く経ち。


「申し訳ございません、お待たせしました!」


 先程の女性が大慌てて戻って来た。

 横に居るのはメルの母フィーナを思わせる金髪の魔族(ヒューマ)の少年。

 メル達の横を通り過ぎる時に、優し気な笑みを浮かべていた。

 彼は男性だというのに長い後ろ髪を紐でひとくくりにしている。


「おいおい、男が髪を伸ばしてるぞ?」


 シュレムはそう言うと聞こえてしまったのだろう、アベルと言う青年は振り返って来た。


「髪を切るのが面倒なんだ」


 彼はそう言うと一行は唖然とした。

 ただ面倒……それだけで髪を伸ばすだろうか?

 ましてや、長い髪ならそれだけ手入れが面倒になる。

 それを知るメルは……。


「え、えっと……」

「ごめんね、この人いつもこうなの……みっともないから私が手入れをしてるの、切ろうか? って言っても聞かなくて」


 側近の女性は困ったように笑う。

 しかし、アベルと言う男性は気にした様子もなく。


「いや、リユが手入れしてくれるから切る必要はない、どっちにしろ髪がぼさっとしてたら、みっともないって始まるんだろ? なら今のままでいい」


 本当にこの人物がアベルと言う人で王の信頼に足る人物なのだろうか?

 メル達は不安になり王へと目を向ける。

 すると王シュタークは咳ばらいをし……。


「ア、アベルよ、話はもうリユから聞いているだろう? この者達を転移陣の元へと案内してくれないか?」

「承知しております、その任受けさせてもらいます」


 丁寧なやり取りをするアベルに少し不安は和らいだメルは王が一通の手紙を取り出すのを見た。


「ではこの手紙を持って行くがよい」


 王から手紙を手渡されたアベルはそれを懐へとしまい込む。

 そして、メル達の方へと近づいてくると。


「それじゃ早速行こう」


 と告げてきた。


「は、はい!」


 メルは頷き彼の言葉に同意した。


「そ、そうだな……なるべく急いだ方が良い」


 呆然としていたリアスも現実に戻り、頷く。

 そう、彼が言う通りなるべく急いだ方が良いのだ。

 誰だかは知らないがレライを潰そうと考えている人間がいる以上、国の危機というだけではない。

 もしかしたら、いや……もしかしなくてもそこに住む人々は勿論、周りの国にも被害が出るのだから。


「そうだね、急いでママ達に伝えないと!」


 メルは再び頷くと尻尾を大きく揺らす。

 そして、王に頭を下げた後、部屋を後にした。


 メル達が向かう先は一つ。

 転移陣へと向かっている。

 メルの祖母であるナタリアが使った魔法の転移だが、もしその効力を失っていてもメルが魔力を注げば使えるだろう。

 だが問題は……。


「ちゃんと使わせてくれるかな?」


 そう、確かに王に一筆を貰い、頼りになる騎士を派遣してくれた。

 しかし、それだけでメル達の疑いが晴れるとは言いにくい。

 だが、そんなメルの不安はあったとしても王の命だ通してもらう事は勿論、使う事も出来るだろう。

 ただし、そこに居る人々がどう思うかは分からないが……。


「大丈夫だ、俺に任せて置け!」


 アベルと言う青年は自身があるのだろう、そう言うとにっこりと笑って見せた。

 確かに彼は王の騎士だ。

 きっと何とかしてくれるだろうと思いつつ、メルは不安に思う。

 しかし、そんな不安を抱えながらも歩いていた事で転移陣のある港についてしまうのだった。


「ア、アベル様!」


 兵はメル達を見て訝しげな瞳を浮かべる事はしなかった。

 寧ろ、アベルを見ると驚きつつもその表情を柔らかい物へと変えた。


「ご苦労さま、所でこの手紙を読んでほしいんだが……」


 彼はそう言うと手紙を手渡す。

 すると、それが誰からの手紙だか、分かったのだろう……。


「ま、待ってください! 今隊長にお渡しします!」


 そう言うとふらふらとした足取りで手紙を持ってテントの方へと向かっていく。

 暫くすると出てきたのは初老の男性だ。

 彼はアベルの方へと目を向けた後、すぐにメル達へと目を向ける。

 そして……。


「これはこれは……アベル殿とあの女性のご息女様ではありませんか」


 とわざとらしい態度で言葉を発した男性。

 彼はメル達を睨みながら会話を続ける。


「王は貴方達を通せという事ですが……どういったご用件で?」


 王様は用件を書いてくれなかったのだろうか?

 そんな疑問を感じつつメルは説明をしようと口を開こうとする。

 しかし、それを手で制したアベルは……。


「内容は手紙の通りだ、俺が持ってきている手紙に王の刻印がある以上それは偽物なんて事はありえないだろ? さ、問題は無いはずだ通してくれ」

「そうはいきませんな、我々は此処を守るのが仕事……これもまた王より――」


 初老の男性はアベルの言葉に反対するが、アベルは引き下がらず。


「さっきの兵士、目の下にクマがあったな、走って行った時もふらついていた」

「た、確かにそうだね」


 それはメルも不思議に思っていた。

 何故そこまでふらつくのか疑問だったのだ。


「それがどうしました?」


 しかし、男性は当然の様な態度で切り返す。


「あれは寝てないな……寝ずの番って所か」


 リアスはそう口にするとアベルは頷く。

 確かに寝ていないのなら目の下のクマもふらふらとした足取りも説明がつく。


「兵は休ませないといけない、それこそ王から賜った大事な戦力だ。だからこそ、彼女達の潔白を証明し、現状を解決する必要がある」


 アベルがそう言うと男性は顔を歪め一歩後ろへと下がるのだった。

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