352話 別れ……
何も起きず夜は過ぎていく……。
このまま何も起こらないでほしい。
そう願うメルだったが……朝早く来た来訪者によりその淡い期待は砕かれてしまう。
突然現れた誰かによってロクは殺されてしまったのだった。
ロクは死にメル達は彼を弔う事にした。
丁寧に土に埋めた後、木の板で墓を作ったのだ。
「ごめんねロク爺……今はこれだけ……」
老人に謝罪を告げたメルとその仲間は家の中へと向かう。
「この家の地下に試練があるんだな?」
リアスはそう言うと床を見る。
しかし、床には特別変な所は見つからない。
「一体どういうことなのかしら?」
「多分隠してるんだと思う……簡単に見つかったら意味が無いし……」
メルはそういうと床を調べる。
だが、やはり何かがあるという訳ではない。
しかし……。
『メル!! この下に水がありますよ!』
シレーヌはメルの肩に乗り、そこへと指を向けた。
「み、水?」
メルが疑問を浮かべて彼女の言葉を繰り返すとリアスもまた首を傾げる。
「どうしたんだ?」
「シレーヌがこの下に水があるって」
リアスの質問に答えるとライノは……。
「ここの床を取ってみましょう?」
と言い、そこへと手を添える。
「ライノさん?」
「大丈夫、任せておいて!」
彼は微笑むと息を吸い……その言葉を発した。
「物質変換!」
するとそこにあった床版には取っ手が現れ彼はそれを徐に持ち上げる。
「何かあるわね?」
現れたのは紋章の描かれた石板だ。
森の様な絵が描かれている。
そんな絵はメルは見た事が無かった……だが、そこだけ異様だ。
「これが前の国の紋章なのかな?」
そう呟き、メルが石板へと触れた瞬間。
家は揺れ、メルは思わず小さな悲鳴を上げる。
何が起きたのかは一目瞭然だった。
メルが振れたことで石板が動き、その先には階段があったのだ。
「ど、どどどど……ど!?」
どういう事!? そうメルは口にしたかったが何も言えなかった。
それもそうだろう、色々な魔法がある者のこれは全く知らない魔法だ。
触れたら動くなんてメルが想像できるはずが無かった。
「ず、随分とこった仕掛けだな」
リアスはその階段を見て呆然とし、ライノも開いた口が塞がらない。
「と、閉じ込められたりしないよね?」
メルは警戒し階段を覗き込む。
すると壁に何かが書いてあることに気が付いた。
「なんだろう?」
その文字を見てみると書いてある内容は幸いにも読み取る事が出来た。
王家の血筋、この先へと進み王となる資格を得る。
王に付き従う者、二名の騎士、その栄光を生涯の者となる。
「王と騎士? つまりこの洞窟は……三人しか入れないって事なのかな?」
メルが疑問を浮かべると……リアスは首を振る。
「いや、付き従う者って一回切れてるって事はもう一人つまり四人は入れるんじゃないか?」
そう言うとリアスは困った様な表情を浮かべた。
このまま先へと進んでいいのか迷っているのだ。
「リアス?」
「あ、いや……もしここで人数を指定されているなら一人足りないだけで進めないのかもしれない……そうなったら困るだろ?」
彼の言葉を聞きメルもまた困り、尻尾を丸め耳を垂らす。
「でも、ロク爺は居ないし、シュレムは……」
もう一人の仲間であるシュレムはこの場には居ない。
この場から離れて呼びに行った方が良いだろうか? メルはそう考えるが……。
「毒を使う奴が居る以上、単独での行動は止めた方が良い……どうしたもんか……」
リアスは困り果ててしまった。
「皆で呼びに行くのは?」
「駄目だ、扉が開いてる以上、人数が揃えばだれでも入れるのかもしれないし……そもそもシュレムが起きているか分からないだろ?」
彼の言葉は最もだ。
この試練を受ける理由、それはメル達が精霊の道具を手に入れるためだ。
しかし、リアスの言った通り、この扉は開いてしまっている。
誰でも入れてしまえば、試練を克服した証など奪われてしまうだろう。
だが、閉じる方法は分からない。
どうしたら良いのだろうか? メルは呆然と階段を覗き込む。
すると、どんどんどん!! という音が聞こえた。
メル達はびくりと震え、後ろへと振り返った後すぐに窓の方へと目を向ける。
もしかして、また奴らが来たのだろうか? メル達が居って来ていない事はとっくに分かっているはずだ。
なら何かしら対策をしに来たのだろうか?
メルは自分の中にまた黒い感情が生まれていくのを感じた。
しかし……その直後。
「メル!! メル!!」
聞こえてきた声は酷く安心する声だった。
「シュレム……?」
「ああ! 無事だったか!! 王様がメル達が向かった先に怪しい影があったって言ってたんだ!!」
メルは表情を明るくし、扉へと近づく。
するとリアスはそれを止めた。
「リアス?」
何故? とメルは疑問に思うが……リアスは扉へと問う。
「シュレム……お前魔力不足で気絶してたはずなのに一人で来たのか?」
「あったり前だ!! 起きたら嫁が危険だと聞いて放って置けるか!! お前馬鹿なのか!?」
シュレムはそう言うと共に扉を蹴破り。
「無事か!! メル!!」
メル達の前へと姿を現した。
そこには相当急いできたのだろう、汗を滝のように流しながらその表情をほっとした物へと変えた少女が居た。




