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私の夢は冒険者だったのにっ!!  作者: ウニア・キサラギ
16章 失われた仲間
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345話 失われた? 優しさ

 襲われたメルを助けてくれたのは予想外の人物だった。

 そう、エスイルだ。 

 彼はナイフを手に持ち、メルを救った。

 だが、その考えはとてもあの優しい少年には思えなかった。

 少年と対峙したメルは腰にある剣へと手を伸ばす。


「僕と戦うの?」


 少年は意外そうな表情でそんな事を口にした。

 だが、メルは迷っていた。

 目の前の少年はエスイルではない、そう思っても先程の彼の発言からエスイルではないか? そんな不安もよぎったのだ。


「…………なんで私に会いに来たの?」


 メルはもしもエルフが行った事が本当であるならばここに来るはずが無いと考えた。

 何故ならそうなればメルとエスイルは敵同士になってしまう。

 そして、エスイルは幼い頃から一緒に居るのだ。

 メルの事が嫌いと言う事は無いだろう……。

 そうなれば引き戻される危険もある。

 だが、彼女達のそんな関係を知らなくても仲間だと知っていて、もう一人のエルフが合わせるだろうか?


 自分ならしない!


 心変わりをすると考えるからだ。

 だが、エルフは今のところ何も言って来ない……。

 メルは……何故そう思うのだろう? と考えつつ一つの答えに行きついていた。

 そう、その答えとは……。

 その心配が無いと確信できる。

 確実にエスイルの力は得られる手段。


 そして、メルもまたその力を狙われていた。

 そんな簡単に諦めるだろうか?

 エルフとしてはメルも手に入れたいはずだ。

 それなら近づいてきた理由も分かる……エスイルはメルを連れて行く気だと……。


「何でって言われても……」


 暫くの間を置きエスイルはそう口にした。

 だが、メルはすぅーっと息を吸い彼を見つめると……。


「ねぇエスイル……帰ろ? 皆が待ってるよ?」


 彼の事をエスイルと呼んだ。

 すると、ピクリと少年の体が震える。

 そう、確かに反応したのだ。


「さっきは僕じゃないって言ったのに、今度は僕?」


 しかし、すぐにソレへと変わると馬鹿にしたかのような態度で口にする。

 だが、メルは先程の言葉から疑問はさらに広がり……。


「エスイル……エスイルはお母さんもお父さんも助けたいよね? もし、ついって行ったら皆殺されるかもしれないんだよ?」


 それはあくまでメルの予想だ。

 エルフはメル達は助けると言った。

 だが、その言葉にメル達の家族が本当に含まれているとは思えなかったのだ。

 だからこそ、メルはそう話を切り出すと……。

 少年の顔つきが少し変わり、だがそれも一瞬で元に戻る。

 それを見逃さなかったメルは確信した。

 誰かがエスイルを操っているのだと……そんな魔法見た事も聞いた事も無い。

 だが、目の前で起きている以上は現実だ。


「エスイルを離して……!!」


 ならば守らなければならない。

 それが約束だと言う前に、自分がすべきことだ。

 メルはそう確信し、声を低くし威嚇する。


「…………」


 メルの言葉に少年はぴたりとその表情を止め。

 すぐにニタリと恐ろしい笑みを浮かべた。


「エス……イル……?」


 背筋に悪寒が走るを感じたメルは一歩、二歩と後ろへと下がる。

 何故だかは分からない。

 だが、その場から逃げなくてはならない。

 そんな事がメルの脳裏に浮かび、だが弟を置いて行く訳にはいかないと言う事も思い浮かんだ。

 しかし……。


「どこに行くの?」


 エスイルの顔をし、エスイルがしない表情を浮かべ、エスイルの声でしゃべっているのに、エスイルではないソレの声を聞くとメルは恐ろしくなり……。

 その耳を更に垂らし、尻尾を丸める。


「メルお姉ちゃんが今の僕に逆らえる訳が無い」


 にやにやと笑うエスイル。

 彼は一体なにを考えているのだろう?

 メルはそう考えつつも足がまるで地面に張り付いて動かない事に気が付いた。


 身体が……身体が、動かない。


 恐怖もあるだろう、だが、別の何かに縛り付けられているかのようだった。


「無駄だよメルお姉ちゃん、メルお姉ちゃんは一度掴まったんだから……」


 メルには何の事だか分からない、だが、少年のその言葉はやけに恐ろしい物だった。

 しかし、だからと言ってメルはメルは冷静さを失った訳ではない。


 どうすればいいの? エスイルは取り返さなきゃ! それに、この場から逃げないと……。


 メルはどうやったらこの場を切り抜けられるのか? っそれを考え、深呼吸を繰り返す。

 そして……。


「シレーヌ!!」


 この場に居る仲間の名前を呼んだ。


『メル!!』


 シレーヌはメルの名を呼び目の前へと割り込む。

 そして、メルは一人じゃないと言う事実に少しの勇気を得たのだろう。

 震える手でアクアリムを掴み刃を見せた。


「へぇ……」


 感心したかのような声を出したエスイルだったが、メルは気にすることなく魔力……いや、精霊力を籠める。

 すると――ウンディーネは水の龍ではなく、その姿のままメル達と同じぐらいの大きさとなり、メルの前へと立つ。


「戦う気なの?」


 メルはエスイルの言葉には答えない。

 それもそうだ、戦うつもりなんてない……メルが望むのはただ一つ。


「エスイルは返してもらうから」


 それだけを告げるとメルはシレーヌの背へと目を向ける。


「シレーヌ、お願い!」


 メルはそう言うとシレーヌはメルを抱え、その場から去って行く。

 何故かはわからない。

 だが、メルはこの場に居たら駄目だと考えたのだ。

 しかし、そんなメル達を逃がさないとばかりにエスイルは追って来る。


「僕を取り返すって言ったのにどこに行くの?」


 メルはそんなエスイルへと目を向け……。


「エスイル、待っててね、絶対助けに行くから!!」


 そう誓いの言葉を告げると少年の表情は一瞬元に戻り……ピタリと足を止めた。


「――!!」


 直後エスイルは顔を歪め、恨めしそうにメルを睨らむ。

 だが、今度はエスイルがその場から動けなくなり、メルは小さくなっていく少年をただ悲しそうに見つめるのだった。

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