355話 試練の行方
試練の洞窟の中には謎かけが幾つもあった。
ライノが空を飛び見つけたでっぱりの近くに行くとシレーヌが喜び始める。
それはつまり、水の精霊である彼女だからこその反応なのだろう。
メルはそう思い魔法を唱えるのだった。
十分に警戒し、放たれた魔法はぐらついているでっぱりを取り除く。
するとそこから溢れ出たのは水だ。
ウンディーネ達がまるで泳ぐように水の中に居た。
彼女達だけではない、いつの間にかフラニスやシルフも近くに居たのだ。
そして、流れ出た水は小さな川を作っていき、下へと落ちていく……。
すると……。
「わぁ……」
メル達は歩いている時は気が付かなかったが、下には溝があったのだろう。
そこに水が溜まっていき模様を作っていく……。
それは神秘的なものでメルは思わず感動の声をあげた。
「すごいな……」
リアスもまたそれを見て感動をする。
いや、感動をしない物なんていないだろう……それは自然が生み出す芸術の様な物なのだから。
「あら?」
そんな中ライノは首を傾げると翼を広げ下へと降りていく、メル達は慌てて階段を降り彼を追うと……。
「旦那! どうしたんだ?」
「いえ、これ……」
どういう仕掛けなのかは気になった。
しかし、水が溜まっていく場所は徐々に下へと降りて行き、部屋の中心には円形状の何かが徐々に上へと上がっていく。
「何だろう?」
メルは気になり覗き込んでみるが、本当に徐々に徐々にとゆっくりだ。
「もしかして、水が早くたまった方が良いんじゃないか?」
シュレムの言葉に頷いたメルだったが魔法を唱えようとしてすぐにやめた。
理由は簡単だ。
わざと魔法を失敗すればいい、しかし、これだけの大掛かりな仕掛けだ。
急に溜めてしまえば何らかの弊害があるのでは? と考えたのだ。
そして、流れてくる水は決して少なくはない。
メルはそれが貯まるのを待つことにした。
暫くし、柱の様になっていったそれは中心に穴が開いていた。
そこにあるのは王冠だ。
酷くくすみ、最早、王冠としての見た目は良くない。
しかし、それは紛れもなく王冠で……メルはそれを手に取った。
「これが試練を終えた証?」
そう呟くとくすんだ王冠をまじまじと見てみる。
決してきれいとは言えないそれを手に取ったメルは暫く黙っていたが……。
「戻ろう!」
目的は果たしたと考えたのだろう、街へと戻る事を提案した。
王冠を手に入れたメル達は街へと急ぐ。
それをシバへと見せ、盾を手に入れることが目的だ。
門へと辿り着くのは簡単だった。
魔物に襲われることも無く、彼女達はレライへと辿り着いたのだ。
しかし……。
「止まってください!」
兵士にメル達は止められた。
外出の許可を得ているメル達は別に焦る必要はない。
彼に事情を伝えるのだが……。
「申し訳ございませんが、貴方達を入れる訳にはいきません」
「な、なんで?」
予想外の言葉にメルは疑問を投げかける。
事実、何故駄目なのかが分からないからだ。
「おかしいだろ? 外出の許可は出てるはずだ……街に入る為の金を渡せば良いのか?」
リアスは尋ねるが、門兵は首を振る。
「どういう事だよ!!」
シュレムが掴みかかると門兵は慌てたように答えた。
「申し訳ございません、今街は混乱しています! 貴方達が戻ったら何をされるか……」
「街が混乱ってどういう事?」
一体なにがあったのだろう? そして、その理由にメル達が関わっているのは何となくだが理解出来た。
その理由は街に入れないという事だけではない。
メル達が何をされるか分からないと言った事だ。
つまり、門兵はメル達を追い出したいわけではなく、今は街に入れたくないというのが分かる。
だが、何故そんな事をするのかが分からないのだ。
「実は、貴方達が今は亡き森族の街を作り直そうとしてると……噂があるのです」
「そ、そんなことしないよ!」
するつもりも無かった。
何故ならリラーグとレライは友好国であり、レライ国王は母ユーリと仲が良い。
彼を裏切るような行為は母をも裏切る行為と言って良いのだ。
そんな事をメルがするはずも望むはずも無かった。
だが、門兵が口にしたことは嘘とも思えなかった。
「メル、もしかしたら試練の王冠じゃないか?」
「盾を手に入れる為に取ってきたこれ?」
メルは袋に入ったそれをリアスへと示す。
すると彼は頷いた。
「盾は元々この地にあった物、つまり森族の宝だろ? ……そして、王族であればそれを持っていても認められる。そう言われたよな? だから受けさせられたのは王の試練だった」
「つまり、メルちゃんは王様に仕立て上げられたって事?」
ライノがそう言うとリアスは頷き……。
「そして、事実を知らない奴がメルを止めようとして……暗殺者をけしかけた」
その後の言葉は飲み込んだ。
口にするまでも無い、そう思ったからだ……。
「じゃぁ、ロク爺はそんな事の為に殺されたの!?」
メルは思わず叫ぶ。
すると……。
「こ、殺された? ロク爺と言えば町の外にいるご老人でしたよね?」
メル達が頷くと彼は頭を抱えた。
一体どうしたというのだろうか?
「まずい、まずいぞ……彼は自分から王に申し出てくれたのです! 今の平和が続くように間違いを犯さないように、王家の血筋を持ちこの街へと火の粉を飛ばす者を生み出さない為にあそこを見張ってくれていたんです!」
「…………え?」
メルは目を見開き尻尾と耳をびくりと動かした。
なぜなら、彼が伝えてくれたのだから……。
メルに試練の場所のありかを……。
「貴方達が彼に何かをする訳が無い、それは王の友人の娘だという事でだけではない、彼はあなたの母親の恩人だと聞いているからです……ですが亡国の血を引くものは貴女だけではない……」
それはメルにとって初耳だった。
少なくとも母フィーナの方に兄弟はいなかったという事は知ってはいた。
だが、彼が嘘を言っているようにも見えないのだ。
「これは……由々しき事態だ! 誰か、王に取次ぎを! メアルリースさんがロク爺の死に際を見た! 彼女は守り人から託されている! すぐに街に入れるべきだと!!」
彼は扉の小窓を開けると中に居る兵へと伝える。
そして、メル達に頭を下げると門の隣にあった部屋へと案内をした。
「守り人は殺された、次に狙われるのは貴女達かもしれない……この場は此処で身の安全を確保してください」
「あ……は、はい」
突然態度を変えた門兵に圧倒されながらメル達は案内されるまま詰め所へと入るのだった。




