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私の夢は冒険者だったのにっ!!  作者: ウニア・キサラギ
16章 失われた仲間
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347話 喪失

 シレーヌの力を借り逃げ延びたメル。

 彼女は城の一室で涙を流しながら身を丸めていた。

 いつの間にか眠ってしまった彼女の元に仲間が戻ってきた……。

 その様子を見て、旅ができないかもしれないと言う言葉が飛ぶが……ライノは正反対の事を言うのだった。

 メルが目を覚ますと其処には仲間達が居た。

 彼女が起き上がるとすぐに駆け寄ってくるリアスとライノ。

 だが、そこにはエスイルが居ない。

 それだけで心にぽっかりと穴の開いた少女は……呆然としていた。


「…………メル」


 そんな彼女を見てリアスは悲しそうな瞳を向ける。

 最初にエスイルを見つけたのは彼だ。

 だからこそ、メルのそんな様子を見てショックが強いのだろう。


「メルちゃん……」


 続いて彼女の名前を呼ぶのはライノだ。

 彼はメルの強さを知ってはいた……だが、今までにないほど絶望をしている彼女を見て何も言えなかった。


「ったく! なに呆然としてるんだ、なぁ! 試練を受けるんだろう? なぁ!!」


 しかし、ただ一人シバはメルを叱咤する。

 当然だ。

 彼は本当の仲間ではないのだから。

 そんな彼に対し二人は鋭い視線を浴びせるが、効果は無かった。

 しかし――。


『デリカシーも何も無いね!!』


 1人、そう怒鳴る者がいた。

 そんな彼女をシレーヌは驚くように見ていた。

 そう……怒鳴った声はリアスとライノには聞こえなかったのだ。

 その場で聞こえたのはメル、シレーヌ……そして、シバの三人だ。


「お、お前さん……一体」


 それが誰なのか分からないのだろう、シバは狼狽をした。


『私はフアル! 氷の精霊だ!!』


 眉を吊り上げたフアルはそう叫ぶ。

 そして、シバの方へと近づくと……。


『メルは今ショックを受けてるんだから! だってエスイルが居ないんだよ!?』


 エルフの言う通りなら彼女は破壊の精霊だ。

 しかし、今は此方に居る。

 エスイルはいないのに……フアルは居るのだ。

 メルはその事が疑問でもあった。


 確か……フアルは裏切ったみたいな事……。


 そう言っていた事を思い出し、メルは彼女を見つめる。

 するとフアルはメルに気が付き……。


『メルも! エスイルは、エスイルは……好きで付いて行ったわけじゃないんだからね!!』


 まるで叱るようにそう言うと彼女はその瞳に涙を溜める。


『何を泣いているんですか!! 泣きたいのはメルの方です!!』


 そんな彼女を見て水の精霊シレーヌは怒鳴る。

 精霊達の喧嘩はメルが、エスイルがと言う言葉から始まり、やがて関係のない事になっていく。

 しかし……それはフアルの言葉で終わりを告げた。


『エスイルは言ったんだから!! メルなら何とかしてくれるって! だから残されたんだ!!』

「『……え?』」


 それはフアルの泣き声が混じっていた叫びだった。

 メルは――その言葉で思い出す。

 エスイルはその意識を完全に奪われていなかった事を。

 そして、自分を逃がす隙を作ってくれたことを……きっと今も信じているはずだ。

 助けに来てくれると……。


 そうだ、だからあの時……でも、今私は一体なにをしてるの?


 エスイルは今、自分を飲み込もうとしている意思に逆らい戦っている。

 だが、自分は悲しみ泣きはらしていた。

 助けると口にしたのにだ。

 もし、母達なら……ユーリ達ならばそれを口にしたら進むだろう。

 なのに、自分は一体なにをしているのだろうか?

 メルはそう思うと再び涙が溢れ出た。


 情けない――。


 そんな気持ちでいっぱいになったのだ。


「メル……どうするんだ?」


 そんなメルに対しリアスは問う。

 メルは涙を袖で拭い……彼の方へと視線を向けた。


 やる事は色々ある。

 だが…………。


「エスイルを助ける」


 メルははっきりとそう口にすると、ライノは頷く。

 対し、シバは驚いたような顔を浮かべた。


「なぁ! おい……試練はどうするんだ、なぁ!!」


 彼なりの心配があってそう言ったのだろう。

 だが、メルは彼をしっかりと見つめ答えた。


「勿論、受けます……だけど、まずはエスイルをどうにかしないと、それに……もし、エスイルが操られてるならロクお爺ちゃんも危ないよ!」


 ロクは小さい頃のエスイルを知っている。

 もしかしたら彼を襲いに行くかもしれない、そう考えたメルはその事をシバへと伝える。


「そうは言ってもだなぁ……」

『黙ってて!!』


 まだ何か言いたげなシバに対し怒鳴るのはフアルだ。

 彼女は声を荒げた後、メルの方へと向き……すっかりと変わったその顔つきを見るとほっと息をついた。


『お願い……』

「……うん、待たせてごめんね?」


 メルはそう言うと再び仲間であるリアス、そしてライノへと目を向ける。

 そして……もう一度口にした。


「エスイルを助けるよ……」


 その言葉に二人は力強く頷く。


「でも、どうするの? エスイルちゃんは何処に居るのか分からないんでしょう?」


 確かにその通りだ。

 だが、予想できなくはない。

 もし、あれがもう一人のエルフであればメル達の邪魔をするはずだ。

 ならそれが出来る場所に向かうはず。


 つまり――。


「ロクお爺ちゃんの所か試練の場所か……とにかく私達の前へ顔は出すよ、絶対に」


 メルはそう予想し、シバへと目を向ける。


「だから、シバさんは予定通りにお願いします」


 そして、頼むのだった。

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