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336話 信じさせるために

 魔力切れを起こしたシュレムを連れ町に戻ろう。

 そう考えていたメル達だったが……。

 シバは盾を渡せないという……しかし、それは決してメル達を信じられないからというわけではなく……。

 彼以外の信仰者たちを認めさせる事が出来ればという事だった。

 メル達は盾を手に入れて街へと戻る。

 しかし、その盾はあの街がレライと呼ばれるようになる遥か前から信仰されていたものだ。

 実際には奥深くに隠されていたのだが、そんな事は関係ない。

 そして、その時の住人はまだレライに住んでいる者もいる。

 納得させるというのは非常に難しいだろう。


「………………」


 メルが魔物との戦い以外では対策を考えていた。

 しかし、良い案が浮かぶことが無い。

 こんな時他の仲間もいてくれたら……と思ってしまうのだが、今はレライの城で留守番中だ。

 一応、祠がはずれだった時を考えて情報は集めてもらってはいたが、都合良く納得させられる情報を得ている訳が無いだろう。


「せめて……フィーナママの子供だって証明できればいいのに」


 メルが何気なく呟いた言葉。

 それはシバの耳に入り……彼は立ち止まった。


「おい、どうした?」


 それに気が付いたリアスは振り返り彼に尋ねる。

 メルも立ち止まると其処には何かを考えているらしいシバが居る。

 一体どうしたというのだろうか?


「確かに、本当に姫様のご息女であれば持って行く事に反対する者は居ない、なぁ!」


 それは今彼女が呟いた事だ。

 だが、その方法はないだろう。

 メル自身別の理由でそれには苦労しているのだから。


 何度言ったって私はユーリママの子供だって納得してもらえなかった。

 だから、こっちではきっと言うだけじゃ難しいし……似ててもそれだけじゃ理由にならない。


 メルは大きなため息をつく。

 だが、シバはそうではない様だ。


「そう、悲観するな、なぁ!」


 彼は真剣な顔を浮かべそう口にした。


「でも、方法なんて……」


 ない、そう言い切ってしまうのがなんだか悔しく、メルは黙り込む。

 するとリアスもメルの態度を見て少し落ち込んだ様子を見せた。


「だから、そう悲観するな……姫様はまだ幼かったから間に合わなかったが、王族の試練がある。聞いた事は無いか? なぁ」

「王族の試練?」


 それはメルには初めて聞く言葉だった。

 するとシバは頷きつつ答えてくれた。


「実際には試練と言うだけで、先代に試練を提示され、試練の祠の最奥にある王冠を手に入れるだけだなぁ! 姫様もそれを聞いている、なぁ」

「……そうなの?」


 母からはそんな話聞いた事が無い。

 メルはそう思いつつ当然かと考えた。

 本来ならそれで王位継承権を得たとか言われるだろう。

 だが、戦争の事もありフィーナにとっては思い出したくない事だろう。

 そうなれば話してくれないのも当然だ。

 だが、考えてみれば試練があるのも当然だ。

 王位を継承するという事は国だけではなく民の生活も預かる事になる。

 そうなれば、王は自分自身の為だけに生きる事はできない。


 王位を継承するそれは自身は勿論、部下になる者や民も不安を持つ物。

 王が次は娘だと言っても、それを拭う事は出来ない。

 ならどうするか?


 だからこそ、何か試練をして本人に自覚をさせて……それを乗り越える事で皆も納得させる。


 メルはそう考え、試練とはそういう物だろうと感じた。


「その試練はすぐに受けられるんですか?」


 ただ、一つの疑問が残った。

 それはあくまでレライになる前の国の試練。

 今もその試練の場が残っているかが心配だったのだ。

 ましてや最奥にある王冠も今あるのかさえ分からない。


「大丈夫だ、なぁ!」


 しかし、そんなメルの不安を気にしていないかのようにシバはそう言う。


「いや、でも……今はその試練をやってないんじゃないか?」


 リアスもメルと同じ不安を感じているのだろう。

 シバに尋ねると彼は頷き……。


「なら、その王冠が無事かどうかもわからな――」


 と口にするのだが、シバは――。


「無事だ、なぁ!」


 とはっきりと答える。

 首を傾げるメル達はお互いの視線を合わせた。

 ここまではっきりと言えるからには何かしら理由があるはずだ。

 そう考えた彼女は……。


「誰かが管理してるとか?」


 尋ねると再びシバは頷いた。

 それにホッとする反面、メルは表情を暗くした。

 王家の試練。

 それを果たして受けさせてもらえるのだろうか? と……。

 傍から見ればメルはただの冒険者だ。

 フィーナの血を確かに引いてはいるが、それを証明する手が無い。

 母にこの場に来てもらえば良いだろうが、またリラーグの時のようになるのだけは勘弁だ。

 そうなると自分自身を認めさせなければならない。

 かといって……とメルの中では再び思考がぐるぐるとし始めた。


「大丈夫だ、あいつはワシの親友でなぁ!」

「あ、いや……」


 親友だからと言って安易に彼の言葉を信じるわけがないだろう。

 メルはそう判断するが――。


()()の事だ、ちゃんと話を聞いてくれる」


 聞き覚えのある名前にメルは驚く。


「ロク? ロクってロクお爺ちゃんの事? フィーナママをナタリアに預けた……」


 メルは嘗てナタリアに聞いた話を思い出す。

 そして、一人の人物の顔を思い浮かべた……。


 もし、本当に彼女が知るロクであれば、試練を受けられる。

 そう確信し……思わず顔がほころぶのだった。

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