338話 謁見の申し込み
早くロクの元へと向かおうと提案するメル。
しかし、王への報告と倒れたシュレムを置いていくわけにはいかない。
メルは動けないことに気が付き、がっくりとうなだれた。
しかし、すぐにアリアへとロクへの伝言を頼むのだった。
アリアへと伝言を頼んだメル達。
彼女達はシュレムをライノとエスイルに任せ、シバと共に王の元へと向かっていた。
とは言っても、流石に謁見に割り込むという事は出来ない。
彼女達は順番待ちをするために謁見の申し込みをしに行ったと言った方が良いだろう。
「……うわぁ」
だが、メル達はそこに人が溢れている事に驚いた。
兵士達は一人一人の話を聞き、何かを羊皮紙に書きとっていく……。
恐らく謁見をする話の内容だろう。
がやがやとするその部屋の中ではメルにも少しばかり話が聞こえてきた。
謁見の理由は様々だ。
騎士になりたいとか……。
作物が育たない、税を軽くしてほしいだとか……真面目な物から、王様と話したい。
なんていう理由もある。
中には……主人が怪我をし仕事が出来ないから兵士を寄越せなんていう無茶な話まで出ていた。
「凄いな……」
リアスもまた驚くが、シバは腕を組み溜息をついていた。
「シバさん?」
「王は確かに変わった、ワシらの王ではなくなった……だが、人々に好かれ頼られるのは同じだなぁ……恨みもある、憎しみもある……だが、どうにも割り切れん、なぁ……」
彼はそう言いながら悲しそうな表情を浮かべた。
前王と言えば、メルにとっても祖父にあたる人……。
そんな人を殺したと言われては今の王に何か思う所はない、と言えば嘘になる。
だが、顔も知らない祖父母がもし、もしも生きていたら……。
私は生まれてないかもしれない。
それに……ユーリママも普通に男の人と一緒になってたかも?
などと考えるとさらに複雑な気分になる。
そんなこんな考えているとメル達の番になり兵士達は目を丸めていた。
メルは当然首を傾げるのだが……。
「王への謁見でしたら、誰か捕まえて話していただけたらそれでよかったのですが……」
彼は苦笑いを浮かべそう言うが、メルは首を横に振る。
「急ぎって訳じゃないし、何度もお願いするのはちょっと……」
今度はメルが苦笑いを浮かべ、正直に言うと兵士へと謁見理由を伝える。
かれはうんうんと頷き、それを羊皮紙に書いて行く……。
そして、話を伝え終わると羊皮紙を丸めた兵士に頭を下げ、メル達はその場から歩き始めた。
後は謁見が出来る時間まで待てばいい。
勿論シュレムの魔力が回復するまでは此処から動けないのだ。
焦る事は無い、と思いつつも……。
やっぱり、ロクお爺ちゃんの事が心配だよ。
なんで街の外なんかに……。
帰り道でメルは大きなため息をつくのだった。
部屋に戻ったメル達。
そこには横たわるシュレムが居り、メルは彼女の元へと近づく。
「ねぇ、メルお姉ちゃん」
そんな彼女を呼ぶのはエスイル。
この旅を一緒にしてきた少年だ。
彼はシュレムの近くまで来ると……。
「あの魔法で起こせないのかな?」
と尋ねてきた。
仲間達は一様に首を傾げるが、メルは度の魔法の事を言っているか理解した。
「マナヒールは自分の魔力を回復するための物だから、人の魔力を回復させるのは出来ないの」
そう、メルの母ユーリが作った魔法。
それで助けることはできないか? 少年はそう訪ねているのだ。
「そう、なんだ……」
当然エスイルはがっくりとする。
しかし、少年の優しい言葉にメルは笑みを浮かべた。
「きっとすぐに起きるから、ね?」
シュレムを心配している。
そう思ったメルは彼にそう伝えた。
「……うん」
エスイルもまた笑みを浮かべる。
そんな彼女達のやり取りを見守っていた仲間達とシバは――。
「そろそろ今日は休もう、メルも魔法を使ってるし……俺も武器を使ったからな」
「あら、そうなの? ならゆっくり休んで魔力を回復しておいた方が良さそうね?」
メルは魔力に余裕があるが、頷いた。
理由は勿論リアスの事を考えてだ。
彼とメルでは魔力に差がある……当然幼い頃から日常的に魔法を使っていたメルの方が魔力が鍛えられ増えているのだ。
そうでないとしても元々ユーリ程ではないと言われていたものの魔力は非常に高かった彼女とリアスを比べるのは酷だろう。
「そうしようか」
メルは彼の事を心配し、そう口にする。
すると――。
「僕、ちょっと散歩してきても良い?」
普段ならそんな事を口にしないだろうエスイルの言葉にメルは驚いた。
「でも、もうすぐ日が暮れるよ? 明日一緒に行ってあげるから」
「………………駄目?」
聞き分けの良い少年はメルの言葉に首を縦に振らずメルは首を傾げる。
明日と言えばいつもなら聞いてくれるのに……っと……。
「今日はずっとお留守番だったものね……エスイルちゃんはしっかりしているし良いんじゃないかしら?」
「…………それは」
そうだけど、とメルは思うものの不安だ。
エスイルは確かにしっかりしている上にその幼さで旅について来られるほどの才と実力がある。
寧ろエスイルが居なかったらメルはカロンでどうなっていたか分からない。
一度掴まったエスイルはライノから受け取っていた毒を使い、敵に隙を作らせたのだ。
考えようによっては彼の所為で危機に陥ったと思うかもしれないが、メルはエスイルが居なくともいずれ追い詰められていたと感じていた。
「…………うーん、分かった完全に陽が落ちるまでなら良いよ? 後必ず水袋を持って行ってね? 中身を入れて絶対に!」
念を押し水袋を持って行かせようとするメル。
それさえあればシレーヌでなくとも水の精霊であるウンディーネが彼の近くに居るだろう。
そうなればもしもの時はウンディーネかシレーヌが何かしら伝えてくれるだろう。
もし何もなくても心配なら彼女たちの目を借りれば良いと考えたのだ。
「分かった!」
これにはエスイルも笑顔で頷き聞き入れてくれた。




