334話 石像を倒せ!
盾を手に入れたメル達は石像から逃げるために洞窟の中を駆け抜ける。
しかし、石像は外まで追ってきてしまった。
このままでは町に危害が加わるであろうことは明らかだ。
彼女たちは石像を倒すことを決意したのだが……どうやら魔法は効果がないようだ。
魔法が防がれた事に呆然とするメル。
だが、石像を無視しレライまで戻るか? と問われればそれは出来ない。
恐らくは石像は盾を持つ者を追って来る。
出なければ片腕で壁を上るなんてことまでしないだろう。
呆然とするメルは対策を何とかして考えなければと思うが……。
魔法が効かない。
武器も刃こぼれしちゃう……なら――!!
メルはアクアリムを鞘から滑らせ。魔力を剣に込める。
そして、仲間達に当たらないように好機を待ち水の刃を解き放つ……が……。
「うそ……」
アクアリムの水の刃さえ拳一つで防がれてしまう。
水の魔法では駄目なのだろうか?
そう考えるもメルはすぐに首を振った。
先程は石の魔法を使った。
しかし、それでも全く効果が無かったのだ……。
魔法自体が効かないと考えた方が正しいとメルは思う。
しかし、アクアリムの水の刃ならわずかではあるが傷がついたのだ。
「…………に、逃げんか? なぁ!」
シバもこれ以上戦うのは不毛と気が付いたのだろう。
この場から逃げる事を提案している。
メル自身それが良いとも考えた。
しかし、そうなれば盾を置いて行くしかない。
そんなのは駄目、このままここに置いて行ったら……絶対に……!
もし、本当にこれが皆を守るための道具なら……ここで諦める訳にはいかない。
それに、あの盾は腕を砕いた。
なら、方法は――……。
そこまで考えてメルはハッとした。
自分が今まで間違っていたのではないか? と……。
確かに魔法は強力な物だ。
破壊の力を司ると言っても良い……だからこそ、精霊達も畏怖する物。
だが、それを頼りにするばかりで、メルは万能だと思い込んでいたのでは? と考えた。
いや、寧ろなぜその事に気が付かなかったのか……。
何故石像を壊せると考えたのか? それはシュレムの一撃で石像の腕が壊れたからだ。
何故魔法でも倒せると考えたのか? それはあの盾が魔法の道具だからだ。
だが、違う。
確かに魔力を使う、しかし、あれは精霊の道具だ。
つまり、正しくは魔法ではなく精霊魔法の一種……。
魔族が使う魔法とは全く別。
「――!! シュレム!!」
それに気が付いたメルは慌てて仲間の名を呼ぶ。
「どうした!! これをぶっ壊せば良いのか!?」
シュレムは手段の事は考えてないのだろう、しかしそう叫ぶ姉にメルは――。
「そう! それはシュレムにしか壊せないの!! お願い!!」
叫び伝える。
「分かった嫁の頼みだ!!」
「だからなんでそうなるの!?」
頷きながらいつも通りの言葉を言う彼女に対しメルは困惑するが、シュレムは本気の様だ。
「おぉぉおぉぉぉぉおおおお!!」
咆哮を上げたシュレムは先程の一撃でコツをつかんだのだろう。
石像に向かい突進をするといつも通り盾で殴ると……。
「砕けろぉぉぉぉぉおおお!!」
そう叫び、魔法のツタを石像に這わせる。
「……は?」
それは近くに居たリアスも思わず惚けた声を出すほどの物で……。
「ま、まて……シュレム!?」
自分の方まで向かって来たツタを避けると彼女に対し、制する言葉を発した。
しかし、石像を砕いたツタは止まる事無く……。
「シュ、シュレム!? もう、もう良いよ!?」
予想外過ぎる事にメルは大慌てでシュレムを止めようとした。
しかし、もうその声は届いてないのだろう、シュレムは答える事無く……ツタは暴走するように伸び、彼女はその場に倒れた。
残ったのは静けさと強力な魔法を使ったというのに砕けなかった石像のあっけなくも粉々になった残骸……そして、倒れたシュレム。
メルは血の気が引くサァーっという音が自分の中で聞こえた気がした。
大慌てでシュレムの方へと向かうとリアスもまた彼女の近くへと来てくれた。
シバも心配はしてくれているのだろうか? メルと共に駆けつけた……シュレムと言えばそんな仲間達の心配を一身に受け。
「…………」
ピクリとも動かない。
まさか……メルは不安を抑えきれず彼女の肩をゆする。
名を呼ぶことも声をかける事さえも怖く、出来なかった。
だが……。
「なぁ、メル……こいつ……」
メルが彼女の顔を見ようと体の向きを変えているとまず最初にその表情がうかがえたのだろう、リアスはほっとしたような呆れた様な顔をした。
それを見てメルは取りあえずは安心したのだが……シュレムの顔を見ると……。
「な、何で笑ってるの?」
シュレムは何故か笑みを浮かべたまま寝息を立て始めていた。
「……はぁ、とにかくただの魔力切れだね、でも……」
メルは正直驚いた。
魔力は多少なりともあるだろう、しかしあのツタの出かたは異常だ。
それだけシュレム本人の魔力が多く、一気に放出されたと言っても良いだろう。
普通に魔法が使えれば魔法使いとしては優秀、多分ナタリアにも匹敵する魔力だと思う。
だけど……。
メルは今回の事で分かった事がある。
最初の一回、二回の時は偶然やコツが分からず運良く適量の魔力が使えた。
だが、魔力の籠め方を知った後は全力で籠めてしまった事により枷が外れ、今のように魔力切れまで消耗してしまったのだろう。
少し魔力の使い方と言うか魔法の使い方を教えないと駄目かな? でもシュレムだし……。
とメルは考えるのだった。




