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私の夢は冒険者だったのにっ!!  作者: ウニア・キサラギ
16章 失われた仲間
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351話 久しぶりの会話

 ロクと再会をしたメル。

 久しぶりに会う彼との話に花を咲かせた彼女は束の間の平和を感じていた。

 だが、きっと彼は狙われるだろう……。

 それは忘れることもできない不安だった。

 メルがロクと会話をして、どのぐらい経っただろうか……。

 見張りをしていたリアスと変わった時にはすでに外は明るんでいた。

 このまま何も起きないで、そう望むメルだったが……。


 コンッ、コンッ、コンッとノックの音が部屋の中に鳴り響く……それを聞くなりメルは眠っていたロクを見つめた。

 しかし、彼は起きる気配が無い。

 すると、ノックの音は続き……やがてドン、ドン、ドン! という音に代わっていった。

 メルは慌ててリアス達を起こしていると、音の所為でロクは起きてしまい、眉を吊り上げ扉へと向かっていく。

 その腕を掴み、メルは立ち止まらせる。

 彼は振り返り――。


「メルお嬢様……」


 メルの事を呼んだが、メルは首を横に振った。

 そんなやり取りをしているとノックの音はすっかり聞こえなくなっていた。

 留守だと思って去ったのだろうか?

 そう思っていた矢先の事だ。

 何かが割れる音と共にメルは振り返る。

 そこには窓があり、誰かの影が見えた……エスイルではない。

 では一体誰だ? そんな事を考える暇などなかった。

 その理由はメルが突き飛ばされたからだ。

 突然の事に瞳を白黒とさせるメル。

 はっとして、ロクの方へと目を向けると其処には倒れる老人の姿があった。


「お、おい!! 爺さん!?」


 リアスは彼へと近づき、慌てた様子だ。

 メルは何が起きているのか理解できずに……いや、理解したくないとでもいう様によろよろと歩き始めた。

 横たわる老人の首筋には針が刺さっており、その周りには青い痣の様な物が広がっている。


「ど、毒だ――!! ライノ!!」

「え、ええっ!!」


 二人は慌てて対処をしはじめた。

 しかし、メルは――。


「ロク爺?」


 余りにもあっけなく、目の前の事態を信じたくない……そう考えながら彼を呆然と見つめていた。


「メアルリース様……この家の地下を……ここは元々は試練の……」


 彼はまるで遺言のように言葉を紡ぎ……メルは首を横に振った。

 その瞳からは大粒の涙があふれ、耳は垂れ下がり、尻尾にも力が入らなかった。


「ライノさんっ」


 薬師である仲間なら助けてくれる。

 そうなれば後は自分の魔法を使えば良い。

 そう考えたメルだったが……ライノは青い顔をして、止まっていた。


「ライノさん!!」

「駄目よ……こんな症状見た事無い!」


 ライノの視線を追うと其処には青かった痣はどんどんと赤紫に変わっていく……更にその痣は蜘蛛の巣の様に広がって行っており……。


「何だよ、俺も聞いた事が無い……」


 リアスも呆然としていた。

 メルはそう聞くと自分の中に何かが蠢いた気がした。

 目の奥はカァっと熱くなり、居てもたってもいられず、窓を割り外へと出る。


「メル!!」


 匂いをかぎ後を追おう、そう思った所で彼女を追って来たリアスに止められた。


「離して!!」


 叫ぶメルだったが、リアスは力任せに彼女を押し倒す。


「リアス!! 痛い早く放して!!」

「駄目だ放したら追うつもりだろう!!」


 メルの願いにそう叫ぶような声を出し拒否するリアス。

 だが、それもそのはずだ。

 メルは力いっぱい彼に逆らい今にも飛び出そうとしていたからだ。

 だからこそ、リアスは必死で止めた。

 今追っても、今度はメルが毒の餌食になるかもしれない。

 そう思ったら彼はその手に自然と力が入っていく……。


「リアス……本当に、痛いよ……」

「ごめん、でもこの手は離せない」


 顔を歪め大粒の涙を流す少女に対し、リアスは謝罪の言葉を告げる。

 やがてメルは暴れる事に疲かれたのだろう。

 ぐったりとし……今度はすすり泣き始めた。


「メルちゃん……」


 いつの間にか近くに来ていたライノは悲しそうな表情を浮かべ……メルの名を呼ぶ。

 そして、その手は強く拳が握られていて……彼は唇をかんだ。

 彼もまた悔しいのだ。

 これまでいろんな人を助けてきた。

 薬で医療で……だが、今回ばかりは助けることが出来なかったのだ。


 リアスもまた、気配に気が付けなかった事を後悔していた。

 この旅が始まって以来、色んな事があった……。

 危険な事、死と隣り合わせ……だが、彼らは奇跡的に無事だった。

 だからこそ、彼は……失念していたのだ。

 仲間が攫われることは勿論、自分達に被害が出ないと思い込んでいた。


「ロク……爺……ロク爺!」


 大声で鳴く少女の声が辺りに響き渡る。

 だが、その声が呼ぶ人物は……もう、この世には居ない。

 彼女の呼び声に答える者は…………彼女を守って死んだのだ。

 メルの中には怒り、苦しみ、悲しみと色々と感情が渦巻いていた。

 いくら離れていたとはいえ、メルの家族の一人だった老人……ロク。

 メルが悲しまない理由は無かった……。


 ロクと会話をし、笑った柔らかな時間は……ほんの少し前の事だ、一日も経たっていない。

 あの時間がもう来ないのだ……それを考えるだけでメルの瞳からは涙が止まる事は無かった。

 同時に彼女の中に生まれたどす黒い感情は次第に大きくなっていく。

 誰が? 何のために? 何故? 毒を使った?


「許せない……」


 メルは確かに冒険者の卵だ。

 誰かの為に……母から受け継いだその優しい心もある。

 しかし、人間である以上、その感情からは切っても離せない。


「メル……気持ちは分かる。だが、憎しみで戦うな……」

「…………」


 そんな彼女の感情を読み取ったのだろうか? リアスはそう呟き。

 メルは彼の顔を見る。 

 すると彼は先程までとは違った表情をしていた。

 メルを心配する彼の姿はそこにはなく、代わりにあったのは怒りに顔を歪めた少年の姿だった。


「俺も……許すことはできない、例えそれが今日であったばかりの人だったとしても……こんな毒を使うなんてな……だけど、それに飲み込まれちゃいけない。それじゃ爺さんを殺した連中と変わらない」


 彼の言葉は理解できなかった。

 だが……彼は言葉を続ける。


「恨みは恨みしか生まない、そこから進むことはできない……だけど、俺達は前に進まなきゃいけないだろ?」

「そうだな、正直アタシもブチギレそうだ……だけど、メルちゃんがそうなったら誰もついて行かないぞ?」


 いつもと口調の変わったライノは怒っている証拠だ。

 一度見た事があるメルはそれを知っていた。

 メルは2人の言葉を聞き……深く呼吸をする。

 忘れる事は出来ない、そんな事は無理だ。

 だが……前に進まなきゃいけないというのは分かっていた。

 仲間がいなければエスイルだって助ける事は出来ないだろう……メルはどす黒い感情を無理やり抑え込むと歯を食いしばり……。






 首を縦に振った。

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