357話 疑い……
詰め所で案内を待つメル達の元へと駆け付けたのはシバだった。
彼はロクが死んだことを聞き、慌てて駆け付けたようだ。
どうやら、今回の件は彼が仕組んだことではない。
なら、一体誰がそんなことをしているのだろうか?
城に着いたメル達はすぐに王の元へと案内をされた。
ようやくレライ王シュタークと再会し、すぐに現状を話し始める。
「その話はシバから聞いている。王冠も盾も君たちの自由にすればいい」
「……え?」
メルはシバの方へと目を向けた。
すると、彼は優しそうな笑みを浮かべている。
「だが、キミが国を復活させようとたくらんでいる……そう噂が流れてしまった。民達は嘗ての戦を思い出し震える者、何が起きるか分からず怯える者がいる」
彼はそう言うと溜息をついた。
軽率な行動だった……メルはそう気づくが、もう遅い。
「だが、守り人を頼んでいたロク殿が死んだとなれば話は別だ」
「…………」
王までそう口にするという事はロクは余程信頼されていたのだろう。
しかし、そんな彼はもう居ない。
だからこそ、メルは複雑な気持ちになる。
もし、自分があそこに行かなかったら……。
きっとロク爺いは死んでいなかった。
そう思う気持ちがあるのだ。
だが、それはあくまで予想に過ぎず。
ましてや、事が起きてしまってからはどうにもできない。
だが……。
「一つ聞きたい、何故あの爺さんが狙われた? 単純に王冠を守る為ならメルを狙えば良いはずだ」
「……ああ、その事だが」
リアスの問いに王は頷き答える。
「恐らく、国の者がロクを討つという事は考えにくいだろう」
「……え?」
メルはその言葉が予想外であり、驚く。
しかし、王の言葉は納得をせざる得ない物だった。
「何せ、この国はもう戦争から離れている……平和な暮らしをしていたのだ、わざわざ火種を撒き散らし燃やす愚か者は少ないだろう」
「どういう事だよ! 事実ロク爺さんは!!」
シュレムは攻めるようにシュタークに尋ねる。
しかし、レライの王はあくまで冷静だった。
「ロク殿は君達のなんだ? フィーナ殿の騎士であり、恩人……家族ではないのか?」
「それは……」
メルは彼の言葉に頷く。
「なら、その家族を我々が討ったとなれば? 流石のユーリ殿も我々に牙をむく……ましてや君はユーリ殿の血縁者……君が死んだり危険な目に遭ったとなればこの国を攻め落とす理由がリラーグにはある」
そう、いくら王国となって若いとはいえ、他の国を凌駕する戦力を持つのがリラーグだ。
多くの冒険者が手を貸さなかったとしても、リラーグ、いや世界の誇る冒険者の酒場……龍に抱かれる太陽の者達は違うだろう。
そして、レライの王シュタークは一度彼らに命を救われており、呪いさえもものともしない力を目のあたりにしているのだ。
つまり、レライはその原因になりかねないロクやメルに危害を加える気が無いと言ってもおかしくはない。
それに、レライ側にはリラーグを敵に回して良い事なんて何もないよね?
こういった時にまず手を貸すのはリラーグだし、支援物資だって送られるはず……。
完全な独立を考えたって、現状じゃ食料とかの問題はすぐに解決できないよ。
やっぱりどう考えても今のままが一番良いはず……。
「じゃぁ一体誰なのかしら? 私達を互いにぶつけて旨味がある人って事よね?」
「…………エルフか?」
リアスはそう口にするが今度はメルが首を横に振った。
エルフは確かに双方がぶつかってくれれば楽だと思うだろう。
しかし……。
「そんな事をしてエスイルの意識が邪魔をしたら面倒だよ……ただでさえ私が逃げる時にエスイルは助けてくれたんだから」
そう、エスイルを完全に掌握していない彼女は今はきっと少年の意志を殺すのに必死だろう。
だからこそ、エスイルの反発を受けるような事は避けるべきだ。
自分だったらそうするだろう。
メルはそう考えた。
……この事件に例えエルフが関わっていたとしても、それはエスイルを乗っ取るその前に何らかの手段で手を出して来たというのは考えられるが……。
そうだとしても今はすでにエスイルを乗っ取っているのだ……動けるわけがない。
その可能性が高いのだ。
「じゃぁ、一体……」
メルの言葉にリアス達は考え込む。
しかし、それで分かるほどの事ではない……。
「これはエルフの仕業ではないだろう……我々レライを孤立させるためだ」
そんな中、王シュタークはそう口にした。
「レライを孤立?」
メルが訪ねるとシュタークは頷いた。
「だから、君達を街には入れられんと思っていた……罪もない少女達が反乱の首謀者とされ、街中で襲われる可能性があると分かっていたからな」
彼はそう言うと深くため息をつきゆっくりと語り始めた。
「まず、レライを潰そうと考えてるものが恐れるのは他国の介入だ……それもリラーグ……かの国には私の友人がいる。君の両親だ……彼らが居ればまずレライを潰すなどと言う事は厳しいだろう」
「そうだな! ユーリさんだけじゃないぜ! エロ師匠だっている!!」
胸を張って口にしたシュレム。
普段は変態だが、シュレムの師であるケルムはいざという時は頼りになる。
母ユーリも言っていた事だ。
それが本当であればこんな時にこそ、その力を発揮してくれるだろう。
「……エロ……とにかく、彼らの合流を避けるべきだ……そう考えてもおかしくはない」
それは先程メルがレライがリラーグを敵に回す意味が無いと考えた理由と同じだ。
彼女が頷くとリラーグ王もまた頷く。
「しかし、そう簡単に援軍を断ち切ることはできないだろう。何故なら私は命を救われた彼らを裏切る気はない……そして、ユーリ殿にはこの国にあった呪いを提供した……いずれは世界を脅かしたであろうタリムの王を殺すために……」
彼は力強くそう言うと……。
「でも実際は違うだろ……レライやあんたが、じゃなくて俺達がって疑いが出てるんだ街の人がそう簡単に割り切れる事じゃない」
リアスの言葉はまさにその通りだった。
今疑いが出てるのはメル達だ。
シュタークがリラーグを……ユーリ達を裏切ったという疑いではない。
しかし、シュタークはだからこそ……と呟いた。




