333話 石像から逃げろ!
メルの指示通りに動くシュレムだったが、どうやら魔力を籠める方法が分からないようだ。
しかし、メルの機転により、魔力を籠めることに成功したシュレムは見事ナトゥーリッターを奪い返すことに成功した。
盾を奪い返したメル達は洞窟の入口を目指し駆け抜ける。
石像は追って来ているだろうか? そんなことを確認するまでもなく真っ直ぐと走る。
「我らに天かける翼を……っ!!」
メルは洞窟の入口に着くなり、すぐに灯の魔法を消し浮遊の魔法をかけ直す。
「エアリアルムーブ!!」
そして、魔法の名を唱えると同時にシバの手を掴み飛び上がった。
それに続くようにリアスとシュレムも空へと舞い。
下を見下ろす。
そこには追って来ていた石像の姿があり……。
「流石に外までは出てこないみたいだな」
リアスは生き埋めにならなかった事を含め安堵の溜息をついた。
しかし……。
「おい、なんか変じゃないか? 飛ぼうとしてるような」
シュレムは石像を見ながらそう仲間へと伝える。
メルは慌てて石像を見るが、シュレムの言葉を否定するように首を振った。
「確かに飛ぼうとしてるみたいだけど……石像だよ? 大丈夫だよ」
洞窟迄の穴は特別深いわけではない。
しかし、石像に飛び越えてくるのは不可能だ。
そう判断した彼女はもう安全だと判断したのだろう。
だが……石像は大地を蹴り、手を伸ばす。
到底届くはずの無いその手はある物を掴み……。
「……へ?」
メルを……いや、メル達を驚愕させた。
そう、石像は穴に張り巡らされたツタや壁を掴み上ってきたのだ。
千切れるだろう、崩れるだろうそう思っていたが、そんな事は一切なく……。
「嘘、でしょ?」
メルは地上に出た石像を見て驚いた。
石像はそれ以上動く事は無いが真上を……メル達を捉えている。
「に、逃げよう?」
メルは気味悪く思い帰る事を提案する。
仲間達も頷き移動を始めるのだが……。
「お、おい、追って来ているぞ? なぁ!」
シバが言うように石像は追って来ていた。
このまま逃げて街まで行くことは簡単だ。
しかし、そうなれば街に被害が出るかもしれない。
メル達には確かに道具を手に入れるという目的がある、しかし……。
それで街を危険にさらす訳にはいかないよね……。
メルはそう考え止まると、石像を睨んだ。
今は外……私も魔法が使える。
リアスもシュレムも居る、戦えない訳じゃない!
そして、石像と戦う意志を見せると――。
「行こうリアス、シュレム!」
二人の名を呼んだ。
二人は当然のことのように頷き……答える。
「ああ、このままじゃ帰れないからな」
「任せておけって、あんな岩壊してやる!!」
頼もしい二人の言葉にメルは微笑み……石像から離れるように動きながら地上へと降り立つ。
「魔法で倒す、だから二人は詠唱の時間を――!!」
メルは仲間達にそう伝え、メルの前に降り立った二人の仲間は同時頷いた。
すると、一人空に浮いたままのシバは叫ぶ。
「空に浮いたまま戦った方が良かったんじゃないのか、なぁ!」
彼の言葉は最もだ。
しかし、それはあくまで地上で大人しくしてくれたらの話であり、此処迄追って来たという事は何かしらの手段で空中に居るメル達に仕掛けてくるかもしれない。
何より――。
「何個も魔法を維持してられないの……少なくとも、今の魔力じゃ……」
メルは決して魔力が少ないという訳ではない。
だが、後の事を考えるとどうしても魔力は少しでも残しておきたい。
浮遊の魔法は一回かけたらそのまま飛べるのだが、やはりいつもと違う状況と言うのは上手く魔力を練れない。
必要以上に魔力を籠めてしまう事もあるのだ。
だからこそ、メルは仲間達に頼んだ。
そして、その仲間達はもうすでに石像の元へと向かっており、メルも右腕を真っ直ぐと前に向けると詠唱を唱え始めた――。
「我願うは、立ちはだかる者への水の裁き……!!」
水の魔法。
それもメルが知る強力な魔法を再び唱えた彼女はその双眸で石像をしっかりと捉える。
「――ウォータージャベリン!!」
そして、魔法を解き放ち。
見事に石像を捉えた……先ほども考えた事だが、水は岩をも砕く力を持っている。
これで終わるはずだ。
そう思った彼女だったが……石像は残る腕で魔法に拳を向けると……それを殴り、消してしまった。
「う、嘘でしょ?」
勿論、魔力を籠めていない訳ではない。
メルには自信があった、しかし石像はまるで傷ついていないのだ……。
ほ、ほかに石像を壊す手段って……。
そうだ!!
「飛礫よ我が命の元舞い踊れ!! アースショット!!」
今度は岩を魔法で作り出したメルはそれを石像へと向かわせる。
ウォータージャベリンよりは威力が落ちるがこれでヒビを作り、そこに再び水の大槍で狙おうと思っていた。
しかし、今度は魔法から逃げる事も無く、なんの効果も無かった。
「メル! もっと強力な魔法だ!!」
リアスは叫ぶがメルだって決して手を抜いている訳じゃない。
だが……石像を壊せない。
魔力を温存したいと言っても、知る魔法の中で強力な物を使ったのだ。
「魔法が、全く効いてない?」
しかし、石像には魔法が効かない……その事実だけが明らかとなった。
「こ、これじゃ……どうやっても私じゃ」
メルは呆然と石像を見つめるのだった。




