335話 倒れたシュレム
魔法が効果がない。
しかし、精霊の道具であれば傷を作ることはできた。
だからこそ、メルは石像はやはりシュレムにしか倒れない悟り、彼女に任せた。
見事、石像を倒すことは出来たのだが、慣れないことをしシュレムは魔力切れを起こしてしまうのだった。
倒れたシュレムの安否を確認したメル達はほっとする一方途方に暮れた。
彼女をこのままにしていく訳にはいかない。
「盾は私が持つけどリアス……シュレムを背負える?」
方法はそれしかないと考えたメルだったが同時に複雑な気持ちだった。
その理由は……。
「大丈夫だけど起きた時平気か?」
リアスが言った言葉そのものだ。
そう、いくら女性が好きなシュレムだとしても少女である事には変わりがない。
すると男に背負われるのには抵抗があるのではないか?
また、シュレムの事だ、弱い部分を見せたくないと思っているかもしれない。
メルはそう考えるのだが……。
「でも、私には背負えないし……シバさんに背負ってもらう訳にも……」
大切な仲間であり姉であるシュレムはやはり信頼ある人に任せたい。
勿論、シバが信用できないという訳ではなかったがメルはそう思っていた。
そうなるとこの場で適任なのはリアスしかおらず。
「分かった」
この状況だきっとシュレムも理解してくれるそう考えたメルだったが、振り向くとシバはシュレムの盾へと手を伸ばしていた。
「シバさん、何をして?」
「何をして、じゃないなぁ! これはワシらのもんだろう? なぁ!!」
そう、確かに盾はこの地に眠る草花の精霊を現す道具だ。
それを祀って来た者達の物、そう言われてしまえば頷くしかない。
だが……それはあくまで――。
「……それはシュレムがエルフから託された物でもあるの、だから、少しの間だけ貸してもらえませんか?」
この世界に危機が訪れないと確信が持てれば返せばいいだけの話だ。
だからこそメルは首を決して縦には振らなかった。
「何をふざけた事を……さっきはエルフ様がどうのとか言っていただろう、なぁ!!」
「エルフは二人いる、そして互いに違う主張をしてるの、世界を、人々を滅ぼすか、それとも存続させるか……そして助けるためにはその盾も必要なの」
メルの言葉には嘘はない。
だが、シバにとっては意味の分からない言葉でしかないのだ。
当然怪訝な顔を浮かべた彼は……。
「何を言っているんだ、なぁ!」
「そうだよね、そう思うと思います……でも、本当の事、だから……!! その盾を貸してください。ちゃんと終わったら戻しに来ます」
メルはそう言うが、シバは納得できないのだろう。
「だから何を言っている、ワシらの物だがワシの物じゃない! ワシの一存で決められるわけがないだろう!? だが、どこぞの子供に持っていかれる事は此処にいるワシが止めなくてならない、なぁ!」
「……メル、話が平行線だ」
リアスは呆れたようにメルに分かり切っていた事を伝える。
勿論メルも困り果てているのだが……。
「でも、どうしたら……」
無理やり奪う事は出来る、片腕の無い老人相手なら二人で押さえる事は簡単だ。
しかし、その選択はメル達にはなかった。
どうにかして納得させたい、そう思うのだが……。
「エルフさえ話をしに来てくれれば……」
ここにいない者に願うしかない。
だが、そんな都合良くエルフが来るわけもなく……かと言って諦める訳にもいかない。
「…………だが、お前さん達は悪い奴ではない、それは分かる、なぁ……」
メル達が困惑している中、シバはそう告げる。
そして……。
「しかし、祠がこうなった以上、中に何かがあり、ご神体が盗まれたとなったら酒場で話してたこともある真っ先にお前さん達が疑われるなぁ」
それは誰もが納得する事だった。
そして、無理矢理ではないにしろ奪った事も事実……。
「シバさん?」
メルは彼の名前を呼ぶと、彼はにやりと笑う。
もし本当にメル達に盾を渡さないつもりであればこのまま逃げて行けばいいだろう。
シバが気が付いているかどうか分からないが、メル達には彼を止める理由はあっても手段はない。
だからこそシバが何処にもいかないのが疑問だった。
「…………」
それでも取り押さえて盾を取り返すことはできる。
メル達は身構えたが…・・・ 返ってきた言葉は意外だった。
「ワシが良いと言っても他が文句を言うかもしれん、なら……認めさせるしかないだろう、なぁ?」
「「…………はい?」」
それは予想外の言葉。
だが、同時に……。
「認めさせるってどうやって?」
メルが疑問を投げかけるとシバは笑い声をあげ……。
「それは今から考える、なぁ!」
「ちょ、ちょっと待て!? あんたが協力してくれるのは嬉しい、だけど今から!?」
一緒に来たシバでさえ完全に信用するなんて事は出来ないだろう。
それが、メル達自身も知らない人々を説得する? そんな事は不可能だ。
メルとリアスはそう思うが……。
「だが、認めさせられなければお前さん達はご神体を盗んだ賊だ……なぁ」
シバにそう言われ、メル達は何も言えなかった。
そう言われても仕方がない。
そう思っていたところもあった。
しかし、よく考えるとそうなってしまえば今後レライとリラーグの友好関係にも亀裂が入るかもしれない。
いや、レライ王は事情を知っているのだ、なんとかしてくれるとは思うが、代わりに彼の立場が危うくなるかもしれない。
「分りました……それはシバさんが持っていてください」
メルは溜息を一つ付くと彼にそう頼む。
そして、リアスの方へと向くと彼もまた頷いた。
「俺達は賊じゃない、なら……ちゃんと筋は通そう」
「うん!」
彼はシュレムを背負い、準備が出来たことを告げる。
シバはしっかりと盾を持ち……メルは真っ直ぐと前を見据え口にした。
「戻ろう、レライへ……」
「いや、メル? そっちは来た方じゃないからな? レライはあっちだぞ……」
「へ!? え、ええと!?」
しかし、肝心な所で締まらず。
「大丈夫……なのか? これで納得させられるのか……なぁ」
シバも思わず苦笑いをするのだった。




