359話 レライとの結託
「じゃぁ早速!!」
メルはそう言うと転移陣へと向かおうとする。
しかし――。
「待て!」
レライの王であるシュタークは止めた。
メルは当然なぜ? と顔を傾げる。
たった今、母達に話をした方が良い、そう話をしたはずだ。
「君達だけでは疑われる……私の兵を一人連れて行くと言い、何信用のたる人物だ。君達の潔白を示してくれるだろう」
そう、王は何も転移陣を起動させるのを駄目だと言った訳ではなかった。
ただ、メル達だけでは疑われてしまう、そう考えた彼は疑いを晴らす手段として兵を貸してくれるというのだ。
「それは嬉しいけどな、疑いを晴らすなんてどうやって……」
リアスはシュタークに問う。
すると彼は……横に居た魔術師らしき女性にペンと羊皮紙を持って来させた。
それへと何かを書き込んだ後、蝋を垂らし指輪を押し付ける。
国の紋章が入ったそれを持ち。
「これを持って行ってもらう」
「それなら、オレ達が持って行っても大丈夫じゃないか?」
シュレムの訴えは最もだとはいえる。
しかし、メルはゆっくりと首を振った。
理由は簡単だ。
「駄目だよ、簡単に作れるから……」
メルが言った通り、指輪など技術さえあれば簡単に作れるからだ。
そして蝋は簡単に手に入る。
色がついていようが匂いがついていようが、手に入れようとして手に入れる事は可能だ。
つまり、それは偽装しようと思えばできるという事だ。
当然それなりの金や道具、材料が必要になるが……今、疑われているメル達の立場から言うと……。
親、つまりユーリ達の力を借りれば容易い事だろう。
それはつまり、例えここで受け取って転移陣を守る兵の所へと言ったとしても王の印を偽ったと考えられてもおかしくはないのだ。
王は確かにメル達の事を信頼してくれているみたいだが、兵全員が同じとは考えづらいだろう。
つまり、それが本当に王の物であると証明する人物が必要だ。
「そういう事だ……だから、私の信頼できる兵へとこの手紙を預ける。君達はその兵と共に転移陣の元へと向かい、転移の魔法を使う」
メルは彼の言葉に頷くと……言葉を続けた。
「そしてママ達にこのレライで起きた事を伝える……ロク爺が殺されたんだ……きっと、ううん絶対に動いてくれる」
メルはそう言うと……見えない敵に怒りを覚えた。
例え母達の手を借りたとしても……それでも平和を願った血の繋がらない家族とシュターク王……彼らの想いを踏みにじる敵を討とうと。
優しき少女は秘かに誓い、その決意は瞳の中に灯る。
怒りや憎しみはある。
しかし、仲間達や思いを共にする者達のお蔭もあり、それに支配されるのではなく……。
メルは先程まで感じ無理矢理抑えていた黒い感情はいつの間にか彼女の中で小さくなっていた。
それよりも、エスイルを救わなければという気持ちと同等と言って良いだろう。
この街を救わなくてはと……考えたのだった。
「ロク爺は私達に王冠を託してくれた……それはきっと……」
今はない国。
だが、それは嘗てロクと言う老人が仕え、支えてきた国だ。
その国の宝を守り、新たな国レライをも支えた彼……その彼の最後の言葉。
そして手元にある物を見つめメルは――。
「この街を守る為なんだ……絶対に、守らないと!!」
改めて口にした少女は王へと向き直り。
「お願いします」
と頭を下げました。
すると、王は頷き……。
「今の話をアベルへと伝えるんだ……彼女達はユーリ殿の仲間であり、家族だ信頼に足る人物だと協力を惜しまんように、とな……」
「はい! 畏まりました」
彼女は頷き、その場から去る。
恐らくはそのアベルという男性の所へと向かったのだろう。
「そのアベルって人はどんな人なんだ?」
「うむ、立派な騎士だ……だが、彼は剣を好まない」
リアスの言葉に王はそう答えた、王が信頼するからには立派な騎士には違いないだろう。
「剣を好まないって……どういうことだ? 魔法を使うのか?」
今度はシュレムが疑問を浮かべる。
すると王は首を横に振った。
「いや、確かに使う、使いはするが……拳を使う」
拳と言う言葉でメルが連想したのはバルドだ。
バルドは確かに拳を使い戦う戦士であり、心強い家族の一人でもある。
そんな彼と同じ戦い方をするのだろうか? そんな事を考えていると……。
「まだ若い騎士だが、心優しく信頼も厚い……その内騎士団の団長を任せる予定の男だ……君達、特にメル殿……リラーグの龍に抱かれる太陽、そこの冒険者の筆頭となるであろう君には是非とも会わせたかった」
「ひ、筆頭って私まだ正式な冒険者じゃないです……」
思わず顔を赤らめたメルだったが「そうなればいいなぁ」と考えるが浮かれている場合ではない! とも考え……。
「とにかく、そのアベルって人と合流したら……早速転移陣の所に行こう!」
メル達はアベルという人物が来るまでその場で待機するのだった。




