349話 ロク爺の元へ
エスイルはきっとメル達かロクの事を狙うだろう。
そう判断したメルは急ぎロクの元へと向かう事を考えた。
そして、老人シバの忠告を聞かずロクの居場所を聞き出すと彼女は町の外へと向かうのだった。
シバから教わったロクの居る場所へと向かうメル達。
街の近くと言う事もあり、その場所につく事は容易だった。
しかし、扉をノックしてもロクは出てこない。
「ロク爺!」
夜中だ寝ているのかもしれない。
そう思ったが、寝こみを襲われてしまうかもしれない、そんな不安を感じメルは彼の名前を呼び、何度も叩く。
「メル流石に迷惑じゃないか?」
リアスは顔を引きつらせてメルを止める。
ライノも頷くが、メルはそれどころでは無い。
「だって! ロク爺がここにいるんだから!」
もし、エスイルが誰かを傷つけることがあれば、いくら彼の所為ではないと言ってもメルはその事を気にしてしまうだろう。
エスイルに手を汚させてしまった事を……。
そうならないために彼女はロクの安全を確かめたいのだ。
「ロク爺! ロク爺!!」
バンバンバンと扉を叩くメル。
すると扉の奥からバタバタバタと言う音が聞こえ。
「何を騒いでいるんじゃ!!」
扉が開き怒鳴り声が聞こえた。
そこには年老いた老人の姿があり、彼は眉を吊り上げている。
「ロク爺……?」
その姿はメルの知るロクとはかけ離れていた。
服は質素なフードローブ。
痩せ細った身体……。
「人を気安く呼ぶな!! それに今は夜中じゃろうが!!」
「…………」
メルは変わり果てた彼に驚くが……扉が閉じられていくとハッとし……。
「私だよ、メル! メアルリース!!」
自分の名前を名乗ると彼は閉じかけた扉を止めた。
そして、メルの方へと目を向ける。
目を細めじっと見つめるが――。
「メルお嬢様?」
そう呟くとランタンを手に取り、ゆっくりと手を伸ばしてくる。
握手を求めているのだろうか? メルは疑問に思いつつ彼へと近づくと……。
「へ!?」
その手は差し出した手には繋がれず。
「きゃ!?」
伸びて来た手はメルの顔へと当たった。
「すまないな、目があまり見えん」
そう言った彼はメルの肩へと手をかけ、よろよろと近づいて来た。
「近くで見せてくれんか?」
不機嫌そうな声は変わらなかった。
だが、メルの顔を近くで見つめる彼は……ようやく顔をほころばせた。
「おお、その髪はナタリア様にユーリ様にそっくりだ……顔も幼い頃のフィーナ様に似ておられる」
彼はそう言うと昔を懐かしむ様に瞼を閉じ、ゆっくりと開く……。
「メルお嬢様、何故こんな所へ」
「実は――」
メルがその場で話そうとしたが、すぐにロクは首を振り。
「良く見れば仲間がいるご様子、何故と言った所で申し訳ないですが、取りあえずは話はあとでまずは家にお入りください」
彼は扉を開け、家の中へと招き入れてくれた。
家の中は実に質素だった。
客など来る予定はないのだろう、机に添えられた椅子は一つだけしかない。
そして同じ部屋には寝床が一つ。
「すまない、床に座ってくれんか?」
メル達は勧められるまま床へと座る。
ロクも床へと座りメル達を見回した後、再びメルへと視線を戻す。
「それでメルお嬢様、何故こんな所に……?」
「うん、実はね」
ロクはシバにゆっくりと話を始めた。
「エルフに言われたの、この世界は滅ぶって……だからそれを防ぐために精霊の道具が欲しいの……」
「……なるほど、では祠に行けば道具は見つかるでしょう」
メルは彼の言葉に首を振る。
「盾は手に入れたの、だけど……シバさんが……」
メルの言葉に頭を抱える彼は……。
「また奴か、という事は試練を受けたいという事ですかな?」
こくこくと頷くメルに再び溜息をつくロク。
だが、それだけではない、メルは彼へと伝えなければいけない事がまだあった。
「それに、それを阻止する為にエルフが……多分エルフが、エスイルを攫った」
「エルフ様が……?」
ロクは目を丸くしメルの顔を見つめる。
「嘘じゃない、エスイルは優しい子だ……そんな子が豹変したんだ」
リアスは詳しい事は言わずとも含みを持たせた声でそう口にした。
するとロクは頷き……。
「エスイルと言えば、確かあの娘さんの子供だったな……しかし、何故エルフ様に世界を頼まれて、それを阻止するのがエルフ様なんですかな?」
ロクの質問は最もだ。
メルは頷き答えた……。
「エルフは二人いて、普通の精霊とは違う……一人のエルフはこの世界を作っていたもう一人は人がエルフになったの」
それはエルフ本人から聞いた話だ。
メルはそれを伝えると仲間達からも驚いたような声が上がる。
当然だ。
エルフが二人居るなんて事は出会った本人達にしか分からない。
それに関してはリアス達も知っているだろう。
だが、エルフの出生まで知る術は無い。
「ど、どういうことなの?」
「詳しくは分からない、だけど……そう聞いたの」
メルはそれだけを答えるとロクへと目を向ける。
「エスイルを操ってるエルフは私達の邪魔をしたい、だからロク爺……ロク爺が危険なの」
老人へと向けた顔は無事だった事に安堵したものと、まだ心配そうなもの……それが合わさった様な複雑な表情だった。




