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私の夢は冒険者だったのにっ!!  作者: ウニア・キサラギ
16章 失われた仲間
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346話 逃亡

 エスイルは操られていた。

 何かに操られていたのだ……それを感じたメルだったが、自身も動けなくなっていることに気が付いた。

 どうにかしようと水の精霊シレーヌの名を呼び彼女の力を借りると……。

 メルはエスイルに助けることを告げ、その場から逃げるのだった。

 メルはシレーヌに抱えられながら街の中を走る。

 エスイルから離れても未だ足が動かないのだ。

 何故、そんな疑問を感じながらもメルは震える手で自身の体を抱いた。


 怖い――。


 恐怖を感じたのはどのぐらい前だろうなんて事は無い。

 何時だって怖かった。

 だけど、それをひしひしと感じられるのは久しぶりだった。

 相手は正体が分からない。

 エスイルを操っている。

 助けなければ……。


 色々な事が頭に浮かんでは通り過ぎる景色のようにメルの頭の中で過ぎ去っていく……。

 そうして残るのはやはり恐怖だ。


 どうしたの? 私……。

 だって、相手はエスイルを使って……エスイルの陰に隠れてる臆病者だよ!


 そう思っても恐怖がぬぐえなかった。


『メル……』


 シレーヌはそんなメルを見て不安そうな声を出す。

 メルは頷き……。


「大丈夫……」


 とだけ何とか呟いたが、自分でも分かるほど弱々しい声だった。

 これで大丈夫なんて思ってもらえる訳が無い。

 全くの嘘だ。

 誰が聞いても、自分が聞いても嘘だと分かる言葉。

 シレーヌはそんな言葉を聞いたにもかかわらず。

 黙って城まで連れて行ってくれた。

 メルが辿り着くと見られぬ精霊に警戒した兵士たちは武器を構えるが、シレーヌは溶けるように消え……。

 兵士たちは唖然とする。

 残ったのは己の体を抱きながら震える少女一人だ。


「お、おい! 早く中にお連れしろ!」


 何か尋常じゃない事が起きた。

 そう理解した兵士は慌てたようにそう叫び、扉を開ける。

 メルは兵士に抱えられ部屋へと戻った。


 だが、部屋の中には眠っているシュレム以外には誰も居ない。

 恐らく急に飛び出した自分を探しに行ったのだろう。

 無事だろうか? そう思いながらもメルは案内をされたベッドの上で身を丸くし、震えていた。

 怖い……。


 恐怖は未だ彼女を包んでいる。

 先程はエスイルを必ず助ける。

 そんな風に言ったにも拘らず……メルは不安と恐怖に押しつぶされそうだった。


「どうしたの? どう……しちゃったの? 私……」


 明らかに普通ではない。

 そう思いつつもメルは抑えきれず大粒の涙でベッドを濡らした。

 普段なら誰かが居てくれる。

 だが、今は誰も居ない。

 それさえもメルの恐怖を煽るのには……十分すぎた。

 せめてシュレムが起きてくれていれば……そう思うも、メルはこのまま目を覚まさないのでは? という別の恐怖も感じ。

 涙は止まる事が無かった。


 どの位泣いただろうか?

 シレーヌは彼女を心配しているが、何も出来ず……寂しそうに見つめている。

 この場に責めて別の仲間がいれば……何かが変わったのだろう。

 だが、此処には誰も居ない。

 シュレムが目を覚ませば何かが変わるかもしれない。

 しかし、シュレムは未だ目を覚まさない。


 やがて疲れ果てた彼女はぐったりとする。

 睡魔に襲われ……ゆっくりと目を閉じていく……。

 脳裏に浮かんだのは少年の笑顔。


「……エス……イル」


 そして、次に浮かんだのはエスイルの母の顔。

 必ず守ると約束した。

 だが、その約束は守れなかった……。

 その事を彼女は後悔しつつゆっくりと意識を闇の中へと落とす。






 メルが泣き疲れ眠り付いてから暫くし……。

 仲間達は部屋の中へと戻って来ていた。


 そこで見つけたメルにホッとした一同……。


「メルちゃん、目の所が腫れてるわ……泣いてたみたいね」


 ベッドへ運んだライノはリアスとシバへと伝えた。


「そんなにガキンチョの事が大事だったのか、なぁ!」

「大事さ……メルは小さい頃から一緒だったんだ」


 シバの質問にリアスはそう答えるとベッドに横になっているメルへと目を向ける。

 そして、思い浮かべるのは襲ってきたエスイルだ。

 メルが飛び出し、戻ってきたら寝ているなんて事は無い。

 もしかしたら彼に会い、戻って来てライノの言う通り泣きはらし疲れて寝たのだろうと考えた彼は……。


「どうする? もしかしたらメルはもう……」


 旅を続けられないかもしれない。

 そう判断するも……彼はそれを最後までは言えなかった。

 言ってしまえば本当にそうなるかもしれない。

 それが今の彼にとっては恐怖でもあり、不安でもあった。

 これまで一緒に旅をしてきた仲間が一人かけた。

 それだけでも辛いと言うのに……。

 ましてや彼の旅の理由でもあったエスイルはもう居ない。

 だからと言って彼を助けない訳にはいかないが……肝心のメルがこうではそれも難しいだろう。

 リアスは眠る二人を見つめ……溜息をつく……。


「大丈夫よ、リアスちゃん、さっきの話が本当だとしてもメルちゃんがエスイルちゃんを見捨てる訳が無いわ」


 ライノは先程メルを探しに行った時にリアスから話を聞いていた。

 だが、それでもメルは大丈夫だと言う。


「だって、薬草があるか分からず危ないって分ってたのに二人を助けに行くために洞窟に向かうような子よ?」


 彼は出会った当初の事を懐かしむ様に思い出すと微笑むのだった。

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