358話 陰謀
メル達は彼の言葉を待つ。
だからこそ、だからこそ何なのだろうか? それは簡単な理由だった。
「だからこそ、彼女が裏切った……その理由が必要なのだ」
「彼女達……ユーリママ達がって事ですか!?」
母達が裏切るはずがない。
それはメルには信じられない事だった。
しかし……。
「確かに、ユーリさん達が裏切る理由があれば……いや、実際にはあんた達が裏切る口実があれば……簡単にお互いを潰し合わせることが出来る」
リアスは思いついた事を口にし、メルはそれを聞き呆然とした。
確かにその通りだと思ったからだ。
事実、メル達はシュタークが彼女達が襲われる事を心配した。
そして、街に入れないようにした。
彼女達を襲わせないためと言えばそうだろう。
しかし、それだけでは何も解決できない。
確かに街中で襲われる心配はなくともロクは殺されている。
それは何時でもメル達を襲えるという事だ。
彼女を達を襲った後は話は簡単だ……。
後はメル達の死をリラーグへと伝え、そして……それはレライの仕業だと伝えればいい。
ただそれだけでリラーグは……いや、龍に抱かれる太陽はレライへと牙をむくだろう。
「じゃぁ、やっぱりロク爺は此処の人が殺した訳じゃなくて最初から私達を利用として……」
わなわなと震えるメル。
しかし……。
「許せないのは私達も一緒だ。しかし、今は彼の残してくれた託してくれたそれを守らなくてはならない」
王はそう言うとシバの方へと目を向ける。
「かつての国の民よ、そして今のこの国の民でもある君達にも協力を頼みたい」
「分っている、なぁ……ワシだって旧友を殺された、最早ご神体をと言っている場合ではないなぁ」
彼はそう言うと背化中に背負っていた大きな盾をシュレムへと手渡した。
「爺さん?」
「お嬢ちゃんは盾を使わないとなぁ! これは必要だろう? なぁ」
「良いの?」
メルはシバへと尋ねるが、彼はしっかりと頷き。
「もうすでに試練は終わっているんだ、約束通りナトゥーリッターはおぬしたちの物だ、なぁ」
彼はそう言うとニヤリと笑う。
「さて、話を続けよう」
王シュタークはそう言うとメル達に視線を向けた。
「まず君達にはこの状況をリラーグへと伝えてほしい、そしてシバ殿は先程言った事を頼む」
頷くメルとシバ。
「分かった……でも……」
風の精霊であるアリアは今この場に居ない。
すぐに伝える事は難しいと考えたメルは言葉を詰まらせた。
だが――。
「なぁ? そういやまだ転移陣は生きてるんじゃないか?」
「転移……陣……」
シュレムの言葉を繰り返すメル。
彼女は暫くぼーっとしていたがすぐに表情を変えた。
そして、王シュタークの方へと目を向けると……。
「今は兵達があの魔法陣を見張っている。しかし……光は失われているぞ?」
と口にした。
「じゃぁ、駄目って事なのかしら?」
ライノは落胆するが、メルは首を横に振る。
確かに一見駄目に見えるかもしれない。
だが、転移陣は最初に込められた魔力の分だけ起動する訳ではないのだ。
「移動するならまた魔力を注ぎ込めば、使えるはずだよ」
その事を知るメルは仲間達へと、王へと告げる。
「だから、魔法陣を使おう……それでママ達に報告をするの」
だが、あの魔法陣には問題がある事も知っていた。
それは簡単な事だ。
「だけど、あれは私の魔力じゃ一人が限界……それ以上は無理」
そう、仲間達を全員送るにはメルの魔力では足りない。
いや、全ての魔力を籠めれば二人三人は移動が出来るだろう。
しかし、余力を残しておく事を考えておかなければならないのだ。
「そうか、なら……」
王シュタークは頷き……シュレムの案に乗るつもりのようだ。
そして……。
「他の魔法使いならどうだ? 多数集めればそれだけ魔力も」
「転移陣は調整が難しいの、だから便利な魔法でも広まってないんだ」
確かに他の魔法使いが居れば魔力は足りるだろう。
しかし、そうなれば失敗する可能性が多い。
「失敗したら、二度と戻れないかも……」
嘗てメルは祖母ナタリアより聞いた事があった。
転移陣は危険な物だと……だから、使う際には細心の注意を払わなければらないと……。
もし、失敗すればこの世界に居られなくなるかもしれない。
「だとしたら、魔力はメルちゃん……」
「それに行くのも信頼があるメルの方が良い」
ライノとリアスはそう口にし……周りの者達も一斉に頷くのだった。
メルはそんな彼らの顔を見回し……。
「わ、私?」
自分へと指を向ける。
「他に誰が居るんだ? オレでも良いけどさ、その詳しい話は出来ないぞ?」
「それにメルの親に話を伝えるんだ、メルの方が良いだろう?」
二人の言葉にメルは大きな瞳を丸める。
確かにシュレムでは詳細を伝えることは難しいだろう。
だが、リアスが伝えに行っても問題は無いはずだ。
母ならきっと手を貸してくれる。
そう思っていた……しかし、転移陣を使う以上。
もし、失敗したらという不安がメルにはあった……だからこそ、彼女は首を縦に振るのだった。




